③
ローザ視点です。
「リリー、ルーカス様。ご結婚おめでとう。」
「ありがとうお姉様。」
「ありがとうローザ。」
約束の1年がたち、今日はリリーとルーカスの結婚式の日だ。
私の援助の元盛大な式を挙げ、今は4人だけの晩餐だ。
本来なら初夜で2人きりにするべきところだが、『家族水入らずで話をしたい、最高級の料理を用意してある』と言ったら飛びついてきた。
「あとは孫の顔を見るだけだな。」
「まぁお義父様ったら。」
「父上ってば、気が早いですよ。子供は天からの授かり物と言いますしね。」
すでに酔っているのか伯爵が上機嫌で言うと、リリーは恥ずかしそうなそぶりで俯き、ルーカスは一応父親を窘めるが、まんざらでもない様子だ。
「………」
その様子を眺めた後、口を開いた。
「まぁそうですね。でも私結構短気なんです。」
「ん?」
「貴方達と違って『子供が出来てから始末する』なんて、待てないんです―――金食い虫は、早く始末しないと。」
「「な!」」
伯爵親子が驚いて立ち上がったが、次の瞬間伯爵が血を吐いて倒れた。
「ぐっ!」
「父上!ううっ。」
伯爵に次いで、ルーカスも倒れた。
私も立ち上がって、その様子を眺める。
「どういう…ことだ。」
「あら嫌だ、わかってるでしょう?商会を乗っ取る為に、私を殺そうとしていたくらいだもの。ただ違うのは、私の方が先手を打ったというだけ。」
「な…に。」
バレていると思っていなかったのか、ルーカスが驚きの表情を浮かべる。
「別におかしな事じゃないでしょう?爵位目当てでなければ、誰が貴方達みたいな金食い虫と結婚するの?お互い分かりきっていたじゃない。」
指摘すると悔しそうに顔を歪めた後、反論してくる。
「こんな事して…すぐに捕まるぞ…。それに…僕達を殺したところで、伯爵位は…。」
息も絶え絶えに、負け惜しみを吐く。
「ご心配なく。貴方達は、私とリリーを殺そうとしてワインに毒を入れたけど、間違えて毒入りを飲んでしまい死んだ、という事になりますから。それに伯爵位も、リリーと貴方の子がちゃんと引き継ぎますわ。」
「え…」
言われた事が理解できなかったのか、ルーカスが目を見開く。
そのまま2人でリリーに視線を向けると、リリーがニッコリ笑って立ち上がった。
「先日無事に生まれましたの、ルーカス様との子が。伯爵家の跡取りとして大事に育てますから、どうぞご安心なさって。」
「な…!ふざけ―――」
意味が分かったのか、ルーカスが憤怒の表情でリリーに襲い掛かろうとしたが、それが最後だった。
「「きゃああああああ!誰かぁ!!」」
伯爵達が完全にこと切れているのを確認した後、2人は悲鳴を上げて人を呼んだ。
次でラストです。