第19話 白と黒の話
スキルによって、メリルの父親を見た時のように聖騎士の隊長。
赤マント、ルークのステータスを確認した。
なんか、やっぱり内容がふざけている。
信ぴょう性があるのか不安になってしまう。
でも、先ほどとは違い、聖騎士ルークの姿に色がついていた。
それは、身体全体を覆うように白い色だ。
しかも、察するに少し輝くような雰囲気や風情みたいに自然に入ってくる光のようなもの。
赤いマントや聖騎士の防具につけられたミスリル金属のように目立つような色や輝きとはまた違ったものだった。
「さきほど、ジェラルミン王から話されていたパラメキア陥落に関して報告いたします」
いよいよ聖騎士の口からパラメキア帝都の事が語られ出した。
「話は2年ほど前の事でした。パラメキアの西側にモンマルトルの森と言う場所があるのですが、その森にキノコや山菜を取りに行ったものが行方不明――。魔物が現れ出して近くの町や村や近くの城が襲わ――。いつしか森に見たこともない姿の城が――魔王が復活したとの噂に。そして城からドラゴンに乗った騎士が現れて異国のような姿をした兵を引き連れパラメキアを襲撃したのです」
王からは要点だけを言って簡潔に話せと言われていたが、やはり事が事だけに聖騎士の話はかなり長いものになった。
詳細が語られるにつれ俺を含めてこの場で話を聞いた者達にとっては驚愕内容だったのだろう。
時折、感嘆の声やため息が耳に入ってきているからだ。
要約すると、今から2年前に近くの森に行ったものが行方不明になる事が多く、その頃から遥か昔に滅んだはずの魔物が出現しだしたとの事。
城から兵を出して魔物退治をしたのだが、日に日に魔物達の数と種類が多くて強くなり手に負えなくなってきた。
そして、半年ぐらい前から森の近くの村や町が襲われ逃げ出した者達の話によれば魔物にその場で食われたり、何処かに連れていかれたようだ。
そして、ついには魔物退治を皇帝陛下から任されていたシュバイツァー侯爵のバリアント城までもが襲われ侯爵は戦死し落城してしまったとの事。
今ではお城は魔物達の巣窟となり、リッチとか言う名の人か魔物か分からぬ者が支配しているらしい。
その事は魔物の中には知能の高い者もいて食われる前に逃亡出来たものから聞いた話だそうだ。
そして、遥か太古に滅んだはずの魔王が復活したとの話もある。
由々しき事態にパラメキア皇帝はリッチ討伐に聖騎士団を派遣し激しい戦闘を繰り返していた矢先にモンマルトルの森の中に今まで見たこともない巨大な城が出現したそうだ。
そして、20日ほど前に巨大な城から数体のドラゴンと先例のない甲冑をまとった異国風情の兵士が数万と現れパラメキアの帝都シャングリラが急襲されてしまい数時間で陥落してしまった。
特にドラゴンをはじめとしての火力は凄まじく天災級の被害をもたらし、パラメキア軍は次々と逃げ出し、皇帝陛下も隣国のパール教国に避難されたようだとの事だった。
「聖騎士団長ルークの語り、メリルほどう思う? 信じるに値する話かな」
「そうですね、私は聖騎士様の話は信頼に値すると思いますよ。だって嘘なら私達がこの世界にいる理由自体が否定されてしまうような……ある意味この世界に変化が訪れるのを私は3年待ちヒデヨシ様が現れたわけですから信じたいのが本音ですかね。勿論パラメキアでの出来事には哀しく同情しますけど。公平な判断するには聖騎士団を追ってきたというジーク卿の話を聞いてからでも判断するには遅くないですかね。だからジェラルミン王も諸侯達を集めて意見を聞きたいわけでしょうから」
確かにメリルの言う通りな気がする。
その時だった。
謁見の間の扉が「ガタン」と乱暴に開けられると中から全身に黒衣を纏った男が現れた。
頭まで黒衣を被せていたが隙間から白髪が見えるので年配者のようだ。
突然の事にジェラルミン王は声を荒げて言い放つ。
「無礼ではないか! ジーク卿」
ジーク卿と呼ばれた黒衣の男は王の玉座の前で片足を地面につけて一瞬だけひざまずくとすぐに王に向かって文句をまくしたてた。
「従兄弟のジェラルミン王よ。非礼をしたなら謝るがな。ただあまりの茶番に片腹痛いわ」
「茶番とは何だ?」
「そうだろうよ。何故、謀反を企てたパラディン共の話を諸侯達に聞かせて判断を仰ぐのだ! 俺の話は蔑ろじゃないのか? アレクサンドリア王よ。どうなってるんだ! もしかして疑っているのかよ。それは血が繋がってない従兄弟だから馬鹿にしてるってことだよな」
ジェラルミン王はジーク卿の物言いに困った顔をしているように見えた。そして何も返事をせずに黙りこんでいた。
「なぁ、あのジーク卿って何者なんだ」
「あの方はジェラルミン王の兄君の義理の息子ですよ。何でも兄君の娘さんと婚姻して養子になったようです。今は確か、パラメキアのマイスターをしていて魔法大臣だとか……」
「魔法大臣って……魔法使いは数が少ないって言ってなかったか?」
「あ、少ないのはパラメキアの周りの諸国って意味で。魔法が使える者のほとんどは生活の為に帝都に行って皇帝に仕えます。その方が給金も良くて活躍出来ますから」
いずれにしても、あの格好にあの物言いと……。どう贔屓目に見てもジーク卿は悪者にしか見えない。
「いいか、諸侯達よ。よく俺の話を聞いてくれ」
ジーク卿はわざわざ聖騎士の横に立ち話をはじめた。
「まず、聖騎士団長のルークが言っている事は嘘偽りのまやかし、よた話だよ。パラメキアのシャングリラは陥落していないし、フリードリヒ皇帝陛下も何事もなく帝都で平穏に暮らしておられ、る。では、なす? 聖騎士ともあろう身分も保障されている者達が嘘を触れ回るのか。それは奴らが皇帝陛下の暗殺を目論んでいたからだ。いや、彼らは利用されただけなのかも知れない。黒幕を吐けば皇帝陛下も恩赦を与えるとも言っておる。悪い事は言わないからルークよ私と一緒にパラメキアに戻ろうぞ」
「血、違う! ジーク卿こそ目的は知らないがデタラメだ!!」
聖騎士ルークが途端に異を唱える。
うーん、こうなってくると聖騎士のルークか黒衣を着た魔法大臣のジーク卿かどっちが正しいのか分からない。
どちらの話もありそうだからだ。