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第26話 王の労いと勅命くだる ②

「わざわざ昨日の今日で城まで呼び出したのは、これからどうしたら? 良いものかと思案しておってな。勿論、そなた達を労い、本来なら論功行賞を行い武功に対してそれ相応の領地や爵位を与えるのが筋だとは思っておるのじゃが……パラメキアの皇帝陛下が気になる――皇国・皇民・皇土を護る為に大規模な戦争準備をしなければ――」




 ジェラルミン王の話をまとめてみると、早急に城に招いただけあって切実で深刻なものだった。


 かつて大陸間戦争にまで発展し大召喚士プロメキアスによって封印されたはずの魔王や魔物たちが復活した。


 そのような中、パラメキア帝国が陥落したのは聖騎士達の言っていた事が正しく、それが証拠にジーク卿が魔王の力を借りてキマイラとなりし戦ったことから周知の事実である。


 しかもジーク卿は帝国では魔法大臣という高い位のマイスター(閣僚)だったはずなのに、いつの間にか魔王に組する側となり、聖騎士団を追ってやってきた。


 王が言った「皇国・皇民・皇土に憂いがおる時は諸侯達が手を取りあい建国をしのばなければならない」


 つまり、帝国に有事があった場合、各地を治める諸侯や貴族達は手を取り力を合わせて全力で皇帝陛下はもとより領地、領民を守らなければいけないと帝国憲法の序文に書かれているから優先事項だそうだ。


 これを制定したプロメキアスはかつての大陸間戦争での覇者でこの大陸の名前にもなってる初代パラメキア皇帝。


 皇国民からは未だに英雄視されているから絶対らしい。


「それでじゃ、アレクサンドリア国王としてはこの有事に対して手をこまねいているわけにはいかない。故にこれから我が国はパラメキアを陥落させた敵と戦い帝国領を奪還するのじゃが。国内や領内の諸侯達に兵をはじめ戦争準備するには些かさ時間がかかる。とはいえ、敵の状況も気になるところでな。何より隣国に落ち延びられてるプロメキアス・フリードリヒ三世の様相、情態も気になるところじゃ」


 ジェラルミン王はそこまで言うと立ち上がった。


「そこで、聖騎士団を水先案内人として、メリル、トレマシー、ドーラ、ヒデヨシの四名は準備が整い次第アレクサンドリア並びにパラメキア領内に出向き帝国内の様子を探ってまいれ。今や皇帝陛下の安否が定かでないなか、皇帝陛下の代理として申しつける。つまりこれは勅命である!!」


 俺はメリルに脇腹を突かれ立つように促された。そしてその場にいた一同全員が右肘を直角に曲げ「御意」と聖騎士団を筆頭に即答し、俺も見よう見まねで応じていた。


「そのかわり、旅支度の心配はしないよいからな。金貨百枚と四頭立ての馬車を用意する。護衛は一応に聖騎士団が担うが、そなた達は幼子も含めてその必要はないと思っておる。では、用意ができ次第出立するように! 世はこれより自室に戻るがそなた達は聖騎士団と交流して親睦を深めてくれ。しばしの間の仲間になるじゃろうからな」


 ジェラルミン王は自分がいると居心地が悪いかもと気を効かせ立席して応接室を後にした。




「先日は助かりました。わたくしこの度パラメキアまでの案内人を任されました聖騎士団長のルークと言います。そして左にいるのがアーガスと右がエリアでございます」


 早速、パラメキアの聖騎士団が挨拶しに話かけてきた。


 俺は常に他所では従者らしく振る舞いをお願いされているので演技の見せ所といったところ。


「いやいや、こちらこそ何体ものダークナイトを倒して頂き本体に集中出来ることが出来ました。流石、皇国でパラディンの称号をお持ちの方だと恐れいった次第です」


 このような場面でもスキル【人たらし】の補正が入るのかは分からないが相手の気分を害する事なくスラスラと会話が出来る。


「ハッハッハッ。何を仰るご謙遜を……メリル嬢からは従者と聞いておりますが、聖騎士の感とキマイラとの対戦の時に見せられた剣術ただものではごさいませんな。失礼ながら貴方様は名のある剣士ではないかとお見受けします」


 確かに只者ではないが、異世界からやってきてあちらでは天下人だと言ったところで誰も信じないだろう。ここは以前にメリルから教えこまれた素性を言うしかない。


「いやいや剣士なんてとんでもない。確かに聖騎士様には憧れはありますが、自分は農家の生まれでいつの日か諸侯様や貴族様の目にとまり騎士に推挙してもらおうと日々独学で剣術を鍛錬しておったところ、たまたま野生動物にメリルお嬢様が襲われていたところをお助けした次第で今に至っております」


 早口で言ったところが嘘くさいが正直生まれと立身出世を望んでいるのは本当だからな。


 しかし、先ほどからルークの視線は腰にさしたる太刀に目がいってるようだ。


「ヒデヨシ殿、わしも剣士として高みを目指しているものだが、今までにそのような剣は見たことがない。良ければ直に見せてもらえぬか」


 断る理由が思い当たらないので太刀をルークに手渡した。


「ルーク殿、鞘から抜かれても刃先は手で触られないように。研ぎ澄まされてますから簡単に切れてしまいまするから。柄越しで眺めるだけにしてくだされ」


 基本的に騎士の剣は相手を叩いてなんぼ、武士の太刀は斬れ味勝負の一撃だから用途が根本的に違う。


「刀身は見事なまでの鍛冶ですな。このような細身の刀作は見たことないです。いったいどこの職人が作成されたのか是非お聞かせくださりませんか?」


 やはり、聖騎士団長まで昇りつめた漢だけの事はある。昨日のキマイラとの戦いぶりから俺や剣術に太刀と気になる事が沢山あるようで矢継ぎ早に質問攻めにされてしまう。


 だが、太刀の【正宗】の出処聞かれてもなぁ。


 これは、実際のところは大坂城の武器宝物庫に仕舞ってあったもので、どこぞの大名が献上した代物。


 確か鍛冶師は七代目木下正宗で鎌倉時代から続く一子相伝の匠だと聞いていたが、そんな事この世界の住人に言ったところでまやかしや嘘つきだと思われてしまうのが関の山だろう。


 さてさて、どう答えたものか?


 俺はメリルに助け舟を求めるかのように目配せさする。


「あ、ルーク様。この刀は太刀と呼ばれる種類のもので、大陸間戦争があった頃のものだそうです。戦争の時に落城した城趾から出土されたのを当家の曾祖父が大枚をはたいて買ったそうですよ。蔵の中で埃まみれになっているのも勿体ないので用心棒をしてくれてるはヒデヨシに貸してますのよ」


「そうでしたか。そんな貴重なものを従者に貸し出されるとはメリル嬢も凄いですね!」


 ルークはなかなかに感が鋭いようで皮肉めいた事を返してきたが……。


 メリルは軽く「わたくしはそういった物には興味がありませんから……」と軽く一蹴してみせた。


「でしたか、あまりに素晴らしい剣でしたので少々羨ましく思ったものでして。何かお嬢様とヒデヨシ殿が特別な関係があるのかと勘ぐってしまいました。失礼、失礼」


 聖騎士団長たるもの堅物かと思っていたが、なかなかに色恋にも興味がありそうな御仁なんだな。


 まぁ、自身の自戒も含めてどこの世界も男たるもの女性に興味がなければ出世しないからな。


「あ、それと先ほどはこのような太刀と呼ばれるものは見たことがないと申しましたが、実は最近目にいたしたのを鞘から抜いて思いだしました」


 はて、ルークは何を言いたいのだろうか?


「どこで見られたのですか?」


「はい、パラメキアを襲ったドラゴンに乗った男が手にしていたような気がいたします。ドラゴンは空高く飛んでいたし、急降下してはパラメキア兵を口から出すブレスで火責めにしてましたから逃げるので必死でしっかり確認したわけではないですから」


 ルークの目撃証言は驚きだ。


 まだ、この世界に同じような太刀を持つものがいるとは。しかも龍に乗る化物が手にしている?




 ルークは俺達を試しているのか疑いたくなる発言だった。


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