008話
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教室に着くと……座学は違うクラスのシェリー嬢がいた。
「バルフレア君、昨日は大丈夫だった? 私もシシリー教官に怒られて、大変だったんだ。ほとんどお前のせいだってね。確かに私がムキになったから悪いんだけどね。その罰として、自主訓練する時は協力するように言われたの。だから、何かあったら呼んでね」
俺の返事も聞かずに走り去ってしまった……この空気どうしろっていうんだ?
特に隣にいる変態スケベ小僧ことグリントや、グリントに近しい男共の呪いのような声が聞こえてくる。
他にも女子達がキャーキャー言いながら、今の様子をもとに妄想を始めてい。
「バ~ル~、有罪は免れないが、一応弁護の機会を設けてやろう。みんな集まれ、裁判を始めるぞ!」
グリントがそう言うと、わらわらと10人ほど集まってきた。暇人だな。
「というか、なんの裁判だよ?」
「シェリーちゃんを見守る会の規則を破った者への裁判だ!」
「そもそも、俺はその会に所属していないのに、裁判を受ける理由がないだろ?」
「何を言っているんだ? お前は正規会員ではないが、特別会員なのだよ。俺たちはスケベだの、エロいだの、キモいだの、散々言われているのに、お前は何故言われない! それだけでなく、女子たちとも良く楽しそうに話している! ズルいんだよ!」
「単なる妬みかよ……シェリー嬢を見守る会だったんじゃないのか? 少しアドバイスをしてやろう。
こんな事してるから、女子達にいろいろ言われんだよ! 興味があるからってジロジロ見すぎだ。そして、女子を見ている時の顔を鏡で見てみろ、キモいぞ」
そう言うと、女子から拍手が起きた。女子達の思っている事を代弁できたようだ。
「そこのバカ共席につけ! どうせ下らない事でも話してたんだろ? 女の事を考えている暇があれば、勉強でもしていろ! 試験で赤点とったら補習なんだぞ! 付き合わされる教官の事も考えるんだ!」
そういって、一限目の教官であるシシリー教官が教室に入ってきた。
俺は中間くらいになるように調整している。武術の成績がかなりいい方なので、少し控えめにしている。
ただでさえ、バカ息子の嫌味を日々聞いているのに、それ以外の雑音も増えたら面倒でたまらんからな。
今日のシシリー教官の授業は、帝国史だった。入学してから、何度も帝国史の授業があったが、国の成り立ちや過去にあった戦争などの授業が中心だったが、今日からは地理も含めたような内容で、各領地の話をしている。
中には、隣国だった国を吸収して、一領地として迎え入れた場所もあるらしい。国を殲滅して新しく領土にするにも、時間と金がかかる。国を大きくするためには、柔軟に対応をする必要があるのだとか。
どんなに素晴らしい国でも、この広い大陸を統一することは難しい。必ず限界が生じる。それは、人のせいだったり、魔物のせいだったり、様々な理由がある。
帝国だって、皇帝の力が隅々まで届くのは今の広さが限界らしい。過去に領土を何度も広げたが、この度に反乱が起きたり、魔物の大量発生があったりと、現在の帝国の広さにおさまっているらしい。
シシリー教官がそう教えるのだから、事実なのだろうが、何となく違和感を感じていた。習っている内容が全てが事実では無いのだろう。何かしら国に都合の悪いことを隠していたり……なんて、帝国の暗躍論なんて流行らないか。
午前中は座学、午後は実技の訓練という流れは変わらず、今日も訓練場に移動している。
朝、シェリー嬢に話しかけられていた俺の事が気に入らない、何処かのバカ息子から逃げながらの移動だった。
バカ息子は、自分がシェリー嬢の婚約者なのだから、他の男は近寄るな! と、言っているのだ。
まぁ、婚約の事実はないし、伯爵のバカ息子が言っているので、強く否定できないだけなのだ。下手に否定すれば、バカ息子が騒ぎ出すので無視をしている感じだな。
当のシェリー嬢も、相手の方が爵位が高いので、否定は出来ないが
「お父様からは、婚約についてなんのお話も伺っていません。その話はお父様に直接お話してください」
と、間接的に婚約者ぶるなよ! って言っているのに、バカ息子は聞く耳を持たないのだ。なんたる迷惑な奴だ。
いくら伯爵のバカ息子と言えど、現男爵当主には強く出ることは出来ない。それに、シェリー嬢の能力を考えれば、バカ息子が伯爵当主であっても、婚約は成立させられないだろう。って、シシリー教官が、バカ息子がトラブルを起こして謹慎している時に話していた。
手間がかかる面倒な奴として、教官達にも目をつけられている。平民の俺達の中では、いつ退学になるか賭けが行われている。レベルのバカさ加減なのだ。
今日は、魔法の実技だ。俺と一部の生徒にとっては、魔道具の実技なのだが……授業が始まってすぐに俺は、シシリー教官に呼ばれた。
隣にシェリー嬢がいなければ、特に気にする事は無かったのだが……
「シェリー、今日は昨日の埋め合わせの一環として、バルフレアに教えなさい。貴女は、父親である男爵の教育のお陰で、1年の実技は復習にすぎないな?無駄とは言わないが、それよりはこいつに教えていた方が有意義だろ?そう言うことだ。魔道具組から少し離れた所で訓練しろ」
シシリー教官、俺の魔導具の訓練は……?
シェリー嬢が、俺をつれて訓練する場所に到着する。向き合って声をかけてきた。
「バルフレア君、昨日目が覚めてから身体強化を使った?」
「昨日は大人しくしてたせいか、今朝は早く目が覚めてね。起きてから試してみたよ。体を動かしながらやって感じたけど、正直あれはズルいね。出来る出来ないであんなに違いが出るとは思わなかったよ」
「やってみたんだ? でも、ズルいと思うほど違いが分かったの?」
「そうだね。他人からどう見えるかは分からないけど、俺が感じた物だと……感覚が鋭くなる感じかな?あれは正直ズルいと思うほどの物だったよ」
シェリー嬢は、俺の言っている事が分からないようだった。小声でまた酔ってたんじゃないのかな?とまでいっている。
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