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第16話 城内へ

 アーチ型の城門は来客用に外側が開かれていた。


 門だけは頑丈な石造りとはいかないのだろう。城門の扉は木製で出来ていた。


 それにしても、城門の扉のアーチ型にはまるように周りが石積みで建築されている姿にはこの世界の技術力の高さを計り知るものだと俺は思ってしまう。


 そんな事を考えながら。


 


 いざ、アレクサンドリア城内へ。


 殺風景だったお城の外観と違い城内は豪華な装飾や絵画が飾られていて、何よりも光り輝くガラスみたいなものが城内を照らしていた。


 ここのは非常に大きいがメリルの屋敷にも小さいのが食事する場所にもあった。


 確かシャンデリアと言ったな。


「ヒデヨシ様、ここはキープのエントランスホールと言います。あっ、キープと言うのはヒデヨシ様の世界でいう所の本丸にあたります。明るいし広いでしょ。戦になればここに兵士が集います。アレクサンドリア城は要塞としての一面もありますし、城内が小さい町としての機能もあります。王の暮らす部屋は勿論の事、父みたいにここで暮らす人々の住居に兵士の宿舎もありますしパール教の礼拝堂までありますよ。また、マイスターと呼ばれる様々な事に精通した人々も暮らしています。例えば内政を支える大臣や兵士長に、ケガや病気した時にお世話になるお医者さんなどが、マイスターになりますね。あと、地下には罪人を捕えている牢獄もありダンジョンと呼ばれていたりします」


 なるほど、この世界の城は住居も政治の場も兵舎も兼ねていて正にメリルが言っているように城塞なのだろうな。俺のいた世界の石垣や土塁で隔てられた二の丸や三の丸、櫓なんかが一体化してると思えばしっくりいく。で、マイスターってのが奉行みたいなものなんだろうな。世界が違えども言い方が異なるだけで似たようなものかも知れない。


 




 ホールと呼ばれた場所は中央には広い空間が続いており天井は高く左右には上層階に行くための階段が見えた。


 様々な用途の建物や部屋があるからこそ壁沿いには他の扉が沢山あり複雑な作りをしているのだろうな。


「このホールを真っ直ぐ進んだ先に王の玉座がある謁見の間になりますよ。そこで諸侯達が王の命を待ちます」




 ドーラとトレマシーは城内に入ってからも更にご機嫌でスキップとわけのわからない鼻歌を口ずさみながらホールの中央を扉に向かって進んでいく。


 双子の姉妹はホール行き止まりの扉を勢いよく開けた。


 扉の先は玉座の間かと思いきや、甲冑を着た騎士像が何十も等間隔で両側に置かれている。


 騎士像はどれも剣を振り上げ盾を構えた姿勢で整列して佇んでいた。


 こちらの騎士の剣はとにかく刀身が太く四角い盾も着ている鎧は見た目は重そうだし動きにくそうだ。


 世界が変われば兵士もこのように違うものだと見入ってしまう。


 どうやら、諸侯が集いし部屋は別棟の建物のようで、広いホールに比べるとこちらは細長い通路だからそのように思えた。


 そら、そうだ。


 城内に入って、すぐに王様がいるかも知れない玉座の間なんかがあれば防御面では弱いからな。


 しかし、ここはホールに比べたらヒンヤリしていて薄暗く気持ち悪い場所だな。


 暗いのは陽の光が入る窓の類がなく、蝋燭の灯りほどのランプが気持ち程度点いていたからだ。


 俺が城主だったら何か仕掛けをするかもな。


「御名答ですよ。流石ですねヒデヨシ様。この通路はいざという時の為のもので、色々と罠があるようですよ。例えば落とし穴やこの甲冑を着た像なんか……」


 また、考えを読まれてしまった。


「♪怖いな、怖いな。お化け出そうダバサ♪」


 とても、怯えてる感じがしないドーラ。


 通路半ばくらいにある一体の甲冑の騎士をまじまじと見つめだした。


「ドーラどうちたの?」


 数分違いで生を受けた姉のトレマシーもスキップを止めてドーラの元へ掛けよる。


 妹のドーラはどちらかというとヤンチャでお転婆娘といったところで性格は血気盛んなカッとなりやすいところもあるが、姉のトレマシーは口数は少なくおとなしい。双子なのに性格は逆そのものだ。


「こいつ、生きてるダバサ。目ん玉動いてるし……」


「ドーラ、この騎士さんのお仕事邪魔したらダメだよ」


「分かったよ。ねぇたま」


 そういってドーラは細長い通路の扉に向かって走り出していった。後を追うようにトレマシーも続く。双子は強力な魔力の持ち主なのだが代償として2人の母親はお産の時に亡くなったとメリルに聞いた事を思い出してしまった。


 ドーラとトレマシーが立ち止まった甲冑騎士の元を通り過ぎると、この像は少し小刻みに揺れている感じがしたので双子の見立て通りに中身は本物の騎士なのだ。


 きっと、この甲冑の騎士は平時だからこその見張り的役割を担っていただけなのだろう。


 以前は侵入してきた敵をここで食い止める為に罠としての役割をする騎士の数も多かっただろうが今はそのような城を脅かす存在はいないから形だけのものだと思った。


 恐らく有事においては、沢山の甲冑騎士がいて、敵兵を食い止めたり、落とし穴等の罠の発動や仲間の増援要請なんかの任に当たる。


 とはいえ、俺の経験からすれば、実際の所玉座の間が近い所まで敵兵の侵入、城内に踏み入れられた時点でアレクサンドリア城は落城間近といえるな。


 いわば、有事においてここにいる騎士は最後の砦の意味合いが強く、王様を逃がす時間稼ぎか俺の時代なら城主が自害する為の先延ばしでしかない。故にこの騎士は歴戦の猛者かその逆のどちらかだろうな。


 まぁ、ドーラに見破られてる限りでは後者なのだろうが今は平和みたいだから邪推妄想の類にしかすぎないかもな。


 だからこそ、トレマシーが騎士像に化けていた者に対して「仕事」とドーラに表現したのには合点がいき、冷静で賢いと感心したりもする。


 双子が甲冑の間的通路のどんつきの扉を開けるとこの通路より遥かに眩しい光が挿し込んできた。


 どうやら謁見の間に辿りついたようだ。


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