千鳥足にならないで!《2》〜入学編〜
これまでも、これからも、一話ごとが短いです!
「ちーちゃんおっはよー!」
そう言ってこいつは朝も早くから俺に強烈なタックルをかましてくる。ショートの黒髪が可愛らしく揺れるこの幼女、もとい美少女は『白原 鶫』隣に住んでいて誕生日も近い。所謂幼馴染というやつだ。……とまぁ、メタい紹介はこの辺にしよう。それより……
「おい鶫、いい加減その呼び方止めねぇか?」
「いや〜、止めてもいいんだけどね〜」
「だけどって何だよ?」
「怒らない?」←上目遣い
くそっこの台詞に上目遣いはっ怒れるわけないだろ!
「ああ」
「ちーちゃんの本名、何だっけ?」
そう言って目の前の幼馴染は「エヘヘ」と笑っている。
「……は?」
「いやね、もう十年以上ちーちゃんって呼んでるから本名忘れちゃった!」
……分かったか読者諸君。こいつは天然モノの『あほの子』だ。喜べ。
「忘れたって何だよそれ!?『鵆』だよ!
『小鳥遊 鵆』!!」
「あぁ〜確かそんな名前だったような?」
「『だったような?』じゃねぇよ!そんな名前なんだよ!」
最早長年一緒にいる幼馴染とは思えないような会話をしながら俺達は、本日めでたく入学予定の学校へと歩みを進める。
……こんな筈じゃなかった。
俺と鶫は同じクラスとなり、無事に入学式、自己紹介を終えた。
ここまでは良いんだ、そう、ここまでは。俺にとっての地獄はこの後なんだ!
何を隠そう俺は俗に言う『コミュ障』というやつなのだ。
「――――あははっ、これからよろしくね〜」
くそっ、鶫のやつあれ何人目だ!?何故あいつはあんなに簡単に話し掛けに行けるんだ?このコミュ力お化けめ。
などと一人寂しく逡巡していると、不意に頭を何者かに叩かれた。
「うひゃぁ!?」
どんな声あげてんだ俺は!?美少女じゃなきゃ気持ち悪いだけなのに!
頭の中で自分への愚痴を零しながら後ろを振り返る。
「あはははは!『うひゃぁ!?』だって!何素っ頓狂な声出してんのさ!」
そこには腹を抱えて笑い転げる女がいた。
「……で?何故あんなことをした?」
そう問い詰める俺の前には先程の女が正座している。「している」じゃないな。「させた」のか。
「いや〜、君が一人でポツーンと座ってたから、ここは私から話しかけてあげようかと!」
そう言って立ち上がった女をよく見てみると、かなりの美少女だ、しかもっ…しかもっ…俺より背が高いっっ!でも心は広いのだ!……多分。
「まぁ今回は許してやる。ところで、あんた、名前は?」
「あんたって呼ばないで、名前で呼んでよ♪」
「いやだから、名前知らないっての」
「自己紹介したはずだけど、まぁいいか!私は
『真鶴 小春』!確か君は鵆君…だったよね?仲良くやろう!」
何だ?こいつが凄く、輝いて見える!?こっからが陽キャのオーラってやつだというのか!
「小春だな?わかった、これからよろしくな…って…」
「ん?どったの?」
「さっきから気になってたんだけどよ、お前の肩に手がしがみついてるんだが?」
「あぁこれ?そういえばこの子を紹介するの忘れてた…この子は私の双子の妹の小雪だよ、人見知りが激しいけど仲良くしてあげてね〜」
「そうか――――えっと〜………小雪?」
うわっ目だけ出てきた
「……何?」
「鵆っていうんだ、よろしくな」
「……さっき姉さんと話してたの聞いてた」
まぁそりゃそうか。ずっとくっついてたんだもんな。
……母さん、俺、友達出来たよ。