第0話 プロローグ
第0話ということで、ここまでは序章の序章です。でも、ここまで飛ばし読みでいい訳じゃないんですけどね。話わかんなくなっちゃいます。
ということで、珍しく高頻度で投稿です。文字数戻って約5000文字。読みやすくなっております。物足りなかったら申し訳ないですm(_ _)m
それでは、本編をどうぞ〜。
§ side鉞伐 §
わりい、おれ死んだ。
そう、俺は市井田に殺され、物言わぬ屍になったはずである。の、だが。この状況は何なのだろう。言葉にすることは難しいが、こんなことであれ、というかどんなことであれ、考えられているというのは不思議だ。
と、言うのも、天国や地獄───つまりは死後の世界だが───など到底信じられない。死ねばそこにあるのは、無だろう。いや、この場合、“無い”のか。まあ、とはいえ異世界転移なんて信じがたいことを経験してきた身でこんな言い分というのも些か苦しいだろうがな。
『……やあ。』
「!?」
……どうやら、死後の世界という可能性が高いと言えなくもないだろうと想像できなくもない点について考慮せざるを得ない状況に置かれていることを誠に遺憾ながら、そう、とても嫌だが、信じねばならないようだ。
いやあ、数奇な運命と言っても足りないくらいの人生を歩むことになってしまった。ものの数時間で。高校なのに転校生、見るからに立てこもり犯な奴に遭遇、異世界転移、さらにはクラスメイトに殺される……だったな。その人生ももう終わったが。偶然なんて1回でも嫌なのにこう立て続けに起こって辟易するなとは無茶な話だ。
にしても、谷底で背中からやたら硬い木の枝が刺さって死んだので、某イ〇ーガー氏の気持ちが文字通り痛いほどわかった。
あれはほんとに痛かった。巨人にはなれなかった。
もしまだ俺にチャンスがあるなら、いい話のネタになりそうだな。
『……あの、……そろそろいい?』
「……何が。」
喋るってことは分かってたさ。スルーしてたんだよ。あえて。目の前の禍々しい光の玉が話しかけてきて、適当にあしらえる人間がどこにいる?まあ、害はなさそうだし、敵意もなさそうだから放置できたわけだが……。
『説明しても、いいかな。』
「……何を。」
おっと、突拍子もなさすぎて同じような返事をしてしまった。失敬失敬。
『ああ、それと……ありがとね。』
今、俺の脳内には宇宙が広がっている。なんでお礼を?????
『僕に害や敵意がなさそうだって言って……じゃなかったね、思ってくれたからさ。』
はい、確定。心を読まれてるよ。これは。しぜ~んに、ナチュラル~に。許可してないぞコラ!
『おっと、ついつい癖で。ごめんね~。』
「まあ、良しとしておくか。」
普通はたしかに、不快に思うだろう。でも何だか気にならないんだよなー。心を開いてる証拠ってか?文字通り。まあ起こってしまったことだし、なによりここで不快がって憤慨して話を進めないのも非合理的だしなァ。
「で、聞きそびれたけど、説明とやら、聞かせてくれ。」
情報ってのは攻守兼用なわけで、もらっておくに限る。何が“知らない方がいいこともあるー”だ。くそくらえ。
『じゃ、まずはここがどこかってことから。気になってたよね?』
「お得意の読心術のおかげでばっちり正解だ。」
『はは、許してくれたんじゃなかったの?』
『とにかく、ここは通称“亜空間”だよ。細かいこと言うとちっちゃい世界なんだけど、気になったらあとで聞いて。長くなるからさ。』
「そうさせてもらう。続けてくれ。」
『うん。この世界には大きな空間が2つある。一般的には、と言っても君は知らなかったろうけど、“上界”と“下界”って呼ばれてる。まあ、この呼び方は嫌いだから、正式名称の“無界”、“世界”っていう風に呼び分けてほしいかな。ほんと、某黒色の閃光くんたちよりも嫌いだよ。』
まじか。いるのか、「G」。“一匹いたら百匹いると思え”と言われる彼らだが、別空間まで広がる繁殖力には脱帽だわ。まあ、在来種って線もあるか。いやあ、それにしてもこりゃ常識さんがいよいよ仕事を奪われてきたな。
『嫌いと言っても、話し相手なんて君ぐらいだから関係ないんだけど。まあ、在来種かどうかって話は、ご想像にお任せするよ。』
『それにしても、ふふ、やっぱり君、面白いね。誰かと話をするなんていつぶりだろ……。』
「まだ俺の心を読み続けていることはおいておいて、どういうことだ?」
いや、知りたいのはここだな……。
「何者、なんだ?」
『そうだね。やっぱり、そこが気になるよね。僕は、邪神だよ。』
……邪神、邪神だって?こいつが?こいつが元凶なのか?こいつが、あの世界に殺戮齎妨愚とかいうふざけた名前の、通称“魔王”を放ったのか?そんなことがなければ、異世界転移も、死ぬこともなかった……。その諸悪の根源だって?
本当に?だったら、死んだはずの俺を何故呼んだ。何故この世界について答えて、身の上話を語った。冥土の土産?いや、おかしい。ただ煽りに来ただけなら、もっと絶望的な事実を突きつけてくるのではないのか?……わからん。どちらをとっても根拠がない。……悪魔の証明だ。
『……本人である僕が言ってもさ、信じてもらえないかもしれないけど、あんなことができるような力は、今の僕にはないよ。せいぜいが消えかけた魂をなんとかこの空間に引き寄せるくらいのことしかできない。』
『あんな意味の分からない生物をイチから作り出すなんてできっこないさ。』
「そうか。まあ、根拠がないから信じられんが、別に嘘である根拠もないからな。とりあえずそう言うことで話を進めてくれ。」
『……よく、割り切れるね。殺されたってのに。命、それも一番大事な自分の命なのに。』
「自分が一番……そうとも限らんぜ……。とにかく、ここでキレても何にもならないからな。ほら、まだなんかあんなら話せや。ほれほれ。」
『う、うん、え?うん、これって辛気臭くなるところじゃないの?』
「話し進まなくなるから、ほら。ハーリーハーリー!」
『ぇぇ……?まあ……うん、いいか。』
『それじゃ、今君がどんな状態か教えてあげるよ。』
『端的に言ってしまえばね、君は消されるところだったんだ。』
「……端的すぎるだろ。」
『はは、そうだね。まず先にこれだけは言っておきたいんだけど、僕以外、だよ。』
……???
『神に、消されそうだったんだよ。文字通りね。ちょっと説明長くなるよ。聞いてくれる?』
「勿論。簡潔に述べよ。」
『ふふ、うん。あのね、死後の世界って、確かにあるんだよ。生命はそこで魂だけになって彷徨い、次の生を待つ。いわゆる輪廻転生だね。』
『そしてどんどん摩耗して、次の生はどんどん知能がさがっていく。いつかは消えるから、その度に新しい魂も生まれる。君はその1周目だよ。新人さんってわけだ。』
『そして君は、優秀すぎた。あいつらにとっちゃ不良品。次の生を待つ間、魂だけの状態で意識なんて保てやしない。でも、君はそうじゃない。』
『気づいてるでしょ?自分の体がないこと。魂だけで意識があるんだ。それは偏に君の精神の異常性ゆえだよ。』
「……一旦待て。壮大な前フリで喧嘩を売ってきのか?俺が狂人だと。買うぞ?喧嘩。んん?」
『どうどう、精神が強靭ってことだよ。狂人じゃなくて。強いって褒めてるんだぞ?』
『まあでも、悪いね。誰かと話すことなんてほとんど無かったから言葉足らずでさ。』
「抉っちまったか。古傷。ま、頭使って聞くことにするよ。」
『ありがと。お願いできるかな?じゃあ続きだ。』
『そんなこんなで、君は意識が途切れなかった。それほどに強いと、普通の輪廻転生も強くてニューゲームになっちゃう。』
『魂も摩耗せずね。そんなことし続けたら、存在が強くなり続けるんだ。そしたらさ、神を超えれちゃうんだよ。』
『それに気づいてたんだろうね。あいつら、君の心を折ろうと腐心してたよ。』
「……っ。」
『……あるみたいだね、心当たり。はは、僕も古傷抉っちゃったみたいだ。ごめんね。』
「……続けて、くれ。」
『そんなとき、君にとっての第2の世界で異世界人の召喚が起こった。神がいちばん干渉しやすい世界なんだよ、あそこ。私含めね。』
『だから君は、殺されるように仕組まれた。念の為、力すら奪ってね。そんな事のためにあいつらは時間をかけて……。チッ。愚かすぎて反吐が出る……。』
「……お前が加担してるなら、ここまで話す必要は、確かにないな。その感情にも、どうやら本物に感じる……よ。」
『信用……してくれるの?僕から信用してなんて、口が裂けても言えないけどね……。』
「今のところは……な……。」
『結局、辛気臭くなっちゃったね……。続き、話すよ。』
「ああ、はは……。そうだな……。」
『そうしてやつらは無垢な魂になった君を、消そうとしたんだ。でもここで、想定外が起こった。無垢にならなかったんだ。』
『ほんとに、隙は一瞬だった。それでも隙は生まれた。動いてるものを分解するのって、時間かかるでしょ?』
「何となく想像つくな。未経験だが。」
『うんうん。でも、奴らの無駄な能力の高さを考えると、誤差にしかならない。それでも、こっちに引っ張ることの方が遥かに簡単だ。』
『危なかったよ。僕も一緒に巻き込まれて消え去るところだった。あいつら、ここには干渉できない。私を疎んで自分でも簡単に手出できないような封印措置をしたんだ。』
『少しはできたでしょ、意趣返し。ふふ、僕たち、疎まれ仲間だね……。なんで僕が厳重に封印するほど疎まれてるのかはわかんないんだけど……ね。』
「……そう、みたいだな。自分のことは分からないもんだ。
…………ょし。決めた。今まで合理性で感情に蓋をしてたけど、信じる。信じるよ。俺は、お前を信じてみたい。月並みだけど、これでも勇気だしたんだぜ。」
『ぅん……うん!ありがとう。伝わってるよ、君の気持ちは。ふふふ、それはもう、直接ね。』
「……感情すら読めるとは、これは恐れ入ったなぁ。」
『ふふふ、ふふふふ。嬉しいなぁ……。僕、味方なんて初めてだよ……。ありがと。……ありがとう。』
「それならこちらも礼をしないとな。俺を命の危機から救ってくれて、ありがとう。」
『それこそ、受け取れないよ。これから君を利用する身として。』
「それはなんだ?言わせようとしてるのか?まあ言うけど、俺らは味方になったんだから、利用しあってなんぼだろ。」
『そんなつもりはなかったんだけど……そこは、“味方同士なんだからそんなこと気にすんなよ”じゃない?』
「俺は合理性を優先する努力をやめた訳ではない。」
『ふふ、そっか。変わらないみたいで何より。』
「そりゃどうも。」
『じゃ、改めて。』
「聞こう。」
『うん。君には、神を、聖神を殺してもらいたい。』
「ああ。」
そう答えて俺は、力強く頷いた。
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『何今の。ナレーションみたいにさ……ふふ。』
「いいだろ、割と癖なんだよ。感動的なシーンはナレーションで〆たくないか?」
『……ふーん、ま、いいや。で、なんか聞いておきたいことある?』
先程の会話を経て、功刀は転生することになった。それはもう、気軽に。邪神だって仮にも神と言ったところだろうか。
「そりゃ、何処に、何に転生するのか、ってことだろ。」
功刀は、至極当然のことを聞いた。邪神から説明がないのがおかしいほどである。
『何かはわかんないよ。ただ、僕の加護は精一杯かけるつもりだから、最悪なよわよわ種族にはならないと思うけど……。この封印のせいで、あの世界には最も干渉しずらくなってるんだ。』
「WTF……。それで最上位の神殺せんのかよ……。まあ、やると決めたんだ。それで場所は?」
『場所は、まあ言っても分からないだろうけど《六大神境》が一つ、《邪神の無道洞窟》だよ。不本意な名前だけどね。いちばん干渉しやすいんだ。』
「……魔王は、そこにいるって聞いたんだが。」
『WTF……。マジで?……可能性としては、そこに送り込まれてボスが倒され、乗っ取りを食らったってとこかな……。』
『僕自身、生まれてすぐ封印されたから、《六大神境》についてもよく分かってないんだけど。』
「……分からんことだらけだな。不安不安。」
『表情、変わってないよ?』
「昔からだ。」
『そう……。まあ、わかんない事だらけだけど、やるしかない。そうでしょ?』
「その通り。」
『他に、質問は?』
「……答えられんの?」
『……………………………………無理。』
「だろうな。じゃあ、行くよ。」
『うん。……頑張って。』
「ああ……っと。名前、ないだろ?」
『僕の?うん。どうしてそれを?』
「生まれてすぐ封印されるような邪神様にゃ、名付けてくれるような人はいないだろうよ。」
『まあね……。』
「だから、………………そうだな。」
「“シャノン・ブラッドロード”でどうだ。」
「永遠に続く陰に隠れた血塗られた道の先に、目的地がある、って由来だな。」
『……もしかして……厨二病?』
「……知ってるのか。厨二病。悪いか?」
『うんん。気に入ったよ。由来はともかくね。』
「俺としちゃ由来の方が大事なんだがな……。まあ、そろそろ行くよ。」
『うん。』
「またな。シャノン。」
『うん!』
第0話(5話目)、読了ありがとうございます。ここから物語が始動ですね。思った以上に(((ネタバレなので自主規制)))になってしまって、これからの展開に悩んでます。
初の一人称視点、どうでしたか?まだまだ改善の余地がありそうなんですよね……。説明口調になりがちなとことか。
これからもこんなガタガタな虫獅中 身子でよければ、どうぞよろしくお願いします!
評価感想、良ければよろしくお願いします。特に感想、誤字脱字報告含め、これからの執筆に活かしたいので、よろしくお願いします。
アンチコメ、酷評大歓迎。