シアワセな末路
「よくぞ、ここまでやって来たな。褒めてやろう」
「……あんたに褒められても、ぜんっぜん嬉しくない」
「ユーラちゃん! なんで来たの!? わたしなんか構わないで、早く逃げて!」
私、ユーラは、勇者をしている。そして、私が倒すべき魔王に囚われてしまったのが、私を導くために王国から送られた巫女、アリアス。
「ごめんねアリアス。私、やっぱりあなたがいないとダメなんだ。……魔王、覚悟!」
「ふん、まあそう焦るな」
「あっ!」
城の天井から伸びた触手によって、持っていた剣も、盾も、奪われてしまった。
「ゲームをしようじゃないか」
「……ゲーム?」
そういうと、さきほどの触手が、小瓶を私の手もとに落とした。
「その小瓶の中身を飲み干したら、お前の大切な巫女を返し、貴様に俺様を倒すチャンスを与えてやろう」
「これを……飲む……」
「そんなのウソに決まってウッ!」
「黙っていろ」
「…………」
「……そうか。ならば、巫女には死んでもらおう」
「ま、待って! 飲む、飲むから!」
「ダメぇユーラちぁゃん!」
私は、小瓶を傾けて、一気に中身を口へ流し込んだ。
「ほ、ほら、これでいいんでしょ……」
「……いいだろう。では……『モーエ・ア・ガール』」
「……うっ!」
体が……熱い。
「うっ……はぁああぁぁ……! ……まさか、さっき私が飲んだのって……」
「そう、油だ。その状態で俺様の発火魔法が体内で発動するとどうなるか……」
「ひ、ひどい……」
「うっ……くっ……ハァ、ハァ……」
体の中が、溶けていくのがわかる。
「うぅ……アリア……ス……」
「ユーラちゃぁぁぁんっ!」
◆
「あ、あぁ……ユーラ……ちゃん……」
「フフフ……フハハハハハハッ!」
ユーラちゃんが焦げ果て、炭になるのを見届けてから、魔王は笑い出した。
「許さない!」
「そうかそうか、許さないか。あの世から、俺様を恨んでいるんだな」
すると。
「フンッ!」
魔王はわたしを縛りつけていた巨大な十字架を蹴り。
「いやあぁぁぁっ!」
わたしは、溶岩の海に落とされた。
◆
「あれ……?」
わたしは、「目を覚ました」。
見渡すと、辺りには綺麗な花畑が地平線の先まで広がっていた。
「ここは……」
「待ってたよ、アリアス」
「ユーラちゃん!?」
振り向くと、そこには愛しい愛しいあの人が。
「ごめんねアリアス。……私、アリアスを取り戻したかったのに」
悲しそうな顔をするユーラちゃん。
「ううん。だって、ユーラちゃんがいなかったら、わたし、解放されても生きていけなかったから……」
わたしは、とびっきりの笑顔をむけて。
「わたし、今すっごく幸せ!」