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第20話 魔法使いVS魔道士

 ジーク卿の話によって、再度謁見の間はざわついていた。


「聡明なヒデヨシ様ならもう分かっていらっしゃると思いますが。さきほどの……」


 分かっている。


 皆まで言うなメリルよ。


 俺は数十分前に都合良くレベルアップしてくれた【人たらし】のスキルをジーク卿に向かって発動させていた。




【ステータス パラメキア帝国 魔法大臣は仮の姿 LV66 ダークソーサラー HP745 力89


素早さ 100 賢さ231 運145 スキル インフェルノファイア ダークナイト召喚 とっておきのキマイラ♡ 性格性質 極悪 で強し 魔法耐性あり嫌なやつ】




 そして、ジーク卿の色は真っ黒。


 どこから見ても闇色をしていた。


「どうでした? ヒデヨシ様」


 なんか、俺のステータス表示ふざけてるわ。正しかったりかなりの強敵だぞ。LVもこちら側よりかなり上だし戦わないに越した事ないけど……ジーク卿は紛れもなく悪だと思うぜ。


 俺は率直な感想をメリルに述べたが……。


 メリルめ、そちらもライブリの魔法でだいたいの事は分かってるだろうに意外と意地悪な性格だったりして。


 それはさておき、この場でジーク卿が悪い奴だとあばき戦闘になった場合にこちらに勝ち目はあるのだろうか? 


 恐らくこの状況での敗北は死を意味するから勝てない相手には無視するのが一番だと思う。


 その事をメリルに聞こうとしたら彼女はすたすたとジェラルミン王と聖騎士及びジーク卿の近くまで歩みよっていった。




 諸侯達の一番先頭の位置まで行くとメリルはあろうことかジェラルミン王に会釈をすると話はじめた。




「陛下お久しゅうございます。幼い時にお目通りして頂きましたが覚えておられるでしょうか? 私めはアップルアトン家。子爵の子のメリルでございます。諸侯閣下様達を差し置いて発言するのは大変に恐悦至極でござあおますが一刻も早くお伝えしないといけない事がありましたので発言をお許しいただきたくお願いいたします」


「久しいのメリルよ。世は何度かそなたの魔法には助けてもらったからな覚えておるぞ。それで申したい議があるようだな。かまわん許す。もうしてみよ」


 なんだよ。メリルと王様は知り合いでそこそこ親しそうじゃないか。


 だがメリルは何を考えているのだ。


「はい、ありがとうございます陛下。単刀直入に申します。そこにいるジーク卿は嘘を言ってあおます。私の魔法では真の姿画見えました。ただ唐突にそのような事を言ってもジーク卿に戯れ事だ。証拠でもあるのか? と言うでしょう。ですから陛下とジーク卿しか知り得ない質問をされる事を提案いたします」


 メリル考えたな。


 これだとこの場の者達も納得出来るからな。


「従兄弟よ。このようなウィッチもどきの小娘を陛下たる者が信じるのか!?」


「ジーク卿よ、簡単な質問だから答えて世の疑いを晴らしてくれたらよい。では、ジーク卿の奥方の妹君はそくさいであろうか?」


 ジーク卿は自信満々で答えた。


「当たり前じゃないか! 元気に過ごしているよ」


 その返答を聞いてジェラルミン王は謁見の間全体に通る大きな声で言い放った。


「衛兵、ジーク卿を逮捕せよ!」


「血迷ったか従兄弟よ」


「ジークよ、そちの奥方に妹など最初からいないのだ」


 瞬時に黒衣の魔道士ことダークソーサラーのジーク卿なるものは周囲をパラディンとアレクサンドリアの衛兵に取り囲まれ逃げ場がなくなってしまっている。




「クックック、素直にわしの言う事を聞き聖騎士団を引き渡せば良いものを……っく馬鹿なヤツラだ」


「ジークよ。いったい何が目的で聖騎士団を追ってきたのだ」


 俺が聞きたい事をジェラルミン王が聞いてくれた。


「目的なー、さぁ。逆らう者達の抹殺にこれから攻めてやるアレクサンドリアの様子と魔王さまが探しておられる人探しも兼ねているとだけ言っておくかな」


 聖騎士団を駆逐するのと、アレクサンドリアの偵察は分かるが人探しとは何だ? それとやはりジーク卿は魔王の手のものだと自ら認めた発言だ。


「せっかくだから、貴様達に魔王様から頂いたこの魔力とくと見せてやろうではないか。見たところで誰かに伝えることは出来ぬがな。なぜならこの場にいるものは残り限らず滅するのだからな。では、参るぞ! ウォーーーーー」




 ジーク卿から離れていたが何か嫌な予感しかしない。雄叫びを挙げたジークの黒衣からは禍々しい空気が漂い闇のように暗い影が溢れているようだった。


「燃えて灰になれー。インフェルノファイア」


 ジークは片手を前方にかざすと身体を硬直させて呪文を唱えた。かざした手からは赤く燃えたぎる炎が表れだした。


「皆んな逃げてー」


 メリルの叫びにも似た声が謁見の間に木霊したと同時ぐらいにジークの手のひらから吐き出されたような真っ赤な炎は放射状に出された。


 前方にいたアレクサンドリア兵に容赦なく浴びせられる。咄嗟に盾で防御しようとさした者もいたが炎が高温なのだろう鉄で出来ているであろう表面をドロドロと溶かし兵の身体を火炎が包む。




 一瞬にしてジーク卿が放った魔法により身体が灰になりその場で崩れ落ちるアレクサンドリア兵を目の当たりにして、謁見の間では阿鼻叫喚の地獄絵図となっていた。


「うわぁ~、ギャー」とか兵か見ていた諸侯が叫んだ声か定かではないが、兵が焼かれている間に諸侯達は蜘蛛の子を散らすかのように謁見の間から逃げ出し、代わりに新たなアレクサンドリア兵が室内になだれ混む。


 ジェラルミン王と妃をはじめとする家族達はちょうど聖騎士達の後方に座っていた関係から守られてる間に玉座の後ろに仕掛けられていた隠し扉からこの場から逃げ出す所が確認出来た。


 そうしてる間にジーク卿は更に新たな攻撃の準備をはじめた。


 炎を放つ逆の手にはいつの間にか杖を持ち、それを振り謁見の間の床に魔法陣を描き出す。


「闇の下僕となりしナイトの称号を持つ騎士達を契約に基づき我に力を……」


 ジーク卿は呪文を唱えると黒い甲冑をつけた兵が現れた。


 どうやらジーク卿もドーラと同じく禁忌の召喚魔法を使えるようだ。




「姉さまを援護するダバさ」


 ほぼ、諸侯達が退避した謁見の間ではジーク卿に対する最前列はメリルだけになっている。


 そこを目指してドーラが駆け出し、それを追うようにトレマシーも走り出していた。


 女子達だけがジーク卿と対峙するのは男が廃るってものだ。


 俺は逃げたい気持ちを抑えて双子を抜かしてメリルの横に位置した。


 しかし、あのジーク卿という魔道士は文字通り化け物だ。


 ステータスから見られたレベルでも聖騎士のおよそ倍の経験を重ねていて強い。


 あくまで数字上の事なので軽々に強さを判断するのは危険だが、多勢に無勢といった危機感はジーク卿にはなく、新たなダークナイトまで召喚して味方を増やしているのだ。


 果たして我々に勝機はあるのだろうか。


 いや勝たなければ、ここで俺やメリルの物語は終わってしまう。


 だから、必ず勝つしかなかった。

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