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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編集

転生トラックに轢かれて

作者: CLOWN

ホラーぽくないかもしれませんがよろしくお願いします。

この作品はフィクションであり、実際の人物、団体とは関係はありません。

 うだるような暑い日。

 太陽がアスファルトを焼き世界を歪め肌を焼いた。

 ちらほらと家が立ち並ぶ田舎道を汗で地面にシミを作りながら、ショウと一緒に高校から帰っていた。


「なあ、ショウ。もし世界がもう終わるってなったら何がしたい?」

「タク、急にどうしたの?」


 俺がそう言うとショウは呆れたように返してきた。


「いや、こんだけ暑いとなんか終わんじゃないかなって思ってさ」

「なんだよそれ」

「いいからさ、なんか最後に食いたい物とかねぇの?」

「僕は今はアイスが食べたいかな」

「いや俺もそうだけど。最後に食いたいもんだよ」


 ショウは腕を組んで首を右に傾けコキリと鳴らした。

 悩むときや考えるときによくやる癖だ。


「うーん、最後なら母さんの作った玉子焼かな?」

「玉子焼って。最後だぞ最後。もっとさ高級料理とかさ、ねぇの?」

「最後だからこそかな?そーゆーのが僕は良いよ。タクはどうなの?」

「俺は鳥カツ専門店ヴィクトリ~のカツ丼よ」

「なにソレ?」

「高校の入学祝いで行ったけど、一杯二千円の高級料理よ」

「カツ丼で二千円って高くない?」

「そのぶんメッチャウマいんだよ。サクサクの衣、ジューシーの鶏肉、すべてを包み込む黄金の卵、そして甘辛いタレ。思い出すだけで涎が」


 俺は慌てて溢れてきた涎を腕で拭った。


「むなしくない?」

「うっせー。良いだろ夢を持つくらい」

「タクはさ、異世界転生したいとか世界が終わるならとかさ言うけどさ、そろそろ進路も考えた方がいいんじゃない?」

「うっせー。黙れよ」


 ふてくされた俺は喋るのを止めた。

 相変わらず世界は熱で歪んでいる。

 蝉の声が煩く響き、気温をさらに上げようとしてるのかと少し苛立った。

 信号のある十字路に差し掛かると緑の光が点滅を繰り返していた。

 わずかな舌打ちの後、横断歩道の先にこちらをジッと見ている黒猫に気づく。


「なあ、ショウあのネコさあ」


 その言葉が最後だった。強い衝撃を感じると意識がはるか彼方へと飛んでいくのを感じた。

 そうかコレが俺の世界の終わりか。カツ丼、また食いたかったなあ。

 遠のく歪んだ世界。

 蝉の声も肌を焼く痛みもそして自分の体温も、もうあの暑さを感じることは無かった。

 黒い猫の口元には白い三日月が浮かんでいた。




 蝉の声が聞こえる。ただ世界は冷たく静かだった。

 ゆっくりと目をあけると白い天井が映る。

 首を動かすとこちらを祈るように見ていたおばさんの顔が見えた。

 起きたことに気づいたのか必死に口を動かし、何かを喋っている。

 何を言っているかわからなかった。たぶん、自分と同じ言語で喋っているのだろうが、まったく理解出来なかった。

ーーまるで異世界に来てしまったかのようだ。

 そしてお医者さんと母さんがドアから入ってくる。

 口は動いているが言語は流れていき、蝉の声だけが嫌に響いている。


 それから様々な検査が行われ、骨折等のケガと友達を目の前で失った事による目に見えない大きな傷があるということだ。

 事故の原因は運転手が発作を起こし制御不能になったトラックに轢かれてとのことだった。

 リハビリ、カウンセリング、日々は過ぎていく、あれだけ煩く響いた蝉の声も遠のいていき、熱で歪んでいた世界も正されていく。


 十字路の信号は緑の光を赤の光に変えた。

 向こう側の電柱の根本には茶色く枯れた花束が置いてあった。

 いつも隣にあった姿は今はない。

 いつもと変わってしまった日常。

 朝、起きて母さんに心配されながら少し甘い玉子焼を食べてから学校に向かっている。

 緑に変わった光を確認して歩き出し、枯れた花を横目に歩き続ける。


 徐々に増えていく制服姿の男女の姿ともに久しぶりの校舎が目に映る。

 アイツのいない日常が始まっていくのだと感じた。

 記憶を辿りながら、階段を上がり教室へと向かう。

 ドアの奥から騒がしくも楽しそうな話し声が聞こえてきた。

 昨日のドラマがどうとかあのアイドルがかわいいとかそんな話のようだ。

 目の前のドアをガラガラと開ける。

 ゆっくりと入っていくと話し声が徐々に収まっていき、耳に痛い沈黙が広がった。

 席に向かうと机の上に花が活けられていて花瓶が置いてある。つい最近、咲いたかのような鮮やかな色だった。

 席の前で立ち止まっているとガタガタと椅子の引く音が響いた。


「おい、タク、そこはショウの席だろ。おまえの席はコッチだよ」


 カズの声に振り向くと、カズが椅子から立ち上がり自分の隣の席を指さしていた。

 強ばった表情のカズを見て、腕を組み首を右に傾けコキリと音を鳴らした。


「ああ、そうだった。そこだった」


 踵を返し、カズの隣の席に向かう。

 ガタガタと椅子を引き座ると、カズも顔を固めたまま座った。


「またヨロシクなタク」


 どこか緊張したような声のカズに僕は右手で口元を隠して。


「ヨロシク、カズ」


 と短く返した。

 掌の下には歪んだ白い三日月が隠されていた。

転生トラックはもはや都市伝説みたいなものになってきているので和ホラーで投稿してみました。


ここから本作とは関係のない話になります。

この作品で3作品目の投稿になります。

1作品目のゲーマーはゲームにて輝くは自分の中で何か違うなと思い、再構成を行っております。いづれは完結出来るように頑張ります。

2作品目のゆきだるまは誤字脱字がひどいのでいつか直した方が良いかなと思っています。

いくつか作品を投稿していき少しでも文章を書く力と習慣をつけていければと思っていますのでよろしくお願いします。


ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

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