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お隣様は夢見がち  作者: 待雪
眠り姫とフラジール
4/6

4話 お隣様は報いたい

 夢遊病。

 ノンレム睡眠中に、無意識のまま体は動く。

 主に子供が発症し、成長につれ治る。

 たまに成人が発症するケースもある。

 要因も色々。


 翌朝調べてみてわかったことだ。

 一昨日、声をかけた時に目を覚ましたのは奇跡らしい。

 それと、要因は色々なようだけど、

 姫野さんの状況的に当てはまるのはストレスか。


 あれだけ容姿端麗なら、妬みとかも多いんだろうな。

 重度のストレスを抱えていると仮定してみれば、

 何が起きているかなど容易に想像できてしまう。

 女子に何か言われてるかされてるか。

 確認をとるわけにもいかないし、想像の域は出ないけど。


 仮定が現実のものであるとしたら。

 いじめの類があるのなら、今度は手を差し伸べたい。

 接点が無いのに出来ることなど限りあるが。


 さて、いつもならだらだらしている土曜日。

 でも姫野さんが用があるそうだし、

 悪印象のないよう最低限身なりは整えておくかな。



 ***


 10時、インターホンの音。


「おはよう、姫野さん」

「日向さん、おはようございます」

「昨日手伝うって言ってたけど、何かするの?」

「はい。お邪魔しても?」


 そう言いつつこちらの部屋へ目をやる姫野さん。

 まじか。 頬が引きつるのがわかる。

 汚部屋とまではいかないものの、綺麗ではない。


「女子を上げるには散らかり過ぎてるんだけど···」

「ですよね」

「え?」


 何故かそこでくすくすと笑う彼女。

 分かってたってことか?


「一昨日、ベランダから少し日向さんの部屋が見えてしまって」

「あー···」


 分かってて当然だった。

 女子に見られるには恥ずかしすぎる部屋を···


「なので、掃除を手伝わせて頂こうかと」

「完全に俺が悪いのにそれはさすがに申し訳なさすぎる」


 自分の後始末をさせるのはさすがに恥ずかしい。


「命を助けてもらいましたから。

 それに比べれば大したことないです」

「ん···」


 それを言われると断りにくい。

 気にしなくても良いとは言ったが、本人は気になるんだろう。

 素直にお願いするべきか。


「そういうことなら。お願いしようかな」

「はい。お邪魔しますね」


 初めて女子を家に上げるのがこんな理由になるとは。

 てか姫野さんは男の家に入るのは平気なんだろうか。

 特にためらいもなく入ってきたけども。


 本人が気にしてないならいいか。俺も何もしないし。

 姫野さんにリビング辺りをお願いして、自分の部屋へ向かう。

 さすがに自分の部屋は自分で片づけないと色々とまずい。

 変なものを持っているわけではないけれど、

 そもそも女子に自分の部屋を掃除してもらうのはやばい。


 一人暮らしだから実質どこも自分の部屋な気はしたが、

 もうそんな所は気にしないことにした。

 自分の部屋というより寝室、か。

 学校関連のものとベッドしか置いてないし。


 見られて困るものはリビングにはない。はず。



 ***


「こんな綺麗な部屋久しぶりに見た」

「雑然とはしてましたけど、

 汚いって程でも無かったですよ?」

「そこ違いあるのか」

「あります。たぶん」

「たぶんか。···とりあえずお疲れ様。

 ありがとう。ちょっとそこでくつろいでて」

「···?」

「お礼になんか買ってくる」


 何か振る舞えれば良いのだけど、そんな料理スキルはない。

 普通に何か買った方が良いだろう。


「いえ、そんな···」

「気にせず。ちょっとは面子立たせてくれ」

「···なら、お言葉に甘えて」

「何が食べたいとかある?」

「んー、ゼリーでお願いします。みかんの」

「了解、行ってくる」


 コンビニは怪しいけど、近所のスーパーで確か売ってたかな。



 ***


「買ってき···た···」


 帰ってきたらソファで姫野さんがうたた寝中だった。

 部屋に普通に入ってきたことといい、

 どうにも警戒心無さ過ぎではないか。


「姫野さーん?」

「···んぅ」


 起きた。


「おはよ。買ってきた」

「わざわざありがとうございます」

「気にすんな。それより男の家にいるってことを気にしてくれ」

「···?」


 あんまり伝わってない様子。もういいや。


「···なんでもない。眠いのか?」

「いつも眠たいですね。授業中もよく寝てます」


 そんなんだから男子に裏で眠り姫って呼ばれてるんだよ。

 そう教えたい気はするけど彼女は高校が同じなの知らないか。

 それに高校生になってるのに、

 そんなあだ名知りたくもないだろうな。


「遅くても一昨日のあの時間くらいには寝てるんだよな」

「そうですね。朝も極端に早起きしてるわけでもないです」

「睡眠の質の問題か」

「寝たまま歩き回ってるくらいですしね、そのせいかも」

「授業中に夢遊病は起きないのか」

「ノンレム睡眠じゃないと起きませんよ」

「うたた寝程度なら問題ない、か」

「そうですね」

「でも授業聞いてないときつくないか」

「正直きついです」

「休みの日くらいはゆっくり寝れないのか」

「寝溜めですか」

「そう」

「···じゃ、ここで寝ても良いですか?」


 ···は?

 微笑んだまま何を宣っているのか。


「夢遊病がどんな感じなのか見ててもらえないかなと」

「昨日そういうのは頼めないって言ってなかったか」

「もうさっき寝ちゃってたので良くないですか」

「めちゃくちゃな暴論だな」

「···それに、誰かと居るのなんて久しぶりで。

 今、すごく落ち着いた感じがしてるんです」


 端正な顔に陰が差す。

 あまり踏み込まないほうが良いか。


「···わかった。俺が何かしたら通報しろよ」


 またさっきまでの表情に戻った。感情がわかりやすい。


「はい。でも、その前に」

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