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七薔薇物語

七薔薇物語 ―赤薔薇―

作者: 矢玉

七つの色の、七つの薔薇にまつわる物語。


赤薔薇、戦禍の死


 ―――我は倒れぬ、我は膝つく事等あらず

 肩章も勇まし軍服を模した真紅の衣裳は処々が裂け血赤に染まる。

 ―――刃がこの身を千に斬り裂こうとも、百の矢の雨を受けようとも

 薔薇さえ恥じる赤褐の髪を振り乱し、少女は時代を駆けゆく


 吟遊詩人はかつて、こぞって彼女を炎の如き赤薔薇の革命家 そう謳った。


 かのヒトは革命軍の長だった。

 母のごとき慈悲で守り自ら剣をとって戦い、姉のような諭しで男達を纏め上げた。時には姫君のように従う部下に感謝し、礼に頭を垂れた。


 夢想に酔い 希望に酔い 己が思想に酔い

 

 若者達は我先に少女の前に膝をおり、共に戦うことを誓う叫びを上げた。

 膨れあがった烏合の衆でしかなかったもの者だったと思い知らされるその刻まで。

 砂をつめた皮袋に一点の針穴を開けるが如く、彼らを崩したのはたった一滴の血。

 少女が廃王家の血を継ぐ系譜に属すると言う事実。


 ただ、それだけで。


 零れ降りる砂を留める事は、誰にも出来ようはずもなかった。

 人員は欠けていったがそれでも真に志しある者は、少女を支え軍を再び纏め上げようとした。だが其の努力も廃したはずの王家が隣国の軍と供に顕れたのを期に、一気に瓦解の体を見せる。


 ちりぢりに散る嘗ての盟友。

 狩られる同盟者。

 首を落とされる刻まで忠実だった朋友。


 事切れる戦友を看取る度、少女の服は真紅に、血赤ちあかに染め抜かれた。


 幾つもの裏切りと、幾つもの慈悲を受け少女は最後まで戦い抜いた。


 高らかに宣言を歌い上げ、少女は自らの喉に愛剣を翳す。

 その身は不思議と倒れる事無く、二本の黒い長靴の脚に支えられ骸となっていた。



歴史物語風。

作者はサン○ラがだいすきです

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