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2人の未来、これから

 あれから月日が経ち、私たちは一緒に大学を卒業した。

 大学の卒業式の日、私は沙良に海へと誘われた。


「優香」


 私たちが砂浜に着くと、沙良が話しかけてきた。


「どうしたの? 沙良」

「今までいろんなことがあったね」

「そうだね、数えきれないぐらい……」


 今まであったことを思い出す。沙良とは中学からの付き合いだ。それなりに色々なことがあった……何の変哲もないけど、確かに幸せだった時間だ。日本で同性婚が認められたというニュースを見て、二人で騒ぎあったことを思い出した。


「私、優香に言いたいことがあるの。聞いてくれる?」

「うん、もちろん」

「すぅー……はぁー……よし。えっと……優香さん。私と結婚して下さい」


 夕日のせいか、沙良の顔は、今までにないほど赤かった。さて、今、私はプロポーズされた? 沙良の言葉を頭の中で反芻して、意味を理解しようとするが、あまり思考が回っていない。返事をしないと……焦りながらも、思考が回らないせいでうまく言葉が浮かんでこない。


「ゆ、優香……? ご、ごめん。いきなりこんなこと言って……変だよね」


 私が言葉を発せずにいると、沙良が今にも泣き出しそうになりながら涙声を出した。ダメだ。沙良に泣いてほしくない……私がしっかりしないと。


「沙良。変じゃないよ。ありがとう、すごく嬉しいよ。私の方こそ……不束者ですが、よろしくお願いします」

「……っ! 優香っ!」


 沙良が抱きついてきた。私の胸に顔を押し付けて、嗚咽を漏らしている。


「沙良?」

「私、不安でっ……! もし断られたらどうしようって……! でも、よかった……!」

「はは……私が断るわけないって、知ってたでしょ?」

「でも……!」

「でも不安だったんだね。ありがとう、私のために」

「そうだ、指輪……」


 沙良が私から離れ、鞄から何かを取り出した。


「優香、手出して。左手ね」

「は、はい」

「……」


 私の左手薬指に、きらめく指輪がつけられた。私も沙良につけてあげなくちゃ。


「沙良、自分の分は? 私がつけてあげる」

「あ、ありがとう……はい。お願いします」


 沙良の手を取り、指輪をはめる。沙良はその指を、とてもうれしそうに眺めていた。


「キスしようか」

「もう、優香ってば、こんな時にもキス?」

「……」

「もう、そんな顔したら断れないって知っててしてるんでしょ……しょうがないなぁ」

「ありがと。しょうがないなぁって言いながらしてくれるのは昔から変わってないね。チュッ」


 軽く唇どうしを触れさせるだけの軽いキス。でも今はそれで十分だった。沙良にプロポーズされたことで、とても幸せだったから。今が人生で一番幸せだ。


「沙良、私、今すごく幸せだよ」

「私も。生きててよかった」

「大げさだなぁ」



 私たちは手をつなぎながら沈みゆく夕日を眺めた。これからの二人の生活に思いを馳せながら。

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