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中年冒険者は気苦労が絶えない  作者: 相馬あさ
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第六話 レオスとダンジョン(前編)4

 ダンジョンを発見してから3日。

 俺はついに冒険者ギルドでモミジたちを捕まえることに成功した。


「モミジ、やっと見つけたぞ」

「先輩? 久しぶりですね。どうしたんですか?」


 俺が声をかけると、モミジは笑顔で近付いて来た。相変わらずトップ冒険者とは思えないほど子供っぽい奴だ。

 モミジの後ろにはミツハ、セドリック、テレンスの3人が控えており、全員俺を見て軽く頭を下げた。

 ギルドでの立場的には彼らの方が俺よりも上だとは思うのだが、モミジが俺に対して完全な後輩ムーブをしていることもあり、3人も俺の事を先輩として扱ってくれているようだ。


「実はな、お前たちに手伝って欲しい事があるんだ」

「私たちに? それって、冒険者としてってことですよね?」

「ああ。俺のパーティとレイドを組んで欲しい」

「レイド? いいで――」

「――待って、モミジ。安請け合いはダメ。レオスさん、その申し出はモミジや私があなたの後輩であり、友人だからですか? それとも」


 会話に割って入って来たミツハは、今まで見たことが無いほどに真剣で、氷の様に冷たい視線で俺を見た。


「私たちがSランクパーティだからですか?」

「Sランクパーティ……やはりか」


 モミジのパーティがSランクということは、モミジ以外にもSランク冒険者がいるということだ。


「その言い方、確証はなかったようですね。バーバラさんに聞けば分かる内容だと思うのですが」

「本人から直接聞きたかったからな。これまで聞きそびれていたが、お前たちのランクを教えてくれ」

「いいですよ。私がSランク、セドリックがAランクでテレンスがBランクです」

「ということは、S、S、A、BでSランクパーティか」


 俺が尋ねると、ミツハが大きく息を吐いて呆れて見せた。


「レオスさん、本当に誰にもモミジの事を聞いていないんですね……モミジ、ギルドカードを見せてあげたら?」

「うん。先輩、これ」


 俺はモミジから手渡されたギルドカードを確認し、自分の目を疑った。そこには、想像もしていなかったことが書かれていたからだ。


「……ト、SSS(トリプルエス)ランク冒険者?」

「えへへ。一応、このギルドで最強の冒険者ってことで活動させてもらってます。SSSはギルドに一人しかいないのは知ってます? 私は前任者のギルド長補佐官が冒険者を引退する時に指名されたんです。SSSランクだけは前任者からの指名制ですから」

「そ、そうなのか」


 これは本当に想定外だ。

 俺もバーバラから事前に聞かされていたので、最近はSSランクとSSSランクという新しいランクが誕生しているということは知っていた。だが、それがまさかモミジの事だとは思わなかったのだ。


「この際だから先輩に教えておくと、中央南ギルドにはSSランクが一人、Sランクがミツバと先輩の二人、Aランクがセドリックを入れて四人います。Aランク以上の冒険者をトップ冒険者って呼ぶので、先輩もせめてトップ冒険者の情報くらいは仕入れておいた方が良いと思いますよ」

「あ、ああ」


 モミジに軽く注意され、俺は情報収集を怠っていたことを反省しつつギルドカードを彼女に返した。


「それで先輩。私たちとレイドを組みたいってことですけど、何かあったんですか?」

「実はな、新しいダンジョンを発見したんだ」


 俺がダンジョンと口にすると、モミジたちの顔色が一斉に変わった。やはりこの言葉は冒険者にとって特別なのだ。


「へえ。レイドを希望しているって事は先輩も挑むつもりなんですね?」

「ああ。エマたちもそうだが、他にも経験を積ませてやりたい若手がいる」

「先輩はダンジョンには挑まないと思っていました。考えが変わったんですか?」

「……昔の俺たちのような若手に会ったんだ。そして俺は、あいつらに昔の俺たちと同じ道を歩んで欲しくないと思った。それだけだ」

「それなら、普通はダンジョンに挑むのを止めるんじゃないんですか?」

「あいつらは俺のパーティメンバーではないから、そこまで俺の身勝手を押し付ける気はない。だが、ダンジョンに挑むならせめて実力のある冒険者とレイドを組んで欲しいと思ったんだ」


 モミジはミツハたちとアイコンタクトを取った後で、真剣な顔で俺に向き直る。


「つまり、その若手パーティのために、先輩のパーティ、そして私のパーティでレイドを組んでダンジョンに挑もうってことですか?」

「いや、それだけじゃない。Aランク冒険者のパーティが一つとCランクパーティ二つがレイドを組んでくれることになっている」

「さすが堅実ですね。ちなみにAランクは誰ですか?」

「エイベルっていう奴だ。ダンジョンの攻略経験もあるらしいし、頼りになりそうだったぞ」

「えっ……」

「ん?」


 俺がエイベルの名前を出すと、モミジが固まり、ミツハが頭を抱えてため息を吐いた。セドリックとテレンスはお互い目を合わせて苦笑いを浮かべている。


「エイベルに何か問題があるのか?」

「あっ、いえ、別に問題があるってわけでもないですけど……私を誘ったのは不味いかもしれないですね」

「どういうことだ?」


 確かにエイベルからモミジにはダンジョンのことを教えるなと言われていたが、二人の間には何かあるのだろうか?

 すると気まずそうに表情を曇らせたモミジの代わりにミツハが答えた。


「私が代わりに答えますね。結論から言うと、モミジはエイベルに嫌われているんです」

「何? どうしてだ?」

「……あまり陰口のような事を言いたくないので詳細は伏せますが、ダンジョン内でモミジとエイベルが言い争いになったことがありまして、結局は当時Aランクだったモミジの決断に従う形になったんですが、それ以降エイベルはモミジの事を避けるようになりました」


 それでエイベルはあそこまでモミジの事を警戒していたという訳か。自分の考えの方が正しいと思っていたのに、上位ランクのモミジによって無理やり方針を決められて、それに従うしかなかった。それが彼の中でわだかまりとして残っているのだろう。


「ということは、エイベル自身に問題があるわけではないんだな?」

「はい。少し生意気な部分はありますが、冒険者ならよくいるタイプですし、実力はギルド長が保証しています。パーティメンバーのシリル、ヘクター、レヴィの3人と共に昨年発生した魔物の大量発生を最前線で戦い抜いた経験があるので、戦闘面では頼りになるはずです」

「良くも悪くも話した時の印象通りの奴みたいだな。俺も彼と言い争いにならないように気を付けるよ」


 ダンジョン内で喧嘩など絶対にしたくない。連携が取れなくなったら命に関わるからな。

 どちらかといえば、俺は最終的なブレーキ役になればいいので、ダンジョン攻略の基本的な方針はエイベルに任せた方がいいのかもしれない。


「しかし困ったな。連携が取れなくなる可能性があるからモミジと組む訳にもいかなくなった……ミツハ、他のAランク冒険者でレイドを組んでくれそうな奴はいないか? あと二人いるはずだよな?」

「Aランクですか? それは――」

「――そんな奴、いるわけがない」


 ミツハの言葉に被せるように、低い男性の声が俺たちの会話に割り込んでくる。

 俺が視線を向けると、そこには一目で一流の冒険者だと分かる筋骨隆々の男が立っていた。

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