第13話 火あぶりとメリルの神様 ②
落下した場所は家族が火あぶりにされた場所で松明で火をつけた者と家族に惨たらしい判決をした裁判長ならぬ保安官が稲妻に直撃し身体が「ゴウゴウ」と燃えている姿が確認出来ました。
その有り様を見た見物人は次々と逃げたして処刑場となっていた丘の周りには火あぶりにされた私の家族と雷の直撃を受け燃え盛っている保安官達の赤い炎が見えるのみでした。
「これより我は汝に新しい試練を与えよう。この試練を乗り越えた暁には、今は煉獄にいるソナタの家族を現世に呼びよせ、再び一緒に神に対する信仰を許すであろう」
私の信仰する聖母様の声は耳からではなく頭の中に直接語りかける気がしました。どうやら、新しい試練を達成すれば家族とまた再会出来て以前の暮らしに戻れるようでした。
聖母様の仰る事に疑問など抱いては無礼極まりないと思いましたが、口には出せないものの心の中で、試練とは……。煉獄にいる父や母達は天国には行けないのか……。
そもそも私は生きているのか? などと考えてしまいました。
すると、またしても心の中に聖母様の御言葉が聞こえてきたのです。
「メリルよ。我はソナタの考えてる事など御見通しだぞ! 神に疑念など抱いては先ほどの悪魔の化身のように雷に打たれるであろう。だが、あまりにも事象が唐突であるから……致し方ないとも思う。今からビジョンを見せる。そうしてそこに出てくる秀吉という異国の男に仕え悪の根源を根絶やしにするのだ。さすればソナタは神の御心により家族共々救済されることであろう。さぁ、目をつぶりなさい」
言われるがままに瞳を閉じると、頭の中に秀吉様の立身出世していく過程が物凄いスピードと情報で頭にどんどんと入ってきました。それは信長様に仕えられていた頃のお姿であります。
ですが、金ヶ崎という戦場で秀吉様は謎の光に包まれて……。そこでビジョンは終わりました。
「見ての通り、此の者は類稀なる才の持ち主ではある。だが、これからソナタが行く異世界ではまだまだ弱い存在。そしてその世界での災いは強大で神をも脅かす存在が現れるのだ。時間がかかる事になる試練。試練に立ち向かい秀吉と共に手を取り合いなんとしても悪を打ち倒し、かの世界にも神の意志を民に分かち合える事がソナタの使命と思いなさい。具体的に秀吉に対して何を協力出来るのかは敢えて我は示しはしない。だが、ソナタには家族をあのような目に遭わせてしまった事による不手際は否定はしない。さすればソナタには魔法という特別な能力を与える。これから訪れる異世界では魔法を仕えるものは重宝される。本来はソナタと共に行くはずだった兄弟の力もソナタの仲間に与えて進ぜよう」
『トト様、トト様、うまくメリルを取り込めたね。それっぽい話し方凄いや!』
『まぁー、あながち嘘ではないからもんね。奴等に先攻されて負けも覚悟したが……とにかくメリルゲッチューだな』
『これで、人タラシ、マモノたらし、天下人の秀吉と超絶悶絶不幸な魔法少女があわさればなんとかなるぅー予感。あ・と・は・お馬さんパカパカが欲しいのぅ。とにかく今回は、奴等に嗅ぎつけられなくてよかったのだ』
『もう、トト様の欲張りぃー。アイツラ出し抜いたし……』
『りきまず行こう! 行けば分かるさ』
『オゥー、オゥ』
私は聖母さまの声とは違う者達の話し声が耳に入ると途端に心地良さから眠たくなりました。もはや天に召されるのか、聖母さまの仰る試練の世界に行くのか定かではありません。ですが、とにかく眠くて、眠くて……。
「メリル姉さま、死んでしまうのかな?」
私は妹のドーラとトレマシーの心配そうな声が耳に入ってきて目覚めました。
後ほど分かったのですが、こちらの世界での私は流行り病で高熱が出て寝込んでいたようです。医者の話では命も危うい状態だったようでした。
ヴァージニアの地で火あぶりにされて聖母さまの御慈悲によりこの世界に舞い降りた私。
眠ってる間にこちらの世界での家族となる父や母。双子の妹であるドーラとトレマシーの事は夢の中で聖母さまに教えてもらいました。
この世界の私がいる場所はアレクサンドリア。封建的な一面があり王様や貴族が支配する世界で魔法が存在する。
ドーラとトレマシーはそれぞれ違った魔法の使い手で、そしてこの私も魔法が使えるそうです。
こちらでは稀有な存在とされ重宝され大事にされる魔法使い、現世では魔女と言われ忌み嫌われ火あぶりにされてしまう存在。
私はこちらの世界で魔法使い……いや魔女となり、失われた家族との生活、現世に戻る為にこの世界でやるべき事をするだけなのです。
敢えて聖母さまは仰る事はなさらなかったが、 私がする事はただ一つ。
秀吉さまなるものに協力して、こちらの世界に訪れる災い、悪を打ち倒す事。
そうすれば、また貧しいながらも信仰のある家族との生活に戻れる。
だから、必ず成し遂げると心に誓いました。
そうして、待つこと三年あまり。
ようやくヒデヨシ様に会える事ななった次第なのですよ。