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七月の巣立ち

作者: 桜海冬月

拝啓、わたしの大切なお兄ちゃんへ


御元気ですか?わたしとお兄ちゃんが会えなくなってから何年の時が経ったでしょうか?

遥か遠い昔のことのような気もすれば、つい最近まで一緒に遊んでいたような気もします。


お兄ちゃん


わたし、明日から大人になるんだよ。


いつもお兄ちゃんの背に隠れていたわたしも、明日の誕生日を迎えたら18歳になって、晴れて大人の仲間入りだね。


だけど、嬉しくなかったんだ。今までの自分とは切り離されて全く別の人間に作り替えられてしまう気がしていたから。そしたら、お兄ちゃんとの関わりがなくなってしまうから。


わたしはずっと8才の頃の自分で、お兄ちゃんが側に居てくれて遊んでくれる。そんな夢を今でも見ます。


長い長い現実味の強い夢をわたしは見ていて、朝起きてみたら大人の振りをしたいお年頃の小さな子供だったりしないかな、と願ってみることもあります。


それでも起きてみたらやっぱり鏡の前には高校生のわたしが独りポツンと立っていて······それも寝る前よりも少し大きくなったわたしで。ちょっとだけ、少しずつ消えていくお兄ちゃんの面影を恋いつつも、きっともう会えないんだろうなと絶望します。


子供のままでいてお兄ちゃんと会えるならば、わたしは子供のままでいい。そうじゃなくても責任とか義務みたいな重い言葉に囚われたくない。


でもね、お兄ちゃんの言葉を思い出して変わったの。


これからは大人になれなかったお兄ちゃんの分も大人になろうって決めたよ。今でも大人になることは怖いけど、一歩ずつでも足を踏み入れるよ。


明日でお兄ちゃんの年を越えてしまいます。


常にお兄ちゃんの辿った道筋を歩んできたから、これから先はわたしだけの足で歩く、初めての経験だよ。


だから、ずっと見守っていてね。わたし、どんなに辛いことがあっても、どんなに嫌なことがあっても頑張るから。苦しいとか悲しいに溢れるこれからの歩む道の端に落ちている、小さな楽しいや嬉しいを見つけていけるようになりたいの。


お兄ちゃんみたいだね


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― 新着の感想 ―
[良い点] 胸が、キュンとしました。 こんなに愛されているなんて・・・きっと、妹想いの素敵なお兄ちゃんだったんですね・・・。 お兄ちゃんも、優しく、あたたかく・・・そして、力強く見守ってくれていま…
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