狭い世界で生きる蝶々達の物語
ある一人の魔女が、金の蝶を生み出した。
金の蝶は美しい光の粉をこぼしながら、宙を舞い続ける。
その様が美しかったため、魔女は金の蝶を増やした。
すぐに周辺は、金の蝶であふれかえった。
しかし、一色だけでは物足らない。
だから魔女は、銀の蝶も生み出した。
銀の蝶は、美しい銀の粉をこぼしながら、金の蝶と同じように宙を舞い続ける。
魔女は銀の蝶も増やして満足した。
しかし、ほんのひととき魔女が目をそらした間に、知らない蝶が増えていた。
赤、青、黄色、紫、緑。
色とりどりの蝶が舞いとぶその景色は、他の者から見ればとても美しい物だっただろう。
しかし、その魔女は特別な物しか愛せなかった。
だから増えたその蝶を一匹残らず残らず殺していった。
蝶は死んでいく。
蝶の死骸は床にたまっていく。
なおもずっとその上を、舞い飛ぶ金の蝶と銀の蝶。
魔女は満足げにその光景を眺め続けた。
だから、
蝶の物語は、そこで閉じる。
たくさんの登場人物がいたはずなのに、そこで閉じる。
蝶の世界は、ひどく狭いまま。
大した場所へいけぬまま、終わっていく。




