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末っ子は天使なお嬢  作者: 白い犬
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1話

更新は基本的には土日になります

地面が割れてしまうのではないかと言うほどのクラクションと、タイヤの擦れる音。タイヤが焼けたのか、微かな焦げ臭さと、鉄の匂い。


トラックにぶつかり、横転した車には、助手席に座っていた娘を守ろうと、母親が体を丸め息絶えていた。腕の中の子供は大怪我はしたものの、一命を取り留めた。


この事故は、連日ニュースで報道され、知らぬものはいないほど知れ渡った。死亡者1名、怪我人多数。この事故で心に深い傷を負った者は少なくない。取り残された少女もまたその1人。


少女の傷が徐々に回復し、ようやく1人で壁をつたいながら歩けるようになった頃、少女の病室に、黒いスーツに身を包んだ男がやって来た。




「はじめまして、雪ちゃん。俺は桐生門勝義(きりゅうもんかつよし)、きみの父親だ」


複数の傷跡を残す手が優しく少女…雪の頭を撫でた。雪の大きな瞳は困惑に揺れ、目の前の恐ろしい男を映していた。


「これから、俺と一緒に暮らして欲しい。いいかな?」


雪は孤独だった。祖父母も2年前に亡くなり、自分を引き取るような親戚もいなかった。そんな時、目の前に父と名乗る男が現れた。

たとえ一度も会ったことのない人だとしても、雪にとっては、唯一頼ることの出来る存在だったのだ。



数日後、雪の元に再び勝義がやって来た。今日で退院と言われ、雪は勝義の腕に抱かれて病院を出た。黒塗りの車にそのまま乗せられ、温かな腕の中で微睡む。


一人ではないと、安心できた。病室では、酷い孤独感、傷を覆う蒸れる包帯やガーゼ。それら全てが気になって、ゆっくりと眠れる日は少なかった。だがこの屈強な腕の中は、何があっても大丈夫だと、そう思わせてくれた。


誰かの心臓の音、体温、吐息……



_____



「ママ?雪にはどうしてパパがいないの?」

「……ごめんね」


この質問をすると、ママはいっつも悲しそうに笑っていた。いつか、いつか絶対2人で会いに行こうね。そう言って誤魔化すけれど、ママはいつもパパを思って泣いている。


だから、2人でパパに会った時、雪がパパを叱ってやる!って思ってた。そして、みんなで仲良く暮らすって思ってた。そうすれば、みかちゃん達にも、そのお母さん達にも、もうバカにされずに済むから……


_____



「ママ……」


眠ってしまった雪の声を聞いて、勝義は抱きしめる腕の力を少し強めた。

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