その2の2
「……え~と」
「コケッ!」
また前を向いて歩き出すと着いて来ます。
どうしよう。私は親ではありません。辺りを見回すと広がるのは田んぼ。
あ、そうか。農家さんの家の前に鶏が何羽もいるのを見たことあります。
きっとその農家さんの鶏の家族なのでしょう。
そこまで行けばこの鶏の家も見つかるでしょうか。
とことこ歩いてきて可愛いです。家族があるのは羨ましいことです。
ここから
田園風景を眺めながら雄大な山々を眺めます。あの向こうはどうなっているのでしょうか?
「おぅ!風来坊!またどこさ行って~」
とある農家の家の前にはおじいさんがいて私の後を歩いてきた鶏を見ると嬉しそうにだきつこうとして避けられます。
風来坊さんはそのまま群れの中へ。家族に会えて良かったですね。おじいさんは私を見ると何度もお礼を言いました。
「ありがとうな~。うちの風来坊すぐにどっかいっちまうからよ~」
嬉しそうに笑うおじいさんはくしゃっと笑って嬉しいです。
「あ、いえ。お家に帰れて良かったですね」
「おう。なんかお礼をしなきゃな!」
「あ、いえ。いいですよ」
「まあまあ、いやよいやよも好きのうちって言うだろ?」
言いません。知りません。おじいさんは野菜を持っていけと進めてきますがこれから学校なので荷物がかさばります。
「じゃあこいつ使いな」
それはボロいママチャリでした。いえ、古めかしいです。いやどっちにしても荷物が嵩張るんですが。でもいやよいやよを繰り返してもこのままでは遅刻してしまうのでお借りすることにしました。
水色の自転車です。油を差してないから時々きいきい鳴いていますが漕ぐと暖かい春風を切って進みます。
平坦な田舎道。でも砂利道もあるのでがたがた揺れます。まるでぼっちの私の人生のように定まっていないようです。
それでも途中にある桜並木まで早く通りすぎます。
よく利用しているバスには追い抜かれましたが、それでも満員でパンパンよりはこちらの方が心地よしです。たまにある坂道も今までの人生に比べれば微々たるもの。