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第25話 王の労いと勅命くだる ① 

 謁見の間でのジーク卿並びに究極生物キマイラの死闘明けからの後日。


 俺達は再びアレクサンドリア城に来るようにと命があった。


 なんでも、今後の道筋を話したいと言うことらしい。


 知らせてきたのはメリルの父親からで、いつものようにすぐに城に戻ってしまったようだ。


 一日明けてのジェラルミン王の呼び出しは何人もの死傷者が出た為で城内の後片付けも含めての配慮してくれとの事のようだった。




 俺とメリルや双子にしたって疲労困憊でキマイラを倒した後は立っているのが精一杯ってのが本当のところだから休養画あったのはありがたい。


 


 よくよく考えたらジーク卿にしろキマイラにしろ格上相手の化け物達に「疲れたダバサ」と、言って笑ってられるだけ奇跡だと……。


 俺とメリルは思っている。双子は知らんけど。


 ただ、あの戦いの恩恵は少なからずあったみたいで魔法使い三姉妹は大幅にレベルアップし魔力が向上したようだ。


 特にあのあと、ドーラは珍しく高熱が出てしまった。メリルに言わせると知恵熱の類で風邪じゃないし命の心配はないとの話。死闘の後だから仲間の事は心配になってしまう。


 静養してる際に夢でも見てうなされているのか「キマイラ、キマイラ」とうなされていたが、翌日には熱も下がりケロッとしたかと思うと「新しい召喚獣見つけた」と言ってベヒーモスの赤ちゃんを召喚していた。


 恐らくキマイラが禁忌のモンスターで四足獣の部類では最強のベヒーモスを浮かんだらしい。まぁ、浮かぶのと契約するのとは雲泥の違いがあるともなのだが、現に召喚してヨチヨチ歩きなら火炎や小さい石を天空から落としている様を見るつけ、本当に敵には回したくない恐ろしい幼女だと思う次第だしインプといい、ベヒーモスといい契約する基準が悪趣味だな。


 まぁ、強いのだけどね。




 俺達は再びアレクサンドリア城を訪れた。


 前回と違い、城内に入ると聖騎士団長のルークが出迎えてくれていた。


 また、あの忌まわしき謁見の間に行くのか思っていたが違うようだ。


 今回はエントランスホールから階段を昇り二階に行く。


 どうやら王族の居住空間らしい。


「さぁさぁ、英雄達に陛下はお待ちかねですよ!」


 英雄ってもしかして俺の事だよな。


 褒められて伸びる達なので嬉しい。


 ルークに案内された部屋は応接室で、普段は開放されてなく滅多に入る事が出来ない。通常はマイスター(大臣)達が国の政を決める会議に使ったりする特別な部屋だとメリルが教えてくれた。


「コンコン」とルークが部屋の前で扉を叩くと中から「入りなさい」と声が聞こえた。


 襖だったら違和感なく入れるのだが。


 扉にはまだまだ慣れない。


「お連れしました陛下」


 ルークが内開きの扉から俺達一行を入るように促した。


 入ると長い卓テーブルがあり上座にはジェラルミン王が座して待っていた。


 卓には飲み物を入れる容れ物グラスとお菓子や果物が置かれている。


 部屋には数名の召使いとおぼしき人達がいた。


 ほとんどが女性で一人は恐らく酌取りだろう。


 王は桜色をした飲み物を酌取りに注がせ口に入れていた。


 どうやら謁見の間は緊迫の部屋だが、こちらはくつろぎの間のようだ。


 この光景に俺は既視感を覚えてしまう。


 そういえば信長様が安土城完成の折、バテレン達と庭で南蛮貿易の話をされていた時に似たような飲み物を召されていたな。


「藤吉郎お前も飲め」と申されて一気に飲み干したのは良かったが酷く不味かったな。


「どうじゃ秀吉美味いか?」


 どう答えて良いか迷ったが「不味うござる。拙者には伏見や近江の酒の方が性に合いまする」


 それを聞いて信長さまは大声で笑ってくださり「お前は正直だから好きじゃ。一緒に利休の茶でも飲め」と初めて茶会にまぜてくだされた。


 確か茶会の前に飲んだ酒がワインとかいって葡萄の果汁を発酵したものだとバテレンから聞いたな。


「さあ、勇者達よ! 座ってワインでも飲んでのんびりゆったりしてくだされ。本当なら晩餐会でもしてそちらの活躍を労いたいところなんじゃがな……そうも昨日の今日で状況が逼迫しておる。いや、まずはジーク卿とキマイラとかいう化物を倒してくれて感謝しておる。そなたたち勇敢な戦いぶりは聖騎士団から聞いておるからな」




 どうやら王の口ぶりから、くつろいでいる場合じゃない気もしてくる。


「でな、化物にトドメを差したそちの事は失礼ながら世は知らぬが差し障りなければ教えてくれぬか」


 えー、俺はこことは別の世界からやってきて、以前はあなたよりも偉い天下人的な事を言おうとしたら。


「あ、この者はヒデヨシという名の私の従者でございます。街で腕が立つと噂でしたので金貨三枚で雇った次第です。父がお城のお仕事が忙しいみたいであまり屋敷に帰って来ず女手だけじゃ物騒だと思いまして。さぁ、ヒデヨシ! 陛下にご挨拶しなさい」


 え!? 何この展開……。


 金貨三枚って、太閤にしては安く見られたものだ。とりあえずメリルにとって俺は従者じゃないとややこしいだろうから合わせてやるか。後で説教してやる!


「なるほど、そちの父の子爵は大した用事もないに確かに城に入り浸っておるからな。メリルよ、良い従者、いや用心棒を見つけたな」


「御意であります陛下」


 とりあえず王さんに挨拶したらよいのかな。


「あのー、陛下ヒデヨシと申しま・す……」


「ヒデヨシとやらメリルから話聞いたからもうよいぞ」


 何たる扱われ方、さっきまで俺の事「勇者」だと言ってたじゃないかよ。

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