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お隣様は夢見がち  作者: 待雪
眠り姫とフラジール
5/6

5話 お隣様は眠りたい

数分前。


「その前に、お昼作りますね」

「いや、そこまでしなくても」

「さっき部屋の掃除しましたよね」

「え?」

「キッチンも掃除しようとしたんですよ」

「うん」

「···全然使った形跡なかったんですよね」

「ハイ」


あそこは使ってないから綺麗なままだった。


「普段ご飯どうしてるんですか」

「安めの外食か弁当買うか」

「ですよね。顔色あんまり良くないですし」


日常的に目が死んでる言われるだけはある。

顔色が悪い分目も死んでるように見えやすいんだろうし。


「まぁ、自覚はある」

「料理出来ないんですか」

「まったく」

「ならお昼作ります。異論は認めません」



そして今、姫野さんがキッチンに立っている。

我が家のキッチンが初めて使われるというのに、

使っているのは自分ではないという変な状況。

···料理練習するかな。


「日向さん、レタスちぎってもらえますか」

「それくらいなら出来る」


何も手伝わないよりはかなりマシな仕事が来た。

ただちぎるだけだけど。


「ところでさ」

「はい?」

「量、多くない?」


切った具材の量がどう考えても2人分ではない。


「あー、シチュー作るんですよ。多めに作っておけば、

日向さんもしばらくまともなご飯食べられますし」

「そういうことか。そこまで気にしなくて良いのに」

「隣人の不健康さが気になって眠れなそうなので」

「そこまでか。···ありがとう」

「どういたしまして」

「材料費くらいは出したいから請求してくれ」

「はい」



***


シチューとレタスちぎっただけのサラダ。

それでも久しぶりのまともな料理である。


「美味い」

「良かったです。

カレーの方が男の子としては良かったでしょうけど、

私が辛いの苦手なのでシチューにさせてもらいました」

「俺はカレーよりシチューの方が好きだよ」

「そうですか。それならなおさら良かったです」

「ありがとな、こんな美味いの大量に作ってくれて」


3日は持ちそうな量である。

野菜を切る手間が増えるだけだし、

慣れてたら大したことないのかもしれないけど。


「しばらくシチュー漬けになりますよ」

「これだけ美味いなら飽きないし大丈夫」

「そうですか。···あの」

「ん?」

「褒められるのは嬉しいですけど繰り返されるのは···」


恥ずかしいってか。

よく見たらうっすら赤くなってる気がしなくもない。


「美味いだろってドヤ顔で胸張っとけば良いのに」

「それはもっと恥ずかしいので遠慮しておきます」


花なら絶対そうするだろうに。

これが見た目だけ上品なやつとの違いか。



「ごちそうさま」

「お粗末さまです。少食なんですね」


学食もうどん1杯で済ませるくらいには少食である。

痩せてる人間だし、部活してないし。


「運動してないし」

「不健康要素しか出てきませんね」

「···運動するべきか」

「するべきでしょうね。私もしてませんけど」

「俺はいつもだらだらしてるだけな気がする」

「私も似たようなものですけどね、寝てたり」


優等生イメージが崩れる。

寝てるのは想像つくけど。


「意外だな」

「たまにしか運動してないです。

あの、日向さんが良ければランニングしませんか」

「え?」

「その、平日、運動するなら夕方か夜辺りになるんですけど」

「女子1人でやるのはよろしくないと」


この容姿なら変なのに絡まれるに決まっている。

誰かといないとやりにくいか。


「はい。その分、夜も何か1品くらいは作りますよ」

「材料費は払うぞ」

「はい。というか、受けてもらえるんですね」

「運動も出来て料理ももらえるとなってはな」


それに、1人で運動してもいつでも止められるのでは続かない。

少なくとも俺は続かないし、お互いにメリットがあるはず。


「ありがとうございます」

「今日からする?」

「そうですね、やる気があるうちに。

···その前に寝ても良いですか、眠たくて」

「寝る前に昼食をって話だったし、大丈夫」

「その···もしもの場合は無理やり寝かせてもらって良いので」

「起こすのは難しいんだっけ、了解」

「このソファ借りますね」

「そこでいいのか」


良いのかとは聞いたものの他に選択肢もない。


「私は小柄ですし、特に問題はないですよ。では···」


確かにすっぽり収まっている。

一人暮らしにしては大きすぎるソファが役立ってくれた。



すぐに姫野さんが寝息を立てだした。

何か適当に本でも読んでおくかな。


座卓を挟んでソファと反対側に腰を下ろし、

最近なんとなく買ったところの本へ目を通し始めた。



***


――何か音が聞こえた気がする。

本を開いたまま寝落ちしてしまっていた。


「おはようございます」

「ん、おはよ···」

「掃除で疲れましたか」

「かもしれない、普段してないことだし。

ごめん、見とくって話だったのに俺が寝てた」

「私も今起きたところです。

特に移動してなかったので問題無しということで」

「ならいいけど。ランニングいく?」

「んー、時間が微妙ですね」


時計に目をやると7時を指していた。

かなりぐっすり寝てしまっていた模様。


「もう暗いか。明日からかな」

「ですね、でもよく眠れましたし満足です」

「寝すぎて夜寝れないとか言うなよ?」

「それは···大丈夫です、たぶん」

「たぶんかよ。そうだ、シチュー食べてく?

俺1人で食べ切るの数日かかりそうだしさ」

「お昼食べて寝て、起きたら晩御飯。不健康ですね」


そう言いつつくすくすと笑っている。

とりあえず了承ってことで良さげかな。


「んじゃ、温めてくるよ」

「お願いします」


鍋をかき混ぜるなんて久しぶりだな。

自分で作ったものではないけど。


そんなよくわからないことにしみじみとして、

食べたらそのまま解散した。

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