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就活  作者: AIAMAAI
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説明会開始

 精神的な多忙さに追われ瞬く間に日々が流れて、来る1日の企業の説明会が開始される運びとなった。心弥は、その日は朝から落ち着かない様子で、髭を剃って顔を洗い、腹ごしらえにと、グラスに並々と注いだ牛乳の中に生卵を1個入れて、一気に飲み干した。歯を磨いて、購入したリクルートスーツに手を通した。


 リクルートスーツとは、就職活動中の学生が会社訪問や就職試験の際に着る地味で画一的なスーツのことだ。男子は紺色。女子は紺かグレーが一般的とされている。


 心弥は電車に乗って、企業のある最寄駅に降り立った。駅舎を出ると、同じ様なヘヤースタイルの、同じ様な真新しいリクルートスーツで正装した学生達も降り立ってきた。学生達は、その口を硬く結び、きりっと引き締まった緊張した顔付きで、企業説明会の会場へと前進していった。その歩いて行く学生達の姿は、まるで行進していくロボットそのものだった。

 会場に入ると、企業の社員達が、横並びにズラリと並んでいた。心弥は、その前に置かれた椅子に腰かけた。他の学生達も同じように姿勢を正して椅子に腰かけた。

 熱く語りかけるように企業の説明をする企業戦士達は、熱心に聞き入っている、面立が異なるロボットと思しき学生達を前にして何を考えて、何を見ているのだろうか。

 心弥は子供の頃、二つ並んだ絵柄の違うところを探す、『間違い探し』というクイズに嵌まったことがある。

 左右違うところを探してくださいと書かれたその下に、こんなマニュアルが書かれてあった。左と右の絵柄を交互に見比べながら間違いを探すのではなく、片一方の絵柄を暫く眺めて、その絵柄を脳内にある海馬という器官に記憶させる。そうやってからもう片方の絵柄を見ていくと、目線が間違っている部分にやってくると、脳が違和感を感じてその部分で動きを止めてしまうというのである。

 それと同じように、企業戦士達の海馬には、同じ髪型、同じ服装の金太郎飴のようなロボット達のことが記憶されているのだろう。マニュアル本として。企業戦士達はその記憶に沿って、説明を聞く学生達を見ながらマニュアルにそぐわない者達を見つけ出して篩いにかけているのかもしれない。熱弁を篩う企業の社員達の説明を聞きながら、心弥はそんな事を考えていた。

 会社訪問を終えた学生達の表情には、心弥がそうであるように、遣り遂げた充実感のような、安堵感のようなものが漂っていた。

 面接開始の来る1日の日までの期間、心弥は訪問した十数社の会社から、慎重に時間をかけて本星の数社を絞り込み、そして、その会社宛に履歴書を送った。

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