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006話

アクセスありがとうございます。

 実技が始まって2ヶ月半が過ぎた頃……我らがアイドルのシェリー嬢との、剣術の訓練をすることになった。


 武術の訓練は、毎回違う人間とペアを組むことになっている。同じ相手ばかりだと、考える事を止めてしまう恐れがあるからだとか。


 同じ相手ばかりだと、癖を覚えてそれに合わせた攻撃しかしなくなるもんな……


 それにしても、ペアが決まった時の男共の反応といったら、


「シェリーちゃんに怪我させたらブッ殺すからな!」

「シェリーちゃんに間違って触ったりすんなよ!」

「どっかのバカ息子の時みたいに、ボコボコにしたらしばくぞ!」


 おい、最後のやつ、止めてやれよ。バカ息子がプルプル震えてるぞ!


「バカ者共! 人の心配する前に、自分の心配しろ! 特に、今日のペアが女子の奴等は気を付けろよ!」


 シシリー教官の一言で、ペアを組む女子をみた男子の1人が、女子の後ろに鬼が見えた……って、怯えながら言ってたな。


 女子の場合は、ちやほやされているシェリー嬢が嫌いなのではなく、ちやほやしている男子が嫌いなのだ。その日の怪我人はいつもにまして男子が多かった。


 シェリー嬢が他の女子に嫌われないのは、誰にでも同じに接してくれて、勉強が分からない子がいれば、丁寧に教えているのも大きいと思う。


「バルフレア君、今日はよろしくね」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 気さくに声をかけてきてくれた。


 う~む、向き合って改めて見ると不思議だよな。透き通るような水色の髪に、赤い瞳……地球では染めない限り、有り得ない色だよな。


「バルフレア君、今日は本気を出してくれるのかな?」


「えっ? いつも真剣にやってますよ?」


「そうなの? でも……何か違和感があったんだよね。そこら辺は、今日の訓練でわかるかな? お互いに実りのある訓練をしましょう」


 見惚れてしまうような、キレイな笑顔だ。だけと、騙されてはいけない。確かにキレイなのだが、訓練の場では普通に不意打ちをしてくるのがシェリー嬢なのだ。


 笑顔のまま近付いてきて、気付いたら剣が振られているのだ。


 しっかりと予想していた俺は、危なげ無く受け止めることができた。


「さすが、バルフレア君ね。こんな不意打ちは効かないみたいだね」


「いえいえ、その不意打ちは何度か見ているので、バレバレですよ」


 つばぜり合いをして、一旦離れたと思ったら右足でしっかり踏み込み左手に持っている盾で殴り付けてきた。


 予想はしていなかったが、慣れていない動きなのだろう。剣の速度に比べればかなり遅い。


 木剣を持っている右手を、振り抜こうとしているシェリー嬢の左手の内側に添えて力を反らす。それと同時に、シェリー嬢の懐に入り盾の表面を体にそえる。


「やっぱり、型をなぞっている時より、実戦に近い方がいい動きをするんだね」


 後ろからは、男子達の汚いヤジが聞こえてくる。そして直ぐに近くの教官に叩かれた音が、痛い! という声と共に聞こえてくる。


「シェリー嬢こそ、慣れない攻撃をしたからか、剣での打ち込みより大分遅かったですよ」


「確かに遅いですが……みんなの話では、生まれてから今まで武術を学んだことが無いと聞いているわ。本当なの?」


「本当ですよ。ここで生まれてから今までに、木の棒くらいしか振ったこと無かったですから……もしかしたら天才なのかもしれませんね」


「ははは、嘘は言っていないみたいだね。それなら、バルフレア君は本当に天才なのかな? 初めてで、ドリュー君を倒しちゃうんだからね。ああ見えて、剣の実力はあるからね」


 ……シェリー嬢、君は意外に辛辣な事を言うんだな。


「ただあいつがバカだったんじゃないかな? 何とかあいつにぎゃふんと言わせたくて考えた結果ですよ」


「それでも、すごいことに変わりはないわ。でも……やっぱり何か違和感があるわね」


 言葉を交わしながらも、剣を盾を打ち合わせている。


 まだ12歳になったばかりの子に……本来は盾を使わないスタイルだという事がバレているのだろうか?


 盾持って思ったけど、昔の日本では刀や槍が戦場中心だったんだよな?身を守るために、重い鎧をつけていたのか?盾なら身を守れるし、殴っても使えるし便利だよな。


 刀だけとか身の守りはどうしてたんだろ?って良く思うことがある。特にさ、複数人がいる戦場では死角に入られたら終わりだよな。


「何か関係無いことを考えているね。バルフレア君は、私相手じゃ物足りないのかしらっ!」


 うげぇ! 剣での打ち込みが鋭くなってきてる! 剣筋は変わってないのに、鋭く重く速くなっている……どういうことだ?


 今まで力を抜いたり押さえたりしていた様子は無いのに……ジワジワ力が強くなっている気がする。


 このままだと、押しきられそうだな。


 負けるべきか、ギリギリまで粘るべきか……それとを攻め方を変えてあくまで勝つ方法を模索すべきか?


「私に勝てたら、可能な限り1つお願いを聞いてあげるわ。だから本気を出してみてくれないかな?」


 マジか! って、グリントのスケベ小僧なら言うと思うが、俺はひねくれているからな。


 シェリー嬢が嘘をつくとは思えないけど、お願いを聞くの【聞く】が、話を聞くと同じ意味で、お願いを聞いたけど叶えてくれるとは限らない。


 そもそも俺がシェリー嬢に叶えてもらいたいお願いなんてあるか?


 まぁ、最善を尽くしますか……


「それにしても、シェリー嬢。試合開始時より力が強くなってませんか?」


「気のせいじゃないですか? 私はか弱い女の子ですよ?」


 ん~か弱いって所は否定させてもらいたいな……本当にか弱い女の子なら、ここまで俺と打ち合えるわけないだろ!


「バルフレア君が、何か失礼な事を考えている気がしますね。何故だか怒りたくなってきましたね」


 ばれてーら。俺の考えている事が分かるみたいだな……これで、女子にエッチな視線を向けていたってバレたらどうしよう……


「今度は、どうでもいいことを考えている感じがしますね……」


 とりあえず、グリントみたいに変態のレッテルを貼られないで済んだ、少しは真面目にやらんとな。


 盾を持って攻撃する時は、持っていない時に比べ、攻撃に多彩さに欠ける気がする。


 範囲は絞られるが、攻撃の種類には違いはないはずなのに……いや、盾をもっているんだから、盾も武器として使えばもっと有用な攻撃が出来るはずなのだが。


 盾を武器として使ったのは最初だけだったな。やっぱり、この国の正当な剣術には、盾を武器として扱う事が無いのかな。だから、盾を上手く攻撃に使う術を知らないとみえる。


 それにしても、疲れてくる頃なのに何でここに来てさらに力強く鋭くなっていくのだろう?


 ん~もしかして魔法か? 確か身体強化の魔法は、教わるのは来年からじゃないのか?


 ……そういえば、シェリー嬢は貴族だったな。家庭教師が教えていてもおかしくないか?


「あ~そういう事ですか……シェリー嬢が、後半に来て動きが鋭くなっている理由がわかったよ。魔法って詠唱が必要だと思ってたけど、身体強化に関しては詠唱が必要ないんだね」


「っ!! バルフレア君は知らないはずなのに、良く分かったね。どうしてかな?」


「そう難しい事じゃないよ。打ち合い始めから時間が経っているのに、ドンドン動きが鋭くなっていく……疲れる様子を見せずにね。戦っている間に、体力や筋力がつくわけがない。では違う要因が君を強くさせていると思った。俺の知識の中でそれが可能なのは、身体強化だけだからね。これ以外の要因だったら俺には分からないさ。それが君の強さの源か……」


「バルフレア君、武術の訓練で身体強化を使ったのは始めてだよ?」


 マジかよ! 身体強化無しで、この学年の上位の人間を倒していたのか、とんでもない化け物がいたもんだ。


「また、何か失礼なことを考えたでしょ!」


 うを! 危な! 防御が間に合わなかったら、鼻血ブーだったぞ!


 それにしても、身体強化か……属性が無いって話だったな。マナがあれば出来るのかな?


 そういえば、シェリー嬢から感じる圧力が強くなっている気がする。この感じ、前に教官達から感じ事のある物と同じかな?


 何か、存在感が強くなっているんだよね。なんだろなこれ?


 この圧力や存在感がマナによるものなら……全身を駆け巡っているってことかな?


 マナを全身に?


 魔道具を使う時のように、マナを動かしてみる。いつもは手から外に出すのだが、それを体に血が流れるように、全身に駆け巡らせる。


「へ~これは面白い、身体強化って言うのは……こんな感じなんだな」


「うそっ!? 教えられても、なかなか出来る物じゃないのに!」


 シェリー嬢が何か言っている……それよりこれなら、もっと速くもっと鋭くもっと力強く動けるな。体と剣が一体になっていく感覚……盾も体の一部に感じられる。


 かつて神童と呼ばれていた時にあった感覚だ……こう、すべてが溶けていくような……


「バルフレア!! 止まれ!!」


 これはシシリー教官の声かな? そう言えば一番近くにいたっけ?


 次の瞬間、背中から強い衝撃を受けた……

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ブクマや評価をしていただけると幸いです。

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