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白いカラス

作者: 三笠 広生


 ふっと空を見たら白いカラスと黒いカラスが飛んでいるのを目撃したんですよ。白いカラスって本当にいるんですね。私、今日初めて見ました。


 そんなことがあったので、出来た作品です。


 ――ついていない。


 それが私の今の感想だった。今日、ずっと好きだった彼を呼び出して告白をしようとした。

 秘めたる思いは数年、そしてやっと決心が付き、告白しようとしたらこれだ。本当に嫌になる。


 雨が降ってきたのだ。しかも、強めに。さらに間の悪いことについさっき彼から先に着いたとLINEがあった。私は少し遅れると返し、大丈夫?と連絡が来た。……色々と涙が出そうになった。


 そんな私は近くにあったバス停で雨宿り中だ。携帯を仕舞い、空を見上げて見るとまだまだ雨は降り続いていて止みそうにない。

 ため息と共に椅子に座り込んで項垂れる。


 どうしようかと内心思っていると一鳴き、声が聞こえた。

 何処にでもいるそれ。しかし雨の日は珍しいなと思ったそれはカラスだった。カラスも雨宿りだろう。滑空して入って来たカラスを八つ当たり気味に睨み着けた。


 そして私は雨が降っている事を忘れ、思わず息を飲んでそのカラスを凝視した。


 ――それは白いカラスだったのだ。



 初めて見たことの衝撃よりもその美しさに目を奪われた。

 私が動けないでいると、そのカラスは人を怖がらずに近寄って来た。首を曲げたり、回したり、瞬きしながら私を暫く見てから数回、嘴でつついてからそのカラスはバス停から飛んで行ってしまった。


 なんだったのだろうと呆気にとられて、飛んで行った方向を見てみたら何時の間にか雨が上がっていることに気が付いた。ハッとして慌てて彼が待っているであろう場所に向けて走り出す。


 不思議と体は羽根が生えたように軽く、心にあったもやもやは無くなっていた。


 ――これなら告白は上手く行くような気がする。


 晴れ間から照らされた光が、疎らにある水溜まりに反射しきらきらと輝いている。その水溜まりを踏みながら走っていく私の後ろで跳ねた水がさらに輝いていた。

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