009話
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「まぁ1度出来て、今朝もう1度やってみた。おそらく1度出来れば、次も出来る物なんじゃないかな。ただ、熟練度?っていっていいのかな?その練度によって違うんだろうね。昨日と今日では全然感覚が違ったよ。ビックリしたさ」
「ちょっと待って!身体強化を覚えて間もないバルフレア君が、違いを実感できるほどだったの?」
「そうだよ。昨日は見よう見まねでやったからか、身体強化が甘かったんだと実感できたよ。身体強化は、体の動きに合わせてマナを体内に巡らせるのが正しい使い方なんじゃないかな?」
「えっ!? そんな事、聞いたことないわ。訓練の時に何度も何度も使って、体で覚えていくものだって先生が!」
「反復練習による無意識下の身体強化って所かな?多分それも間違っていないと思うよ。君が行っていた反復練習で無意識に行っていたマナの移動を、俺は意識して行っただけだと思う」
俺はシェリー嬢の混乱している姿を見て気付いた。この世界の武術は、地球のそれとは明らかに違う。その違いが考え方にあるのか、その他の要因があるのか分からないが、1つだけ言えることがある……この世界の武術には歴史がないと言うことだ。
相手の動きに対する対応等の技術はあるのだが、研鑽による歴史がないのだ。言うなら、薄っぺらい教科書という感じだな。
「まぁ、見てくれればわかると思うよ」
シェリー嬢にそういってから俺は、その場で座禅を組む。
今朝の訓練の時に感じていた物をここで試して見ることにした。
剣道をやっていたときには、なんの意味があるのか分からなかったが、今はそれが価値のあるものだったと思う。
座禅を組んだまま、身体強化をするために全身にマナを巡らせる。
体の隅々まで駆け巡らせるようにマナを動かす。
手の指、足の指の先まで……血液が血管の中を流れていくようなイメージだ。
今、俺は座禅を組んで瞑想をしているのだ。正確に言えば、仏教・キリスト教・イスラム教等で使われている瞑想とは同じ意味では無いだろう。
瞑想の本当の意味を知っているわけでは無いので、多分違うとしか言えないが……
瞑想という形で、体の中にあるマナを動かしている。やはり、体を動かす方がしっくり来るが、これはこれで集中できるから悪くない。
体を巡らせるマナの量を増やし、速度をあげていく。
漸く続けてから、マナを動かす事を止めた。
「まぁこんな感じだね。今は、マナを体内に巡らせただけだからな。体を動かしながら筋肉や骨、皮膚……体を構成する要素を意識すると、また違う感じになるけどね」
シェリー嬢は、驚きの余り止まっている。そして、俺が瞑想している間に近付いてきたシシリー教官も、驚きの余り声を出せなくなっていた。
身体強化は、物理的な圧力は無いのだが、発動している人間がいると圧迫感やプレッシャーを感じるのだ。
遠くまで広がる物ではないので、近くにいた2人だけしか気付けていない。
「バルフレア、お前は今何をしていたんだ?」
「自分なりの身体強化の訓練ですよ」
「あれが訓練なのか?遠目ではただ座っていただけなのに、近付いたら……だが、ここまで近付かないと感じられなかったのはなんでだ!?」
「ん~そう言われましても、身体強化を出来るようになったのは昨日ですし、経験豊富な教官に分からないことが自分に分かるわけが無いのですが……」
「そ、そうだな。昨日覚えたばかりで暴走させていた……はずなのに今日は、完璧にコントロールしてみせたな。何があったんだ?」
「今朝1人で使ってみた位ですよ」
シシリー教官は、理解できていないが納得はしてくれたようだ。
だけどシェリー嬢は……昨日の罪滅ぼしのために、俺に教えようとしてくれていたのだが、自分よりはるかに上手く出来ている俺に教える事は出来ないと、塞ぎ込んでしまった。
どうしたものか……シシリー教官に目で訴えるが、知らん!自分で考えろ!と返ってきた。前世の記憶を利用して、俺がグリント達と同レベルのスケベと言うことは、何とか隠せているが……前世も今世も女性と付き合ったことはない。こう言ったときにどうすればいいのかという知識がないのだ!
長い沈黙の後、
「バルフレア君。厚かましいお願いだと分かっているけど……私にさっきのやり方を教えてくれないかな?」
「えっ?別にかまわないよ。見たままだから、何を教えていいのか分からないけど、俺がやってた事くらいは説明は出来るかな」
少し表情の柔らかくなったシェリー嬢に、俺がしていたことを説明する。
していたことと言っても、全身にマナを巡らせて、量を増やしたり、マナの速度をあげたりしただけなんだよね。
それを聞いたシェリー嬢は、
「教わったやり方と全然違う……」
と……シェリー嬢が教わったのは、駆け巡らせる野ではなく、全身にマナを満たす感じだと教わったようだ。体にマナを満たす動きで、身体強化を行う事が出来ているのは、満たす際にもマナが動いているからだろう。
それに、訓練を続けていく内に、無意識でマナを動かせるようになっているんじゃないかな?
ただ分かったこともある。身体強化は、ある程度マナがないと大した効果が現れないのだ。その基準が、選定の儀式なのでは?と思う。
教官は、理論上では全員身体強化を使えると言っていたが、実際には使えない人の方が多いと言う話だ。その理由が、全身を強化する身体強化は、それなりにマナを保有していないと、効果が実感できないから身体強化が成功したと分からないのでは無いだろうか?
それは、全身を強化するからであって、部分的……腕だけ足だけなら、保有量が少なくても出来るんじゃないか?
後でシシリー教官に聞いた所、身体強化は維持するだけでもするだけでも、かなりのマナを消費するのだと。部分強化が出来たとしても、そんなことにマナを使うくらいなら、魔法や魔道具を使った方がいいだろう……と。
身体強化は、マナを体に巡らせているだけだが、どういう理由か分からないが、マナを消費し続けるのだ。魔法や魔道具の触媒にしているわけではないのに……いつも以上の力を発揮するためにマナを使っていると言うことだろうか?
分からないことを考えても時間の無駄なので、考えるのは止めた。
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