裁判を起こしましょう
私がこの世界に来て最初に転生したのは、英雄と謳われるロムルスが持つ槍。
21歳にして異世界転生を果たしたと思った矢先、転生したのはなんと槍なんですよ。
まぁ、私が転生したっていうぐらいだから、ただの槍じゃないんですけども・・・。
「いきなりですか?」
なんか、やり切れませんよね。
(いえ、槍だけに・・・っていう駄洒落じゃないんです!)
軍神を父に持つ英雄様の持ち物になった私、槍には、まぁ当然のことながら名前ありません。
寂しいですね・・・・。
少し泣ける出生をお持ちのロムルス様が幾多の戦いに赴いて、私をご使用になられまして・・・・。
うううっ・・・。
私は、ううっ。
血みどろになり、あんなものや、こんなおぞましいものを見てしまいました。
はい、槍なんで、道具なんで仕方がありませんが、何故こんな目に逢わねばならないのでしょうか。一応、ここで言っておきますが、私、前世ではか弱い女人でしたよ。
人並の幸せが欲しかった私が、何を間違ったか槍に・・・・。
泣けてきます。涙がボロボロと(想像で)。
槍にも良い人生をください。物にも権利を!
作ってください、ロムルス様。
不思議な力をお持ちのあなたなら、きっと物の気持ちも分かってくださるはず。
そう思っておりましたが・・・・・。
ええ、最後には裏切られました。はい。
やはり、お気づきなられませんでしたか、ロムルス様。
酷いです。あんまりです。物権侵害です。訴えます。
退けられても、永遠に上告しますとも・・・・。
法廷で争いましょう。弁護人は、私達を治してくださる鍛冶職人の方々にお願いしたいと思います。だって、優しく扱ってくださるし、熟練の方々は私達に熱い思いを込めてくださるからです。人生をかけてくださる人がいるくらい、熱烈なんです。
私も、そんな親方に手塩にかけて作りだされたものなんです。嬉しかった。
ですから、日々の労働に対する、給料の請求を要求し、今後の物権に対する保障も含めて。
そのぐらいの勢いで、私はおります。
え、何故かって?それは、私を逆さにして、硬い地面に突き立てたからですよ。
槍の先が、痛みますよ。
痛いですよ。痺れます。勘弁して下さい。繊細なんですよ、意外と武器は。
そして、割れんばかりの歓声とともに、達成感に満ちた主様の表情。
興奮が冷めやらないまま、国主となられるロムルス様を筆頭に人々はそろそろと町へと戻り始めた。
逆さまのままで一生ここに居ろとおっしゃられるのですか?