神官長の呼び出し
題名が....。いいのを思いつけなかったのでとりあえずです(;_;)
「セレナ! おい起きろって」
肩を揺さぶられて目が覚める。茶色の髪をもつダリウスの茶色の目にのぞき込まれる。私が目を開けたことに気づいて、ホッとしているみたい。
「オズワルトと一緒に急に倒れたからな。心配したぞ」
そうだった。私たちが無断で外出したことがばらされてしまったんだ! ザンクは、『ヒトガタ』を使って誰かに言葉を伝えようとしている。『ヒトガタ』は、某ジブリ映画に出てきたものとそっくりなので私が勝手に呼んでいるだけだ。本当の名称は....何だったかな? ザンクが教えてくれてたけど忘れてしまった。
ザンクがこちらに気付く。
「おそらく魔力酔いで気絶したんだろう」
「まりょく....よい?」
「ああ、貴族ならば一度は経験したことがあるのが普通なんだがな。このあいだ魔力が増えたばかりだからだろう。経験したことがないかとは思ってた。急に魔力を使うことに体が慣れておらず、倦怠感や気絶することも多い。おそらく魔力酔いだな」
ザンクはダリウスにうなずきかける。どうやら2人の仲が縮まりつつあるみたいだ。私のせい、ではない。私のおかげ、というのが正解だろう。
うんうん、と2人の成長を微笑ましくおもっていると、ピンクの髪が視界に入った。
オズワルトは未だに目覚めていないようだ。視線でオズワルトの安否を尋ねると、ダリウスは肩をすくめて見せる。
「あんましうるさいから、ちょっとな」
どうやら2回目の失神のようだ。ダリウスはこの間ザンクにやられてたけれど、どうやらそこそこは強いらしい。ここ数日でダリウスの印象はだいぶ変わったけれど、さらに変化する。
よく見ると、オズワルトはすこし出血があるように見受けられる。でも、ファフニールの傷に比べたら可愛いものだから、哀れみを向けるほどでもないかな、と思い直す。
ガッ。
急に扉が開けられて、数名の神官が入ってくる。夜だというのにお構いなしにズカズカと足音を立てるので、部屋で寝ていた子供たちが何人か目を覚ましてしまった。ざわめきや小さな悲鳴が聞こえるなか私は腕を乱暴に掴まれる。
「セレナだな? 連れてこい」
ダリウスは私を解放させようと抵抗してくれている。さっき認識したとおり、ダリウスは強いけれども、いかんせん相手は大の大人だし、複数人だ。歯が立つ相手ではない。私は連れて廊下に出された。
「お前がウァンドールか。おいこいつも連れてこい」
ダリウスまで神官に連れて行かれることになってしまった。
「ごめん、ダリウス」
ふたりして連れ出されながらダリウスに謝る。
「まあな。怒られるくらい慣れてるし、どうってことない」
こんな時でも冗談をいってくれるのが嬉しい。
......そうだった! 私は怒られるのは覚悟できてたんだった! これくらいあのファフニールの命にくらべたらなんてことないはずだった。そう思ったら、気が軽くなった。
「神官長。連れてまいりました」
私を連れてくるように命じたのは神官長のよう。当然だ、オズワルドが言ったのだから。入るように神官たちに促され、私たちは神官長のいる部屋に通される。
部屋には神官長の他にもう2人男がいる。そのうちの1人は、タレ目で温和そうな顔をしていて、もうひとりはゴツい。
「ロズベルク様。彼女が聖水の池に落ちた娘です」
神官長はタレ目の男に敬語で言う。ん????? 話題がどうも思ってたのと違うようだ。てっきり外出したことについてだと思っていたのに。ロズベルクと呼ばれたタレ目の男は私のことをしばらくじっと眺めたのち、神官長ともうひとりに言う。
「そうだな、確かに始末するには惜しい。口封じをした上で連れて行く。......後ろのやつは、どうでもいい。始末しておけ」
話の雲行きがますますおかしい! 怒られる、とかそんな悠長なことではないみたいだ。もしかしたら結構危険なかんじかもしれない。
「時間がない。とりあえず魔術契約を結ぶぞ。おい、持ってるだろうな?」
もちろん、ともうひとりの男が恭しく差し出すのは短剣だ。なんか見たことある? そうだ。母様が死ぬ前に見たんだ。母様は家に押し入ってきた男たちに、契約を結ばされたのだ。当時はすでに母様の魔力量は少なくなっていて、母様は抵抗できなかった。
だめだ。この短剣で契約を結ぶのは危険だ。このままじゃあぶない。わたしの頭の中で警報がなる。
しかし抵抗しようにも、先程気絶してから魔力が使いにくい。
これがザンクの言う『魔力酔い』なのか。
パサ。髪が一房切り取られた。
この契約には契約者の髪の一部と魔力が必要なのだ。
ロズベルグはステッキをだして青色に光る文字で空中に契約内容を記していく。
さあ、というようにロズベルグは私にステッキを握らせ、名前を書くだけだ、と諭す。しかし私は知っている、これに署名したら終わりだと。
なかなか署名をしようとしない私に部下のほうが痺れを切らした。私に無理やり署名をさせようと、腕をつかんで動かそうとする。
『母様になにするの。やめて』
幼いころのセレナの記憶がリフレインする。無理やりサインさせられた母様は、疲れ切っていたが、私を逃した。気丈だった母様の涙をみたのは、あれが最初で最後。
嫌だ!!
また魔力が暴走するのを感じる。私がサインを強要する男を睨めつけると、男は気絶した。私は契約書も視線で破棄することに成功した。神官長は驚いたように見比べているが、ロズベルグは興味深そうに言う。
「驚いたな。その眼は『幻の仲裁者』か。ますます気に入ったよ」
「お黙りになって?」
視線をロズベルグに向けるけれど、ロズベルグは口から血を出しながらもたのしそうに笑っている。マゾだ。気持ち悪い。
神官長は『幻の仲介者』などというだいそれたものは知らないらしく、ロズベルグのような興奮はしていない。
(ああ、ロズベルグが変なだけね)
ぐらっと視界が歪む。魔力酔いがぶり返してきたみたいだ。楽しそうに再度ステッキを動かすロズベルグ。私は魔力酔いで立つのもやっとなほどに気持ちが悪いので、柱に寄りかからずにはいられなかった。
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