テンプレ最強説の提唱!!
部屋に戻った私たちに気づいたのは、ダリウスの腰巾着であったスネ夫(オズマンド=エグワァル)だけだった。途中で私たちがいないことに気づき、そのまま起きていたようだ。
「夜中に3人でどこにいってたんだか。ハハハ、ほんっと君たち馬鹿じゃないの?」
オズマンドは、月明かりでもわかるピンク色の髪をはためかせながら、さも面白そうに笑う。
「黙れ、オズマンド(エグワァル)」
ダリウスとザンクは同時に威嚇するように言う。
「オズマンド、今すぐその口を閉じないと....」
「へへ。そんな偉そうにしてて大丈夫なのかなあ? 家からもう追い出されてる君にそんな後ろ盾ないと思ってたんだよねー。ねえ、ダリウス。そこの異国娘と楽しいことはできたのかい?」
下卑た笑いを浮かべるオズマンド。下卑た笑い方だけでなく、『異国娘』と私を呼ぶ呼び方は、ラオスにそっくりで、思わずギュッとこぶしを握りしめている自分に気付く。これまでイエスマンだったオズマンドの噛みつきに、ダリウスもぐっと唇を噛んでいるのが分かった。
「ああそうそう、神官長がセレナを呼びにいらっしゃったんだけど、なんの用だっただろうね。買い取り手が見つかったのかもね、おめでとう。
ああ、僕はもちろん君たちの仲を引き裂くのは、親友として気が引けたから『君たちが2人で窓からでてって、ザンクも後から追いかけてった』くらいのことは伝えといてあげたよ?
こんな夜に窓から逃げるなんて、なかなか覚悟があるなあ。ふふふっ。この部屋から君たちが3人ともいなくなっちゃうのかなあ? 寂しくなっちゃうな」
嬉しそうにオズマンドは話し続ける。
「特に2人ともほんっと馬鹿だよね、こんな異国女に情けをかけるなんてさ。どうせ異国娼婦との間にうまれた庶子なんだろうのに....」
「なんだかかわいいたぬきさんが鳴いているようね」
私がゆっくりとほほえみかけると、オズマンドがひゅっと息を飲んだ音が漏れ聞こえた。これは、父の正妻カミラ様から習得した『相手に有無を言わせない微笑み』である。どうやら効果的面のよう。初めてカミラ様に感謝する。
「あらオズマンド、あなただったの? てっきりたぬきだとばかり....。ごめんなさいね、あなたとたぬきを間違えるなんて。......そうそう、なにかわたくしにおっしゃっていて?」
これは、テンプレである。カミラ様の言葉を少しだけ変えたものの、表現としては全くのテンプレ。カミラ様、恐るべし。実際の言葉と比較してみてもそっくりにできた。
『なんだか気味の悪い捨て猫が鳴いているようね。 あらセレナさん、あなただったの? てっきり捨て猫だとばかり....。ごめんなさいね、まさか自分の立場もわきまえずにあなたがサボっているとは思わなくて。....そうそう、なにかおっしゃっていて?』
で、だいたいラオスがこういうのもお約束なのだ。
『いえいえ、母上。母上は汚らわしい異国の娼婦の娘には十分すぎるほどよくなさっています。立場をわきまえていないこの娘がいけないのです。どうかお気になさらず』
この必殺『相手に有無を言わせない微笑み』と『相手の心を打ち砕く嫌味』はまだ初披露。ラオスのようなお約束の追い打ちを繰り出すことは、まだザンクにもダリウスにも求めてはいけない。
にこお。わたしは引きつりそうになる笑みを必死に維持するべく、さらに口角をあげて見せる。となりのダリウスまで何故か身震いするのが分かった。ザンクがおちついているのは、持ち前の冷静さか、慣れか。もちろん前者のはず!!
「私の母についておっしゃったかしら? え? なにも言ってない? そうでしょうとも。
で、神官長についてもなにか?」
さっきまでの饒舌が嘘のようにオズマンドは、首をふるふるとさせる。こちらを睨んではいるが。
グイ。咎めるように私の袖を引いたザンクが私とオズマンドの間に割り込むように視界に入って来たかと思うと、何故かザンクに抱きしめられた。
「セレナ、いいか。少し落ち着くのだ。深呼吸しなさい。....そうだ、もう一度。
いいか、はっきりとはわからぬが、あのままだったら其方のちからでエグワァルは死んでいたかもしれない....近くにそういった力を持つ方がいるのだ。無論、同じなわけはないのだが。とりあえず、おちつくのだ。ウァンドールもわたしもいる、大丈夫だ」
『死にそう』そんなパワーワードに正気をハッとする。私はどうやら、とても気を張っていたようだ。ついでにザンクとの距離がとてもちかいことにも気付く。
バタン。あわててそちらを見ると、ピンクのなにかが床に落ちている。なんだったか、と考えようとしたが、体を渦巻くなにかに飲まれるようにして、私も意識を手放してしまった。




