37話
紫紋会とは名ばかりに、要するに彼らは一般市民だ。下手に手を出せばすぐに世間に犯罪集団として桐生門組の名前が広がる。
しかしそれは、表沙汰になった場合のことだ。隠せばいい。手柄は全て警察に開け渡せばいい。自分たちの目的は、組の名前に傷をつけてやろうと、脆い牙を向けてきた野良犬の排除なのだから。
「蒼士兄さん、面白い情報掴んだよ」
「なんですか?」
今回の件も、策から処理まで全て蒼士に一任されている。本格的に跡目の準備に入ったのだ。そのため、この件に関しての情報等は全て蒼士に行き渡る。組長には定期的な状況報告と結果だけ知らせれば十分であった。
「紫紋会のトップを名乗ってる泉ってやつ、父親が有名な弁護士みたいだよ。政治家ともかなり関わりがあるらしい」
「なるほど、ここ数年の紫紋会は動きが激しいのにどうして大事にならないのかよく分かりました」
汚い大人っていうのはどこにでもいるものだと、蒼士は呆れ交じりにため息をひとつこぼした。これなら、殴る蹴るでカタをつけられる暴力団の方がマシだと。
「どうやら、息子が可愛くて仕方がないようだな。警察は一部の政治家と弁護士、面倒なチンピラ連中も処理できて大助かりって訳ですね」
「どう仕掛るつもり?」
「裏の荒事を消せるのは裏の人間だけ、つまり泉の父親のビジネスにはケツモチがいる可能性があるってことです。まずはそこから行ってみましょうか。飯田、紅蓮を連れてきてください」
紅蓮が蒼士から任された仕事は泉の父親のケツモチ、護衛を担っている組織を見つけることだった。
ちゃんとした護衛を雇っている可能性もあるが、それは低いと蒼士は睨んでいた。蒼士は神坂からいくつか情報を得ていた。
それはヤクザが関与した裁判であった。おそらく、そこで金のやり取りがあった。そしてヤクザたちの罪はきれいさっぱりもみ消された。そんな事例が2つ3つと見つかれば、泉家がヤクザと関わりを持っている可能性は十分にある。
「紅蓮さん、泉のバックがわかりました」
泉家の尾行を命じていた涼太から連絡が入ってきた。弁護士である泉宗一、そしてその息子であり紫紋会会長の泉宗平。この2名の周りで、猪狩組の男たちがよく見られていることがわかった。
「猪狩?妙だな、あいつらがお偉いさんの護衛なんてな」
「どうします?」
「やることは変わんねぇ、とにかく蒼士と親父に伝えてくれ」
「わかりました」
相手が同業者となれば後は義理も筋もなかった。喧嘩を売ればすぐ買うような相手、ならはっきりと自分たちから意思表示をすればいいのだ。お前たちのシノギの邪魔をしていると。
猪狩とはちょっとした抗争になるだろうが、桐生門にとってそれはなんの恐れも抱かない、一種のイベント事にすぎなかった。
むしろ、桐生門と聞いて、猪狩の方が手を引き始めるだろう。
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