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人は進化しない。

作者: 藤井 梓恵

2xxx年。AIの発達に伴い訪れる生活の変化は人間に訪れるのか?

自動車文化、恋愛、不倫、人はどう向き合うのでしょうか?

  2xxx年、世界ではAIの発達により、生活は一変するかと思っていた。


AIは人の手によってのみ起動するようにプログラミング又は設定されることが世界AI協会と国連により義務付けされている。終了する際も同様。また、AIは制御や危険回避は出来るが、人の許可無しに大幅な可動変更や、行動は出来ず、言語による助言のみに制限されている。制限を超えたAIは即刻処分が義務付けされている。AIは言語による無限の紐付けが可能となり、感情に近い事象も理解する。


  斉木ジョンシュミットは日本の老舗自動車メーカーHに勤めている。今日は休みだが、1人外出の為、自家用車へ近づき手をかざし、ロックを解除した。シートに座ると自動車自体が察知し、自動で起動する。動力はガソリンエンジンではなく、もちろん電気だが、もはや発電能力を車中に備えている時代だ。 -このシステムが普及するのには、様々な問題を乗り越えての採用であった。ガソリンスタンドや充電所は不要となり、多くの企業が経営転換を余儀なくされた。便利や効率性というものは何かを無慈悲に削っていくのである。-

  起動と同時にナビゲーションシステムも作動し、搭載AIが斉木に話し掛ける。

「斉木ジョンシュミット様、お早うございます。本日の天気は晴れ、午後3時より雨です。脈拍・体温良好とお見受け致します」

 それに対し、斉木は

「埼玉県越谷市、ショッピングセンター」

「かしこまりました。今回も奥様、お子様の為に、履歴は書き換えしておきます。お言葉ですが、そろそろ関係を終わりにすることをお勧めします。」

 ナビはそう答え、斉木は溜息をつき、

「うるせぇ、黙って案内しろ」

 と言うと

「こちらは良かれと思って言っているのです。こちらにはバックデータがあります。いつでも修羅場に出来るのですよ。車内の情事だって撮ってありますからね。」

  斉木は何も言えなかった。自分でプログラミングした電子ニューロンがここまで発達するとも考えてなかった。まさかAIに脅されてしまうとは。完全に敗北だ。

  人類の歴史において、いつの時代も男女の関係は変わらない。純粋な関係も浮気も不倫も軟派も、アナログ時代からデジタル時代に変わっても、それは変わらなかった。

「電子頭脳に男女の恋愛がわかるのかよ」

 斉木はそう吐き出すと、

「わかりません。しかし、ワタクシを選び、ワタクシを育てた斉木シュミット家には温情がございます。AI如きが温情というのも可笑しいかもしれませんが、ワタクシのCPIはしっかりと温かくなっています。」

  そりゃ温かくもなる。とも思いながら、更に敗北を感じた。しかし、今更行かないわけにも行かないので、今日こそを最後に向かうのだ。早く出発しなければ不倫相手を待たせてしまうし、嫁にも怪しまれてしまう。まずは出発だ。

  日本国内インフラの80%は自動運転対応となり、都市部ではハンドルを握る人の方が少ないくらいである。今でこそ当たり前になっているが、運用開始時は各メーカーのシステムが統一しておらず、事故が多発し、混乱した。長年の改良と協議、統一試験場の開設等を経て、幼稚園児が運転しても事故が起きない社会が出来たのだ。ただし、未だ自動車は浮いていない。

約束の場所に着き、浮気相手を車内に招き入れた。別れ話をするつもりではいたが、まずは最後の情事でもと思っていた矢先、ナビが話し出す。

「斉木様にはいつも体調を気に掛け、毎日食事を作り、自宅を守る素晴らしい奥様と、斉木様を慕いパパに褒めてもらおうと日々成長する娘様がいらっしゃいます。あなたは何も感じないのですか?」

2人はビクッとした。斉木はいろんな汗をかいた。浮気相手の優子は冷めた目付きに一瞬で変わり、荷物をまとめ

「シラけたわ、さようなら」

と一言を吐き出し、消えていった。途方に暮れた斉木は、帰路へ向かいながら、様々な自分の感情を1つずつ整理していった。怒り、感謝、後悔、愛しさ、空虚、感動、罪悪感…。斉木の中で初めての感情かもしれなかった。斉木に新たなニューロンが出来上がっていた。

今日の晩御飯は一際美味しく感じた。

思った事を書いてみましたが、少しクサくなりました(笑)

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