表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

その3

 私の指摘に朋ちゃんも頷き、4時間目と給食のところにはさらに蛍光ペンでぐりぐりと丸が付けられた。


「この間に抜け出せる可能性がある人って、体育を見学していた山下さんと石川君。それに、給食に遅れた飯田君と先に戻った遠野君か」

「うん、そうだね」


 暫くノートを睨んでいた私達だけど、「これ以上はここで考えてもわからないね」と朋ちゃんは言った。


「うん。明日みんなに聞いてみることにしよう」と私も頷く。


 私と朋ちゃんはもう一度ノートの内容に間違いがないかを確認すると、その日の検証をお終いにした。


 UMA探偵団、初日の勤務は終了しました!


    ◇ ◇ ◇


 翌日、状況はもっと悪くなっていた。

 遠野君のことをクラスメイトの男子たちが無視していたのだ。唯一、遠野君と仲の良い飯田君は石川君と普通に接していた。


「遠野君、石川君。ちょっといいかな?」


 私と朋ちゃんが声を掛けると、二人は怪訝な表情を浮かべた。私は構わずに遠野君の席の前に屈みこみ、小声で遠野君に確認した。


「一昨日のバトマジカード事件、遠野君はやってないんだよね?」


 遠野君の眉間に、不機嫌そうに皺が寄る。


「やってないよ。あれは僕が別に買ったバトマジチョコスナックに入っていたんだ」


 遠野君は眉を寄せてそう言った。私と朋ちゃんはそれを聞いて大きく頷く。


「ねえ。じゃあ、私達と一緒に身の潔白を証明しない?」 


 遠野君はてっきり私達に責められると思っていたようで、この提案を聞いて目を真ん丸にして驚いていた。


「身の潔白? 僕のこと疑っているんじゃないの?」

「うーん。容疑者の一人ではあると思うけど、証拠もなしにこの仕打ちは酷いと思うの。だから、本当にやってないなら身の潔白を証明しようよ」


 遠野君は少し迷うように視線をさまよわせてから、「やる」と私の目をみて力強く答えた。


「じゃあね、まずこのノートを見て欲しいの」


 私は昨日朋ちゃんと付けたノートを遠野君と石川君に見せた。二人は私たちの力作ノートに目を瞠っている。


「草壁君のバトマジカードなんだけど、中休みにはあったでしょ? で、なくなったのがわかったのが昼休み。っていうことは、犯人は中休みから昼休みにかけて盗ったってことよ。この間のアリバイを証明したら身の潔白が証明されるわ」


「ちょっと待って!」と、そこで石川君がストップをかけてきた。「もしかして俺も疑われているの?」


「もちろんよ」と私は頷く。石川君は体育を見学していたから、有力な容疑者の一人だ。


「怪しい人は全員潰していかないと」


 石川君は目を丸くして口をぱくぱくとしていたけれど、私と朋ちゃんと遠野君の顔を見回してからハアっと一つため息を吐いた。


「それなら、証明は簡単だよ」と石川君は言った。


「証明は簡単?」

「ああ。俺は体育の時間、山下さんと一緒に見学していたから。山下さんに聞いてもらえば俺が一度も抜け出してないことはわかると思う。山下さんも一度も抜け出さなかった」

 

 私は石川君の話を聞いて教室を見渡した。教室の窓際でお喋りをしていた山下さんを見つけて早速事情聴取へと向かう。


「山下さん」

「なあに、みんなで?」


 山下さんは私たちが4人ずらずらと連なって聞きに行ったので何事かと驚いていた。それでも、一昨日の体育の時間のことを聞くと、すんなりと思い出して答えてくれた。


「あの日なら、確かに見学していたわ。私も石川君も一度も抜け出さなかったわ」


 石川君は山下さんの答えを聞いてホッとしたような顔をした。やっぱりなんだかんだで疑われているのが晴れて安心したのだろう。

 

 ここで私は考えた。


 山下さんと石川君はお互いにアリバイを証明し合っている。お互いに共謀すればアリバイ工作も出来ないこともない。けれど、私は今日突然石川君にあの日のことを聞いた。なので、少なくとも今日は2人にはアリバイ工作の相談をする暇はなかったはずだ。


 では事前に山下さんと石川君が打ち合わせていた可能性はないか?


 これも私はすぐに否定した。だって、どちらかが犯人だったとしても、2人のうち犯人でない方がアリバイ工作に協力するメリットが何もないもの。2人がずっと体育の時間に座って見学していたと考えるのが一番自然だ。


「これで石川君と山下さんはシロだね」


 私はシャーペンをカチカチと鳴らすと、石川君と木下さんのところにバツ印をつけた。残るは遠野君と飯田君だ。教室を見渡すと、飯田君は教室の入り口近くで友達の牧多君とふざけ合っていた。私は早速飯田君のところに向かった。


「飯田君。ちょっといい?」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ