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プロローグ
ユビキタス――かつてそう呼ばれた国家プロジェクトがあった。
それは「いつでも、どこでも、だれでも」恩恵を受けられる、ネットワークシステムを取り入れた未来社会の構築。
その計画は着実に進行し、インターネット、及びその媒体である通信機器は人々の生活にとって欠かせないものとなった。
計画が実現されると、やがて「ユビキタス」――その言葉自体は忘れられていった。
それはさながら、水や空気や太陽の光……当たり前に受けられる恩恵を誰もが忘れてしまっているかのように……。
だが――。
忘れてはならない。
ユビキタス社会の実現によって、私たちが
「いつでも、どこでも、だれでも」
世界のあらゆる場所に接続できるようになったということは、
即ち、
「世界」もまた、私たちと繋がり得るということ。
「いつでも、どこでも、だれとでも」
それがどういうことなのか、
よく考えてほしい。
そして――どうか忘れないでほしい。
“ubiquitous”
「神は遍在する」ということを――。