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体育祭、終わってすぐに文化祭

「沙良、お化け屋敷あるよ! 行こう!」

「えー……」


 今日は文化祭当日。私達の学校は、文化祭が体育祭の1週間後にある。だから、1周間で準備しなくてはいけないのだ。この1周間、大変だった……

 でも、今日は楽しむぞ。もちろん、沙良とだ。


「もしかしてぇ、沙良怖いのー? 文化祭のお化け屋敷なのにぃー?」

「ま、まさか……」

「じゃあいいね」

「わかったよ、しょうがないな」



 沙良と一緒にお化け屋敷に入る。中はほとんど真っ暗だ……かすかに隙間から入る光によって、かろうじて道が見える、といった感じだ。


「優香、歩きにくくない……?」


 沙良がそう言いながら私の袖を掴んでくる。か、かわいい……! こんな時は、気の利いた台詞を言わなくては。


「大丈夫だよ、沙良。私が守るから(キメ顔)」

「うわっ」

「……ごめん」


 しまった。変なことを言ってしまった。どうも、私はこういうの苦手だなぁ。

 そんなことをしながら、道なりに進んでいく。すると、曲がり角でいきなり何かが叫びながら飛び出してきた。

「ウワアァァァァァァ」


「きゃああああああああああ」

「ぐっ……いった……沙良さん? そんな強く掴むのやめてくれません?」


 それに驚いた沙良が、悲鳴を上げながら私の腕をものすごい強さで掴んできた。痛いぞ。


「あ、ごめん……」

「いいよいいよ。ぎゅってしてくるのは嬉しいけど今度は優しくしてね……」

「も、もうしないから」


 会話していて気を抜いているところに、またしてもトラップが。コンニャクのような何かが、いきなり飛び出してきたのだ!


「きゃああああああああああ」

「あの……沙良さん? さっき私が言ってたこと聞いてましたか?」

「ご、ごめん……つい……」

「いや、いいよいいよ」


 その後も何度か驚かされるたびに、沙良がものすごい力で私の腕を掴んできた。結構痛かったけど、沙良が私のことを頼ってくれてることの現れだと解釈しとこう……



 お化け屋敷から出て時間を見ると、12時前だった。もうそろそろ、クラスの中華喫茶に交代で入らないといけない。

「沙良、もうすぐお昼だよ。なんか食べて交代しないと」

「うわ、まじだ。私は焼きそば食べよっと」

「じゃあ私はたこ焼きで。たこ焼き半分あげるから焼きそば半分ちょーだい」

「うーん、そうだなぁ……いいよ」


 結構あっさりと了承してくれた。これで自然な流れであーんができそうだ!



「ソースとマヨネーズ、そこに鰹節と青のりが加わり、深い味わいが広がります……」

「優香、誰に言ってるの……」

「沙良」

「聞いてないから。私は焼きそば半分食べたからたこ焼きちょうだいよ」

「え、まだ1個しか食べてない」

「食べるの遅いわ!」

 沙良に怒られてしまった。


「はい、半分。あれ? 沙良、両手塞がってるね? しょうがない、食べさせてあげよう」

「塞がってないから!」

「はい、あーん」

「人の話を聞け!」

「なに? 食べないの? じゃあ自分で食べちゃおうかな……」

「なっ……待って、分かったから……あーん」

 ぱくっ。たこ焼き一つがまるまる沙良の口に入る。

「どう?」

「……っ! ……!」

「あ、熱かった?」

「……熱いわ! これ一気に入れるとかおかしいでしょ!」

「沙良、猫舌だったっけ?」

「いや違うけど! 優香、味覚だけじゃなくて熱の感覚もおかしかったか」

「お、おかしくないですー。ほら、沙良も私にあーんしてよ」

「え、これ焼きそばだから無理でしょ」

「……確かに……仕方ないか」


 沙良め、焼きそばなんてものをセレクトしやがって……!




「優香と沙良、頑張って」

「ご、午前中は、け、結構お客さん来たよ」

 12時半。私たちは彩、明海ちゃんと交代でクラスの中華喫茶に入った。本格的に、チャイナ服着用だ。沙良のチャイナ服姿を見れるのを、楽しみにしていた……!

 

「ど、どうかな……」


 沙良が出てきた。なるほど……これは良い。特にスリットが。もちろん全体的に似合っているが、特にスリットが良いのだ。


「良いねぇ。良いよ、沙良。最高」

 親指をグッと立てて、最高だ、とアピールする。

「あ、ありがとう。優香も似合ってるよ」

「でも沙良には負けるかな。あー沙良最高だよそれ。家でずっとその格好で居てくれないかなぁ」

「い、いやだよ……それに、こういうのはたまにするから良いんだよ」

「そっか、そうだよね」


 沙良と私と、数人で午後の中華喫茶を回したが、客はあまり来なかった。少し残念に思う一方、沙良のことを見る余裕ができて嬉しい気持ちもあった。もっといろんな服を沙良に着てほしい……そんな欲望が、私の中に生まれたのだった。

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