002話
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「はぁはぁ……面倒なやつに絡まれる所だったな」
「本当だよ。あいつと一緒に学びたくてこの学校に来てるわけでもないのに、あの言い方は腹立つよな!」
「グリント、落ち着け。お前より才能がないんだから、気にするだけ時間の無駄だ。気にするなら、シエント伯爵のバカ息子の事より、ライル男爵の御令嬢の方を気にしておけ」
「あ~シェリーちゃんね。見てるだけで癒されるあの姿……魔法でも使ってるんじゃないか? って思うよな!」
グリントは、叶わぬ恋だとは分かっているが、ライル男爵令嬢のシェリー嬢に想いを寄せている。
そしてこいつが暴走しそうになったら、シェリー嬢の話題を出すとすぐに収まるので利用させてもらっている。
無駄な苦労を背負っているけど、グリントは面白いやつなので俺は好きだ。だから、無理の無い程度にはフォローをしている。
実技の授業を担当する教官が来たので、訓練場は静かになった。座学の時になかなか静かにならなかった生徒が、訓練場20週とか走らされていたから、そこから教訓を得て静かにするようになった。
「さて、今日から実技の授業を始めていく。実技の授業と言っても、魔法だけではない。剣術や槍術等も行っていく! 訓練とは言え、怪我をすることがある。私の授業で悪ふざけをする奴は、邪魔なので出ていってもらう。いいか、わかったな?」
「「「「「「サー、イエス、サー」」」」」」
何処かの軍隊方式な返事である。この世界にあの人が迷い混んだのでは? と思ったくらいだ。だけど、あそこまで厳しい訳ではない。しっかり返事をすると言う意味で、こう言う掛け声にしたんだってさ。深い意味は本当に無いらしい。
「では、先程の適性検査の結果で並んでもらう。一番特性が強く出た属性に並ぶように! 右から火・水・風・土・光・闇だ。属性適性が無かった者達は向こう側に並ぶように!」
今、この訓練場にいる生徒の数は、およそ200人。1学年全体で600人程なので、3分の1がここにいる。この中で10人が俺と同じで、属性適性が無いようだ。
他にもいて安心した。
「ギャハハハハハッ! あいつ等、属性適性が無いんだってよ! 何でこの学校にきてんだかな! 笑えるぜ!」
先程の絡んできた伯爵のバカ息子が、取り巻きの子分達と俺達の方を指を指して笑っている。
「そこのバカ息子共、黙れ! お前等は、本来なら適性以前の問題だ。普通入学じゃなく、特別入学なんだぞ! マナが規定値以下で、親が金を払ったからこれてるだけなんだぞ! 授業の邪魔をするなら、親に言って出ていってもらうぞ!」
伯爵のバカ息子が、先生を射殺さんばかりの表情している。
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養成学校へ普通に入学した人たちはお金は一切かからない。だが、その全額を負担することで、適性の足りていない人も入学が可能である。
そこまでして入学させたいのかと思ったが、軍で活躍する為には、上級学校を卒業する必要がある。特にシエント伯爵は、軍閥関係の貴族なので尚更上級学校を卒業させたいのだ。
まぁ、このバカ息子は嫡男ではあるが、優秀な次男がいるらしく予備扱いらしいとの噂だ。
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マジか! あいつって裏口入学だっのかよ! 思わず笑ってしまうところだった。
我らが姫のシェリー嬢は、この学年で一番マナの保有量が多く、全ての属性に適性があるようだ……天は二物を与えてしまった。
属性適性が無くても、魔道具で代用することでどうとでもなるため、特に蔑まれる理由は無いのだ。バカ息子は、俺達のような属性適性が無い者を見下すことで、自尊心を保っているだけなのだ。
「よし、集まったな。始めに言っておく、お前達は属性適性が無い。だからと言って悲観することはないぞ。属性適性が無い者は、マナの保有量が高い傾向にある。そう言う私も、属性適性が無いが保有量は軍でも上から数えた方が早かったぞ。魔道具を使う者としては、マナの保有量は大切だから得しかない!」
そう言って話し出したのは、バカ息子を怒鳴った先生ではなく、一緒に来ていた、ビシッと決めた女性だ。確かシシリー教官だったか?気の強いお姉さま系の……ゲフンゲフン……
「魔道具は同じ物を使っても、人によってマナの消費量が変わってくる。相性などもあるが、一番の問題はマナを注ぎ込む時に無駄な分が溢れてしまいロスしてしまう事なのだ」
詠唱方式や触媒結晶方式では、魔道具程のロスは生まれない。なので、詠唱方式と魔道具方式とでは訓練方法が異なってくるため、2つ別れている。
詠唱方式では、使う言葉、文脈等で威力やマナの消費量が変わるので、自分にあった物を探していくのに対して、魔道具方式は、いかに無駄なく発動できるかと言う点に焦点が絞られる。
「ごちゃごちゃ説明したが、体験してみないと分からないよな? 手元に配った魔道具は、水を生み出す魔道具だ。少しずつ注ぎ込むマナの量を増やしてみなさい」
そう言われて、手に持っていた蛇口のような魔道具にマナを注ぎ込んでみた。
チョロチョロ・・・
ドボドボドボ・・・
ある一定の量から先は、水量が増えなかった。でも、マナは注いだだけ体から抜けていっている……これが無駄な部分と言うことか!魔道具への熟練度があがれば適切な量が分かるってことか!
「さて、分かったかな? 魔道具は、注ぎ込むマナが少なくても発動するものが多いが、上限が決まっている。無駄をいかにして無くすかが重要になってくる。特に攻撃性の魔道具は、マナが足りないと想定している威力が発揮されず、効果が薄くなってしまう」
戦争の最前線では、想定に届かない威力だと無効化されてしまうため、無駄にマナを消費してしまうことになるのだ。
今日の実技は、調整せずに一度でどれだけロスなく使えるか、ずっと訓練することになった。
ん~予想以上に難しい作業だった。
授業が終わり、グリントと合流して寮に戻った。寮は入居者以外立ち入り禁止で、偉ぶる貴族の子供は自宅から通っているので、ここにはいないのだ! 天国のような場所である。
掃除とか食器洗い等は、自分達でやらなければいけないので、完璧な至れり尽くせりな状態ではない。当番制なので、何もしないでいい日ももちろんある。
「今日の飯なんだろな?」
「シチューにサラダにパンだろ。今日は早起き当番があったから、牛乳を絞りにいってたはずだぜ」
「シチュー美味いよな! バルは嫌いか?」
「いや、俺も好きだぞ! 街の店と違って材料をケチらないから美味いよな」
「そうそう。街の店で食べた時はお互いガッカリしたもんな。あれなら実家の飯の方が数倍旨かったわ」
「言えてるな。あれにお金を払うとか馬鹿げてるレベルだったな。っと、のんびりしてられねえぞ! そろそろ風呂掃除に行かないと、寮母さんにどやされる!」
「それは拙い! 急ぐぞ」
しょうもない話をしていたら、思ったより時間が経っていたみたいで、今日俺等の担当の風呂掃除時間が近付いていたのだ。
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この世界では、魔道具の発達によりお風呂等、衛生面は悪くない。水を作ったりお湯を出したりする魔道具は、量産化されており平民でも買える値段で売っている。
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