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ザンクとの対峙

 きれいな水...... そう思いながら池を覗き込む。


 さわってみたいという衝動にかられて鏡のように美しく、波紋ひとつない水面に手をのばしてしまう。あとちょっとで触れるか触れないか。触れた、その瞬間に水に手を掴まれる心地がした。


 バシャン。私は池に落ちたらしい。


* * * *


 天井が見えた。長椅子のようなものに寝かされている自分に気付く。ああそうだ、池に落ちたのか、池が見えるので兵士の宿直小屋だろう、と記憶を整理していると、ドアからザンクが入ってきた。


「目が覚めたのか。何やってんだよ。ほんとに上流出身なのか?」


 呆れたようにザンクは肩をすくめる。アルデンヌ家とはもう関わり合いになることはないはずだ、そう思い、孤児院に来てからというもの、私がアルデンヌ家の出身だと他人に言わないで来た。


 上流出身、私にそんな言葉をかけたザンクを思わず凝視してしまう。


 ......あれ? ザンクの周りにもやが見える気がする。さらにちからを込めて凝視すればするほど、もやは濃くなっていく。


「ざ、ザンク.......。なんかもやが見えますけど!?」


「もや? なんのことだ?」


「だから、ザンクの後ろに紫がかったオーラみたいなものが!」


 思い当たるものがあるのだろう。ザンクはハッとした表情をする。


(えっ?)


 次の瞬間、ザンクの顔が私の顔の目の前にあって、私の背中は壁に押し付けられていた。私の首に彼の手がかかっている。15歳の彼の力は私が動く事もできないほど強い。内心あせあせとしている私にザンクだったはずの少年は、鋭い視線で問う。


「ここでお前を殺しても凍傷だと言い張ることはできる。その上で問おう、おまえは何者だ?」


 怖い。これは誰だろう。殺す、そんなことを言っている。


 紫のオーラは更に濃くなっていて、喋りかたも違いすぎる。まるで上流貴族のように上からの話し方だ。こんなときはどうするべきだろう。


 まずはザンクに落ち着いてもらいたい。そして手を緩めてもらいたい。


 そう、私はセレナ。転生してはいるけど、セレナであることはザンクに出会ったときから変わりはない。堂々としていればいいのではないか。


 彼がなにを警戒しているかは知らないが、彼の敵ではないことを説明する以外に方法はなさそうだ。私も落ち着いて話さねばならないだろう。


「ザンク、私はセレナよ? なにを言っているのかわからないわ。なぜ、私を殺す、なんて言うの? なにに警戒しているのかわからないけど、私はあなたの敵ではないわ。あなたを害そうなんて思ったことなんかない。私は何も知らないの。ただ、もやが見えるだけ」


 ひとことひとこと、ザンクにも自分にも言い聞かせるように話す。でもザンクは手を緩めない。


「もやが見えるだけだと? それは魔力に違いないはずだ。この魔力が察知できるほどの者は孤児院にも聖堂にもいないと確認してある。それなのにどうして見える?」


 怖いのを我慢してまっすぐザンクをみる。ここで怖がっている素振りを見せたらすぐにでも殺されそうだ。


「わからないわ。ザンクを凝視したらみえたのよ。池に落ちたせいかもしれないし」


 相変わらずザンクは鋭い視線ではあったが、少し拘束が緩んでいる気がする。


「ねえ、ザンク。私は敵でないの。この手を離してはくれないかしら?」


 それでも離さず、ザンクは言う。


「おまえが敵でないとはわからぬ。ここで殺しておいたほうが後味はいいだろう」


!!!! ここまで丁寧に説明したのにわからないなんて! 殺されてはたまらないので、睨みつける。


「やめてっていってるの!」


 言霊だろうか。ザンクが私を離した。


「やはり本性があらわれたのか、そんな魔力持ちだったとは......くそっ、なんで気付けなかった」


 言霊でなく、魔力によるものだったらしい。でも、余裕を見せたほうが話し合いは有利に進むものだ。私はザンクに微笑みかける。


「ねえ、ザンク。交渉をしましょう。私はあなたを害さない。あなたのすることにも邪魔をしないし、協力してもいいわ。その代わり、あなたは私を害さない。私が敵でないとわかるまで監視してくれてもいいわ。それともここで決闘でもするおつもりかしら? ......どう? これでいかが?」


 決闘を持ち出したのは、ザンクがここで目立つのを避けたいだろうとふんだ作戦だ。思惑通り、顎に手をやってザンクは考え込む。普段の幼い表情とは似てもつかないほど大人びた表情。


「......分かった。ではこれからも他人の目があるときは元通りに話そう」


 いえいえ、他人の前でなくても元通りでいいのですが。


 でも命拾いしたわけである。私は、ええ、とザンクに頷き微笑みかける。


 一件落着したところでクロンの声が外から聞こえてきた。ローリエの声も聞こえる。


 ガバっとドアがあいて、クロンがひょこっと顔を覗かせる。


「ローリエ。セレナの目が覚めてるよ!」


 あとから顔をのぞかせたローリエは心配そうな表情を安堵の表情にかえて微笑む。


「セレナ。良かったわ、目が覚めて。ザンク、セレナの目が覚めたら教えてって言ったじゃないの!」


 ザンクはおどけた表情で


「悪い! ちょっと話してたら、忘れてた」

 

 ザンクの表情の変化に驚く。ザンクこそ何者なのだろう。でも深追いするとまた私の命が危なくなりそうだ。

 深追いはしない、そう区切りをつけて、私はクロンとローリエにほほえみかけた

ザンクとセレナの年齢設定を変えさせていただきます!

ザンク:12歳→15歳  セレナ:10歳→14歳 ラオス:30歳→28歳

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