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五竜山を横目に自転車を走らせます。山には雲がかかってあちらでは雨でも降ってるかもしれません。
時折通りすぎるパンパンのすし詰めのバスが通りすぎます。その中には同じ学校の生徒もいます。
小さなアップダウンを繰り返しいつも通う学校へ。
桜並木の花は満開に咲き誇り花見するなら今だよと自己主張なさっています。 今年も氷華の湖での花見もいいかもしれません。
駐輪場に着くと自転車を止めて校内へ。
好物は学生とばかりに建物がみなを吸い込んでいるようです。
ざわつく校内。学生たちが挨拶する中教室へ。
前に比べてクラスメイトとも挨拶するようになりました。
「おはよう、芹沢さん」
「おはよう冬野さん。きれいなポニーテールですね」
「えへへ、そう?ありがとー」
爽やかに笑う冬野さんは爽やかでみんなに人気があります。
私のようなぼっちにも声をかけてくれます。
窓際の自分の席へ座ります。窓際族の私としての責務を果たしましょう。
それは静がに読書です。集中してしまえば周りのざわめきも聴こえなくなり…「おっはよ、芹沢!」
「……おはようございます御陵くん」
この人は空気を読むのが得意なのに私が読書してることを分かってもら穴井のでしょうか?
そ、それともかまってちゃんと言う奴ですか。
女子に甘えて来る男など気持ち悪いのですが……。
まあでも、ああだの、うぃ~だの。ちゃんと挨拶しない人よりはマシですか。
「お前朝から本なんて読んでるのか?」
そんな文化知らないよみたいな表情で言いましたね。
こちらに向かないで言いです。伊良痤天さんが山姥のように睨みつけてますよ。
普通のぼっちならばビビりますが、私の人生に比べれば路傍の石。気にすることはありません。
不足の事態にだけ、おろおろすればよいのです。
「そうですが悪いですか?」
「悪かねーけど、どんなの読んでるの?」
「星降る少女のうたです」
「聞いたことないな。面白いのか?」
「そうですね。無名ですけどそれなりには」
星降る少女のうたは少女と少年が箒にまたがって様々な星を旅して回るお話しです。
「じゃあさ。俺とも今度旅……とまでは行かないまでもどっか遊びに行かない?」
「いえ、結構です。私は一人が好きなので」
「そ、そうか」
この方はなにを考えているのでしょうか?
私みたいなぼっちを誘うよりも他に誘う友達が星の数ほどいるではありませんか。
私は読書を再開しながらバイトのことを思い出しそうになりながらも、読書に集中します。