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3年生になった。

エースにしてもらって挑んだ最後の試合。

「今年は県大会を超えて行きたいです。一年生は今は辛いと思うけど、頑張ってほしいし、俺は応援してます。2年生もそうなんだけど、やっぱり一年生の頃、どれだけ体力作りを頑張れるかが将来にかかっていると思う。他のこともそうだけれど、地道にやっていくことを少しずつ積み上げていくことは、何においても大事だと、俺は思ってます。だから一年生、地道な練習も頑張って。2年生は他のこともあるよね。進路のことだったり、大変な時期だと思う。でも、2年生だからこそここからが成長できる時。一年生で積み上げてきたものが、きっとみんなたくさんあるよね。試合に出させてもらえない中、たくさん練習したよね。二年生の時が一番成長できます。だから頑張って。みんな色々な課題がある中で俺はこのチームメンバーで全国まで行きたいと思っています。よろしくお願いします。」

 俺の挨拶に一年生は真剣な顔で頷き、2年生はうるうるしている子もいる。

「男子バスケットボール部!行くぞおおおおおおおおお!」

「おおおおおおおおおおおおおお!!」

 気合い十分にはじまった三年生。


地区大会は敗退するわけいかなかった。

最近出てきた強いクラブ。中学生のクラブチームで、部活に入ってない子がいるところ。

そこに、詩月くんもいた。


「詩月くん。全然話さなくなっちゃってたけど、、久しぶり。」

「実里くん。久しぶり。全然話してなかったよね、同じ学校なのにね。今日はライバルとして頑張らせてもらうよ。実里くん、部長でエースでしょ?頑張ってね。僕もクラブチームのエースなんだ。お互い最高を尽くそう」

 詩月くんは心に決めたような真剣な表情で僕を見つめてそういった。

「うん。俺も負けない。」

 地区大会は絶対勝ちたかった。

連続で地区大会には何度も勝ってきている。全国大会を目標にした今、ここで負けるわけにはいかなかった。

でも。

人生、そう簡単にいかなかった。


「一点差で、連続勝利していた男子バスケットボール部に地元のバスケクラブが勝利しました!」

 そう告げられた時、俺は終わったと思った。

県大会にすら、いかせてもらえなかった。



「ごめんなさい、僕、うまく立ち回れなかった。先輩の目標に、全然届かなかった、、、。悔しいです。本当にごめんなさい」

 そう、謝ってくれた後輩がいた。

「きみのせいじゃないよ。俺もうまくいかなかったな。それに、詩月くんのチームが、強かったんだ。俺たちも強かった。でも、それ以上に強かったんだよ。向こうのチームが良いことが多かったんだ。仕方ないんだよ。それに、機会だと思わない?失敗は成功の元。失敗とは言えないかもしれないけど、連続勝利をここで途絶えさせられたのはきっと何か意味があるよ。もっと成長していけるのかもしれない。俺は、、この大会で終わりだけど君はあと一年、頑張ってみてほしい。」

 俺は、悔し涙を必死に堪えながらそう言った。


「お兄ちゃーん。試合、かっこよかったよー!!」

 試合が終わったあと、妹の杏樹あんじゅが駆け寄ってきた。

「杏樹、ちゃんとみてたか?」

「うん。負けちゃったけどさ、かっこよかったよ。もっと頑張れるよ、お兄ちゃん。」

 杏樹はそう言ったけど、俺はもうバスケをやる気にはなれなかった。

きっと、良いケジメになったんだと思う。

将来もうまく考えてない俺の、バスケへのけじめ。


「俺は、もうバスケを辞めます。でも、バスケをやったこと自体、良い経験だったと思います。バスケをやって感じたことはたくさんあります。今日のことは目標に届かなかった、初めての本当に悔しい経験です。」

 部長として最後にそう告げると、顧問の先生も、後輩もみんなびっくりした顔をしていた。

「ありがとうございました。」




長かった俺のバスケ生活が終わった時、“それ“は急に訪れた。

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