11話
「親父、蒼士です。入ります」
静かに襖を開けて、蒼士が入ってきた。任せていた仕事が終わったのだろうか。
「なんの用だ」
「見つけました。あの事故の裏にいたのは冴木組です」
雪絵を死に追いやり、雪にひどい怪我を負わせた犯人。桐生門…というよりは、俺に恨みを感じて身内を手にかけようとした愚か者。
「冴木か、まためんどくせぇとこだな」
冴木組。以前は桐生門にも並ぶ大きな組織だった。しかし、俺がここまで上り詰める過程で、反発し合った。その結果、冴木組は小規模に分裂し、最近ではその名を聞くことなどなかった。
小さくなった組の奴らを集めて仕返ししに来たってことだろうな。ますます、雪絵と雪には申し訳ないことをしてしまったと、心が蝕まれる。
「親父、どうしますか?」
「中心人物がいるはずだ、そいつら見つけて来い。それ以外の奴らはお前が片して構わねぇ」
「紅蓮を使っても?」
「好きにしろ」
「分かりました。では、失礼します」
時計を見れば、もうすぐ雪が帰ってくる時間。学校ではまだ周りと馴染めていないようだが、直に慣れるだろう。茶を啜っていると、玄関の方から走ってくる足音が聞こえる。事故による怪我ももうずいぶん良くなった。
「パパ!ただいま!!」
「おう、篠原が菓子を用意していた。手洗って食ってこい」
「うん!昴、昴も一緒に食べよ!」
「はい、お嬢。組長失礼します」
この襖を躊躇いなく開けてくる幼い少女。この組には異質な存在のように感じられるかもしれないが、それがどこか心を和ませる。
二度とあの子に被害がいってはいけない。もう十分肉体も精神も傷ついた。俺が父親らしくできるのは、桐生門という姓を背負いながらも、あの子が笑える場所を用意してやることだ。
そのためにもまずは、冴木共を片付けなければ…




