表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/15

その6

バイトの時間です。地方都市の一角にある雑居ビル。

そこが私の職場でした。

日々の生活をするためにはお金が必要です。

中にはパパ活してる人もいましたが私には出来ませんでした。想っていない人にお金を払ってもらうのがどうにもこうにも心苦しくなってしまうのです。



「お待たせしました~にやゃん♪」

「ユキハルちゃん、また会いに来たよ~」

で……ふくよかな常連さんに猫のポーズでにゃんにゃん言います。

最初は恥ずかしくて逃げ出したかったですが、平穏な生活を保つためとして給料のいいこの店で働くことにしました。

まあ、上の階にある色々なコスプレさせられるよりはいいでしょう。


「じゃあこのきゅんきゅんオムレツとカップルジュースをくださ~い」

「は~い。お待ちくださ~い」

頬が引きつるのを我慢して自分の仕事をこなすだけです。


「お待たせしましたにゃ~ん。ご主人様~なんて書いてほしいですか~?」

オムレツにケチャップで文字を書いて1500円なんてぼってますね。

でもご主人様は満足そうなのでよしとしましょう。


「くうちゃんがんばれって書いて~♪」

にこにこにそう言われるとキレそうになるのは何故でしょうか?


…………………………………………。

……………………………………。

……………………………。



「ふぅ。疲れました」

「お疲れ芹沢さん。大分慣れたかな?」

「はい。キレないようには慣れました」

「はは、初日に触られて投げ飛ばしそうになったっけね?」

「はい。立場を忘れて不埒者を退治するとこでした」

大人の対応がとれなかった私はまだまだ未熟者なのでしょう。

先輩の星川さんだ。明るくて固定客も多いです。

器用にこなすので尊敬に値します。

威張ってるだけのどこぞのリア充とは違いますね。

照れずににゃんにゃん言えるのは敬意に値します。



とは言え私にも出来ることはあります。

月に一度のお祓いタイムがあります。

「お前、巫女似合いそうだな」の店長の一言で私が巫女姿になってお客様をお祓いするのです。

なんのこっちゃと思いますがそれを楽しみにして下さる方もいるのでお祓いの所作を研究して払って差し上げます。罰当たりにならなければよいのですが。


今日は特に困った客はそういず上がることが出来ました。

「お疲れ様でしたみなさま」

「は~い。おつかれ!またね~!」

「おっつ~。気をつけて帰れよ」

みなの声を背中に聞きながら外へ出ると人工の明かりがキラキラしています。

例え偽物の灯りでもホッとしますね。

月明かりは頼りないほど隠されて目立たないので。


時折絡んでくる酔っばらいをかわしつつ駅へと向かいます。

みんな疲れたかのように歩いています。みんな働きすぎで笑顔が足りませんがわたしだけ馬鹿みたいににこにこしてられません。


時折同じ制服姿を見かけるとドキッとしてしまいます。

別にバイトは禁止されてませんがあの姿をご学友に見られるのは恥ずかしいです。


電車の窓からはライトアップされた花がひらりと舞っています。

今年の桜はゆっくりと咲いて長く自己主張なさっているので週末は花見でしょうか?


夕飯のおかずをスーパーで買いつつご褒美のアイスも追加します。

自転車を闇の中を走らせます。虫の音色と暗闇の田んぼ道の間に電柱が立っているのが少しホッとします。




「きゃあ!」

闇を引き裂くように響いたのは女性の声でしょうか?

私は慌てて自転車を走らせると慌てた様子で駆けていく人影が!?

追いかけようにもびっくりして尻餅ついている人がいるので話しかけます。


「だ、大丈夫ですか?お怪我は?」

「は?あ、ああ。大丈夫よ。頭は悪いけど怪我はしてないよ」

「そうですか。それはなにより」

頭は悪いのは手遅れですけどお怪我がないのはなによりです。


「ん?んん~?あなた同じクラスの芹沢真名さん?」

起き上がり丸メガネのズレを直してこちらに近づくのは確かクラスメイトの葉月玲央名さん?

小柄なツインテールでぴょこぴょこ歩いてるのが印象的でしょうか。

居眠り同盟の一人でその堂々とした眠り方は称賛に値するそうです。


「ああ、葉月さんでしたか。こんばんわ。このような場所で奇遇ですね」

「こんばんわ、芹沢さん。レオナでいいよ」

「じゃあ私も真名でいいですよ。玲央名さん。一体なにがありましたか?」

「ああ。それな?私は散歩同好会なんだけど……」

それな?と言われると腹立つのは私だけ?

そして散歩同好会なんてあるのですか。


「今日も遠出をした帰りに歩き疲れてコンビニで買ったあブクブクを飲んでたの」

あブクブクとは炭酸飲料のことです。ペットボトルの蓋を開けるとブクブクと泡が溢れるくらいに出てくるので、初めの頃はSNSにあげようと購入する人も多かったとか。

今は、泡が多くて飲みにくいという評価を得て購入者も少ないとか。


「そしたらさ~。現れたんだよ。あの!」

「あの?」

「ダンボール男だよ!あれは確かにそうだった!」

怖がると言うよりは興奮しているのか。

これが原因で暗がりが怖がったりしないようで良かったです。

ともかくこのような場所で話しを聞くのもなんなので歩きながら話しを聞きます。

どうか変なフラグが立ちませんように。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ