第1話 剣と魔法の世界、魔法抜きで。
頑張りました、隔日投稿。滑り込みですね。毎日投稿してらっしゃる作者さんもいるので何を偉そうに、という話なんですが……。これからしっかり更新していけるよう努力していきますので、見守ってくださると幸いです。
今回ですが、あまり話が進まないほぼ説明回です。どうしてこうなった。まだ序盤ぞ?流し読みでも全然大丈夫なので、サラーっと読んでもらうのがいいかもしれません。
それでは本編の方へ、どうぞ~。
(さて……。)
あの後、鉞伐は、視界が真っ白に覆われて、次の瞬間には邪神の、シャノンの庇護下である《邪神の無道洞窟》にいた。
(早速ラストダンジョン最深部からスタートってね。2周目にしてハードモードすぎだろ。)
とはいえそれも仕方ないことである。シャノンから聞いた通り、ここでギリギリ干渉ができるわけだから。
(ミニマップが出るわけでもないからな。現在位置が……少なくともどう進めば地上なのかくらいは把握できるといいんだけど。)
そう言いつつ辺りを見回してみると、立札が目に入った。ここは仮にもラストダンジョンなわけで、人間種が入れる可能性は低い。故に鉞伐はシャノンの計らいではないかと憶測を立てる。
『《六大神境》が一つ、《邪神の無道洞窟》へようこそ。』
どうやらおおかた予想的中なようだ。そんな言葉とともに、最深部と思しきこの場所の周辺の地図が書かれていた。とはいえ、そこまで広範囲ではないので、詳しい現在位置は分かりそうもなかった。
「が、十分。地上への方向は書かれてる。行く……カァ……っと。その前に、ステータス、わかるか?」
そう呟きながら、クソみたいな結果が書かれていたステータスプレートのことを思い出す。
(あ。あれ、部屋におきっぱだ。別にすぐどこかに行くわけじゃないと思って部屋の鍵付き棚に入れたままなはず……。あれが唯一の遺品になってるだろうな。我ながら分かりやすい遺品を残したもんだ。)
今度は脳内でそんなことをつぶやきながらも、ステータスについて考えていた。可能性としては、
①ステータスプレートなしでステータスは分からない。この世界にそんな能力はない。
②できる。ステータスプレートはあくまで既存のスキルを応用しただけ。古代の遺物扱いなのは、その方法が分からなかったから。
……という2つが考えられた。
(とりあえず、試してみるか。)
と、言うところまで考えて、声を出さないように細心の注意を払い、誰がいるわけでもないのに人目を気にしてから、
(……ステータスオープン。)
と心の中で唱えた。
───〖脚下照顧〗獲得。
───〖脚下照顧〗に〖言語化〗追加。───〖数値化〗追加。───〖幻視〗追加。
………………………………………………………………
『・・・・・・』
種類:シュヴェルト・ゴーレム :D+(成長力:L+α)
Lv .1
体力:666 (コア)
筋力:0(+100 魔力変換Ⅰ+
魔力:12345(+自動回復 ゴーレム+
攻撃:444
防御:241(+190 コア生命体+
精神:逡ー蟶ク蛟、謨?ィ域クャ荳崎?
《パッシブスキル》
〖コア生命体〗+再構築
〖ゴーレム〗+魔力変換Ⅰ
〖脚下照顧〗+言語化+数値化+幻視
〖神の叡智〗+前世の記憶
〖無限成長〗
〖言語理解〗
《アクティブスキル》
〖自然体〗
〖すべる〗
〖切りつけ〗
《ネームドスキル》
〖フォン・シュヴェルテン・ラプター〗
〖多刀流〗
〖名刀〗
〖効率厨〗
〖神の友〗+邪神の親友+邪神の盟友
〖学徒〗
《ユニークスキル》
………………………………………………………………
(ラッキーだったな。アナウンスが言う〖脚下照顧〗とその派生でステータスが可視化されたってところか。物は試しだな。意外とできるもんだ。)
アナウンスが何か、あるいは誰かは分からないが、それについては気にしていないようだ。鉞伐の中の基準は時々おかしい。
(ってか、知らない言葉ばかりだ。UIも、ステータスプレート……めんどくさいからSPでいいか、とも少し……変わってる?)
ステータスを出すことには成功した。SPを見たからこのような形になったのか、それともこの世界ではステータスはこのような形で固定されているのか。多少の違いがあったり、鉞伐の知らない言葉も使われていたりするので、後者だろうという考察ができるが。
(しかしながら、精神の欄が文字化けしてるな……。いや、ほんとにそのレベルなの?シャノンは精神強度が異常に高いって言ってたけど。)
たかが人間の精神力が一世界のシステムすら凌駕するとは思えない、と鉞伐は思う。輪廻転生の間ずっと意識と記憶を持ち続けられるような存在がそうそういてたまるかという気持ちもあって、それらが拮抗しているが。
(……不安要素とはいえ、今すぐどうこうってわけじゃない。また考えるか。)
「……あ。」
そこまで考えて、思い出した。
(亜空間の話聞きそびれた!…………はあ、しょうがない……。次会った時に聞くか……。)
くっそ、不安だ、と心の中で悪態をつく。鉞伐には合理性を重んじることに加えて、事前情報はしっかり集めきって初めて安心、といういわゆる心配性な部分もあるからだ。とはいえ、そこにずっとこだわって考えているわけにもいかないので、次に進む。
(魔力だけ、これ段違いだな。精神は置いといて。自動回復機能まである。でも、魔法系らしき能力はない……。となると、生命維持にかかわってる?)
鉞伐がこう考えたのは、自分の種類ゆえだった。種類:シュヴェルト・ゴーレム。つまるところのゴーレムである。この際、シュヴェルトが何なのかは関係ない。
ゴーレムと言えば、どんなものだろうか。コアがあって、金属の体があって、コアを壊さないと倒せなくて。ゴーレムとはどういうものか、ということを少しでも知っている人なら、そんな存在を想像するだろう。
では考えてみよう。
(コアを壊さないと倒せない。でも体は別にある。じゃあ、その体はどうやって動いている?)
もう少し“ゴーレム”を知っている人なら、コアを壊すと、ガラガラと体が崩れる、なんてイメージを持っているかもしれない。
(体は何かで物理的につながれているわけではない、と。)
そして、ゴーレムは、空想の存在である。
(かの地球になくて、別世界にはあるもの。つまり、魔力で体を支えてるんじゃないか?)
ここまでこれば分かってもらえるだろうか。ゴーレムが魔力切れを起こしたら体の形を保てず、コアもむき出しで放り出されて動けなくなる。つまりゴーレムにとって魔力の枯渇とは致命的な問題なのだ。だから、魔力切れなんてことにならないように膨大な魔力と自動回復を生まれたときから持っているのだ。どうやって生まれるのかは謎だが。
(ゴーレムはその代わり、魔力消費の多いスキルもなく、知能が低いから魔法も習得できない、ってところかな。この辺はただの想像でしかないが。)
確かに根拠はなかったが、もしできていれば今頃この世界はゴーレムの天下になっていることだろう。しかしこの前提、よく考えてみよう。
(……俺は、魔法が使えるであろう人間種程度の知能があるんだが……。使えるといいな、魔法。戦術の幅が広がるし、意表をつけるし、大きな武器になる。使ってみたい気持ちも多少あるし。)
とまあ、そんなところでステータスの考察は一通り終わった。とはいえ、ゴーレムになってそもそも変わったこともある。鉞伐は目に入っていた地下水脈の方へ少し歩いた。振り向かずに。
(全方位見える……。コアが視点なんだな。不思議な感覚だ。)
そんなことを考えながら、湖を覗く。とはいっても、自分がどんな見た目になっているか、大体は見えていた。視界の端には、深い銀色に輝く剣が見える。
(比べるものがないから、どんな大きさかはわからないが……これは。)
なんというか、かなり質素な見た目になっていた。刀身の短い剣が四本ひとりでに立っていて、その中心に赤い宝石のような球体が浮いおり、四足歩行であるだろうことがかろうじて分かった。
(本能的に動き方は分かるから不便とは思ってなかったが、手がないのはつらいな。四足ですら剣だから細かい作業はおろか、何も不用意に触れない。)
それに加えて、と呟きつつ、自分の大きさがどの程度か考える。剣の形状からしてこれはいわゆるダガーだろう。ダガーの全長は10~30㎝で、これは柄と刀身の比率からして30㎝タイプだと考えられる。だとしても、大人の膝丈にすら及ばない。
(これは、だいぶ小さいと思って動いた方がよさそうだな。にしても、こんな生き物(?)はこの世界で生きていけるのか?)
そんな疑問は抱いたものの、今はそれを気にしている時ではない。
(最後。これは一番大事だ。スキルの性能検証。)
自分のスキルを知ることは、これから生きていく、だけならまだしも、強くなっていくために最重要なことだ。彼を知り己を知れば百戦危うからずという言葉もある。ちなみに、先ほどステータスを眺めていた時に分かったことは、このようになっている。
・スキルは本能的に使うことができる。何となく使い方がわかる。
・使い方が分かっても、どうなるかはわからない。足が動かせることを気づいた赤ん坊がすぐ歩けるようにならないのと同じ。
・《パッシブスキル》と《ネームドスキル》は常に効果を発揮するスキルであること。ただし2つの違いは不明。効果も分からない。
・レベルシステムがあること。また、強さ評価の基準と思しきアルファベットがあること。
・教皇が言う数値の目安が正しければ多分自分は今弱いので、誰かに会うことは避けた方がいいこと。
(さて、使えなさそうなスキルしかないが、順当に上から行くか。)
そう考えてまず発動させたのは〖自然体〗だ。が。
(何も起こらない。いやほんとに、光るだけとか、明確にデメリットがあるとかじゃなくて、マジでなんも起こらん。)
しかし一瞬、出しっぱなしのステータスの魔力欄の数字が動いたので、魔力を使って発動したと言うことはわかる。自動回復ですぐ元に戻ったが。
(これはとりあえず封印だな。はい、次次。)
そして2つ目のスキルを発動したとたん、すべった。いや、使ったスキルが〖すべる〗なので確かに筋は通っているが。
とにかくここは洞窟内なので地面の凹凸が激しい。なので鉞伐はその辺を暴れまわりながら滑り続ける羽目になる、と言うわけだ。
(マジでこれッッ!「うわ壁危ねぇ!」いつッ使うんだよッッ。「っとォ!」デメリットもないしッッ「げっ!」封印とか言ってたけどッッ「水没寸前……。すぐ解除すりゃよかった。」本当のデメリットスキルは求めてねえよ。)
とまあこのように、声を上げながら別のことを考えるという器用なことをやってのけた鉞伐だった。そして、ちゃんと仮説も立てる。
(まあ、全身の摩擦力を消すってスキルかな?いや本当にどこで使うんだよ。摩擦ゼロだと切れ味なくなるし。よし次。)
仮説を立てたところでスキルを使うかは別問題だが……。そして、最後のスキル。これまで2つが安直な名前だけに、期待が高まる。
(足の剣が、淡く光った。ん、これはやはり?)
鉞伐の足(剣)が、ズズ、と地面に少し刺さる。やはりこの〖切りつけ〗、剣の切れ味を挙げてくれるスキルである期待が高まる。
(そのへんの岩で試し切りを……と思ったけど途中で止まって抜けなくなったら冗談では済まん。やめとくか。)
そう。岩に刺さったまま止まってしまえば、引っこ抜くために〖切りつけ〗を使用しなければいけない。現状、どれか一本に限定して使えないので、四脚すべて効果が出る。
するとどうなるか。踏ん張った足が岩や地面に刺さる。また踏ん張って別の足が刺さる。そしてまた……、と永遠に続いてしまうのだ。効果が詳しくわからないのは残念だが、検証はお預けになった。
____________________________________________
「さて、と。こんなもんかな。」
スキルの検証後、しばらく調べ落としがないか考えてから、鉞伐はそう呟いた。しっかり検証するのも大事だが、いつまでもここでのんびりしているわけにもいかない。それにもう、十分いろいろ検証しつくした。
(あの雑地図もっかい見てから、向かうか、地上に。)
次回は話進めます(震え声)。
評価感想、良ければよろしくお願いします。特に感想、誤字脱字報告含め、これからの執筆に活かしたいので、よろしくお願いします。
アンチコメ、酷評大歓迎。