洗礼
「こっちだ」
白装束の男性に通されたのは広いホールだった。前世でみた教会のように椅子があってステンドグラスの窓から光が差し込んでいる。
最前列には3人の少年少女がいてうち2人は生気のない顔をしている。この2人も本物のセレナも悲しんでいたように家から出されることに悲しんでいるのだろうか。
しばらくしていかにも貴族! という感じの恰幅のいい男性が壇上に上がる。
「諸君はこんにちからここで暮らすことになる。神の声を聞き、その声に忠実に従うように」
そんな言葉に続いて神話が滔々と語られ、最後に聖堂における階級について話される。
白装束の男性も女性も神祇官であり、特に紫色の刺繍が入っているのは貴族出身の中でも実家からの援助がすこしはある人たちであり上級と呼ばれる。
でも、正直つまらない話ばかりに思えた。上級の中には時々還俗する人もいるらしいが、カミラ様はもう私を家に戻す気はないだろうし、異母兄のラオス様も然りだろう。
そんなことを思っていると周りの神祇官たちが一斉に立ち上がって、私はみんなからワンテンポ遅れてしまった。
「では、最後に神に感謝を捧げましょう」
みんなの真似をして指を組み、ひざまずきながら、ラオスとカミラへの怒りを神に伝えた。
私を含めた新入り4人のうち、2人の装束には刺繍が入っていて、時折こちらをみて囁きあっている。
刺繍の入っていない、もうひとりの男の子が話しかけてくれた。
「ザンクだ。12歳。よろしくな」
ザンクは健康的に日に焼けていて緑がかった髪をもつ少年。
「セレナよ。10歳」
「そっか。これからがんばろうな」
ザンクはそう言って、私に笑いかけてくれる。
*
孤児院は聖堂の離れにあって殺風景な冷たいところだった。
「わたしはマリーで、ここの責任者です。最初に洗礼を行いましょう」
マリーは神話を説いてくれる。先程の神話よりもずっとわかりやすい。覚えられないけど。
神話が終わってから水に葉を浮かべたコップが配られた。
「洗礼の神ククアケよ、新たなる使徒にご加護を」
私たちは葉を浮かべた水を一気に飲み干した。
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