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中年冒険者は気苦労が絶えない  作者: 相馬あさ
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第五話 レオスとEランクパーティ10

「ランバートさん! 今日の探索でレイドを組んで頂けないでしょうか!」


 三月上旬、探索へ出発しようとした俺にルークが大声で頼み込んで来た。

 こいつの見た目が爽やか系のイケメンではなかったら何歩か距離を取るくらいには暑苦しい。

 やっと秋になったというのに、ルークの近くにいるとまだ夏のような気分になってくる。勘弁してほしい。


「ルーク、そんな大声を出さなくても聞こえている」

「し、失礼しました。今日こそはと意気込んでいたので、つい」


 二月にエマたちがDランクへ昇格したことで、いまだにEランクで伸び悩んでいるルークたちは危機感を覚えたのか、頻繁に俺とレイドを組んではDランクへ昇格させて欲しいとアピールをしてくるようになった。

 彼らはエマたちともとても仲良くしてくれているし、早く昇格して欲しいと俺も思ってはいるのだが、こればかりはお情けで許可を出すわけにはいかない。

 俺の中の基準だが、上級命技か上級魂術のどちらかを習得した上で、二人以上で協力すれば危なげなくCランクの魔物を倒せるくらいでないと許可は出せない。命にかかわるからだ。


「……どうするジョゼ、今日はDランクエリアへ探索に行く予定だったが、ルークたちがいる場合はEランクエリアまでになる。お前はDランクエリアへ行くのを楽しみにしていただろう?」

「う~ん」


 俺がジョゼに返答を委ねると、ルークたち4人パーティの祈るような視線が彼へと向けられる。


「まあ、俺もルカにぃには早く昇格して欲しいし、今日は我慢するよ」

「ありがとう、ジョゼ!」


 ルークはジョゼの手を取って感謝を表すようにぶんぶんと上下に振った。


「う、うん。ルカにぃ、分かったから放して~」


 ルークとジョゼは最近とても仲良くなっており、探索に行かない日はよく一緒に行動している。ルーク、シドニー、ジョゼの男三人組はもはや見慣れた光景だ。

 女性陣はと言うと、セレスとキャサリンの二人やそこにベラをくわえたパターンを目にすることがある。

 改めて思い返すと、エマはジョゼやセレスと一緒にいることはあるが、ルークたちとはあまり交流を持っていないようだ。もしかして、友達を作るのが下手なのだろうか?


「よし、レイドを組むのは決まりとして、行き先はどうするか……北の平原は前も行ったしなぁ」

「あっ、ランバートさん、私、探索してみたい場所があります」


 俺が行き先を決めかねていると、キャサリンが手を上げる。


「どこに行きたいんだ?」

「東の森に行ってみたいです」

「森だと? あの辺りは探索に時間がかかるし、生息している魔物も比較的弱い奴ばかりだろう?」


 俺が難色を示すと、キャサリンはニヤリと不敵な笑みをみせた。


「やっぱり、ランバートさんもそう思うんですね。私が聞いて回った結果、ほとんどの冒険者がそう考えていました。そしてバーバラさんに探索記録を見せて貰った結果、ここ最近は東の森のEランクエリアを探索した冒険者パーティが存在しない事が分かりました」

「……なるほど。Fランク冒険者がよくあの森に探索に行くが、Eランクになってからも行く冒険者が少ないから、Eランクエリアからは手付かずなのか」

「そういうことです。更に季節が変わったので、変化の少ないEランクエリアとはいえ、何が見たことないものがあるとは思いませんか?」

「う〜ん。確かに……」


 東の森には実を言うとあまり良い思い出はないのだが、今日も多くの冒険者が探索をして魔物討伐をしている他の地区へ行くよりも、あまり探索されていない東の森のEランクエリアへ行く方が有意義かもしれない。


「よし、そういうことなら今日の探索は東の森にしよう」

「ありがとうございます!」


 キャサリンは自分の案が通ったのが嬉しいのか、嬉しそうにセレスとハイタッチする。もしや今の情報はセレスと一緒に調べたのだろうか?

 北門を通り、東へと歩を進める。

 しばらく歩いたところで道らしき道が無くなり、周囲に木々が生い茂っていく。


「この森に来るのも久しぶりだな」

「おじ様が若い頃もあったのですか?」

「ああ。あの頃も、初心者向けのエリアとしてギルドでは有名だったな」


 この森には小型の獣系魔物やスライム系魔物くらいしか生息していないので、Fランク冒険者でも何とか討伐出来るのだ。

 また、木々が生い茂っているために万が一強力な魔物に遭遇しても逃げやすいというのも初心者向けの理由だ。


「ジョゼ、ベラ、恐らくここはお前たちが戦闘の要になる。頼んだぞ」

「任せてよ。これだけ木があれば、木の上を飛び回って戦えるね」

「が、頑張ります」


 機動力に優れた二人は障害物が多い方が真価を発揮する。辺り一面を吹き飛ばすレベルの魂術を使う魔物が現れない限りは、ほとんどの魔物を二人だけで狩れることだろう。

 実を言うと、ベラにだけはDランクへの昇格許可を出そうとしたのだが、彼女たっての希望でパーティの3人には秘密にした上で昇格を先延ばしにしている。一緒のタイミングで昇格したいそうだ。


「ルークは炎の命技で森を焼かないように気を付けるんだぞ」

「はい。今回は通常の上級命技だけで戦います」


 ルークとベラは既に実戦でも使えるレベルで上級命技を習得している。特にベラは完璧だ。ルークに関しては形態を変化させる速度や、咄嗟の判断力などが身に付けばDランクへ昇格させても良いと思っている。

 シドニーとキャサリンは上級魂術を習得した速度は速かったのだが、強力な術にまだまだ振り回されているという印象が強い。初動に時間がかかるせいで魔物に狙われやすく、実戦で有効なレベルには到達していない。

 ルークたちのパーティとレイドを組むようになって分かってきたが、セレスはかなり優秀だった。

 これまではエマとジョゼという天才二人の影に隠れていただけで、彼女も十分に天才と呼べる逸材だ。

 ベアトリクスの娘として考えると、近接戦闘があまり上手くないので見劣りしてしまうが、サポーターとして見ると、水の鞭で魔物の動きを妨害し、水の盾で魂術から味方を守り、『魂術陣』で複数の魔物に同時に継続ダメージを与える。これらの動きを同時に行う事が出来るほどに器用であり、彼女がいるだけで魔物との戦いがかなり楽になるのだ。

 これは戦いながらも周囲が良く見えているという事であり、彼女にはリーダーとしての素質も感じられる。唯一の弱点は自信が無いところだけだ。


「『ウインド・ダガー』!」


 東の森を進んで行くと、先頭で周囲を警戒していたジョゼが風の上級命技で短剣を創って前方に投げる。

 その短剣は的確に小型の魔物を射抜き、一撃で絶命させた。

 ジョゼが駆け寄って魔物の死体を確認する。


「ちぇっ、魂魔石かぁ」

「当たり前だ、そんな小さなリスの魔物がBランク以上なわけがないだろう」

「だよねぇ、はい、セレスちゃん」


 ジョゼは魔石をサポーターのセレスへ渡すと、再び隊列の先頭へと駆けていく。


「凄いですね、ジョゼくん。私たちのやることが無いですよ」


 セレスが感心しながら貰った魔石を背負っている巨大なバックパックへとしまう。


「Fランクエリアでは既にジョゼは過剰戦力だからな。それに、ベラもいる。しばらくは俺たちの出番はないよ」


 俺は音もなく近寄って来たベラを見ながら言う。


「……キャシー、この魔石」

「ベラ、いつの間に魔物を仕留めたの?」

「今さっき」


 ベラは3つの魂魔石をサポーターのキャサリンへ渡すとジョゼと同じように隊列の先頭へと戻っていく。


「ふふっ。ランバートさん、うちのベラもジョゼくんに負けていないと思いません?」

「弱い魔物相手なら、むしろベラの方が優秀まであると思うよ」


 キャサリンが自分の事の様に自慢げに語ったので、俺はベラを褒め過ぎないようにしながら答える。

 ベラが優秀なことなど知っている。問題はルーク、シドニー、キャサリンの3人が彼女の実力に追いついていないことなのだ。しかも、ベラはそれを3人には知られたくないらしい。

 気を遣うのが面倒なので、早いところ3人には強くなって欲しい。


「弱い魔物……で、でも、強い魔物相手でもベラは戦えると思いますよ?」

「かもな。だが、もしも強い魔物が出たら、お前たちも一緒に戦えるというところを見せて欲しい」

「うっ……わ、分かりました」


 キャサリンは少しだけ悔しそうな顔で持っていた木の杖を握りしめた。

 セレスと仲良くなってから、キャサリンも木製の武具を持つようになっており、サポーター用の大型バックパックの後ろには木製の盾も括り付けている。


「ランバートさん、そろそろFランクエリアを抜けるみたいですよ」


 ルークが前方にそびえる岩の柱を指差す。

 あれは中央南ギルドが所持している遺物『石柱杖』によって作り出された目印であり、エリアの境目辺りに配置されているものだ。3か月ごとにBランク以上の冒険者がエリアを調査し、異変を感じた場合は柱の位置が変更になることもある。


「よし、全員気を引き締めろ。ここから先はCランクの魔物が出る可能性が高い。もしも複数体に囲まれでもしたら、俺でも守り切れるか分からん。ジョゼ、ベラは今まで以上に周囲を警戒。俺が隊列の前、ルークが後ろで防御を担当。セレスとキャサリンは側面、エマとシドニーが中心だ。エマは魂力の位置を探りながら移動してくれ」


 俺が最大限の警戒を促すと、後ろを任せたはずのルークが俺の下へやってきた。


「どうした、ルーク?」

「ランバートさん、無理を承知でお願いします。俺と場所を代わってください」

「何?」

「前の方が危険なのは分かっています。ですが、だからこそ今日は俺に任せて欲しいんです」


 当然だが、隊列の前にいた方が戦闘で重要な役回りになる場合が多い。咄嗟の状況判断力も問われるポジションだ。

 俺はこのレイドが一番盤石な配置になるように指示を出したが、ルークたちの実力を測るという意味で考えれば、確かに俺とルークのポジションは逆の方が良い。


「分かった。やってみせろ」

「ありがとうございます!」

「お前が先頭という事は、行き先もお前が決めるんだ。頼んだぞ」

「はい!」


 こうしてルークを先頭とした俺たちは、周囲を警戒しながらもEランクエリアの森を東へと突き進んだ。

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