第9話『初恋は、たいていレーザー砲とともにやってくる』
かつての仲間・シオンを迎え、アストラたちは五人目の“七英雄”を取り戻した。
だが、アイザックが告げる次なる刺客は――
「君の初恋」?
まさかの再会。そしてそれは、愛とレーザーが交差する修羅場の幕開けだった!
《レッドバンシー号》は、一時的に補給のため辺境ステーション《エルギア・リング》に停泊していた。
「キャプテン、やばいぞ……」
ブリッジでロックが顔を青くしていた。
「通信傍受に成功した。……次に来る敵のコードネームは“アーク・セレナ”。
アイザックの直属部隊。そしてその指揮官は――セレナ=カーディナル」
沈黙が走る。
「……アストラ?」
「…………」
「おい、キャプテン? 反応ないけど。フリーズしてないか?」
「……セレナは、俺の初恋だったんだよおおおおおお!!!」
ドォォォン!(なぜか後ろで機関部が爆発)
グリーヴァが肩を落とす。
「はぁ……また“めんどくさい女関係”か。何人目だよ」
「初恋は最初の一人ですッ!!」
「それでそのセレナが、どうしてアイザック側に?」
アストラは遠くを見つめながら語り始めた。
「彼女は、俺たち“七英雄”の訓練生時代にいた。
正規兵コースの首席。剣も魔法も完璧。
そしてなにより……俺にだけは優しかった」
「お前だけに……?」
「他全員には無慈悲で冷酷で機械みたいだったのに、
なぜか俺の前だと、たまに笑ったんだ……!」
メロラが不安そうに口を挟む。
「で、その人が今どうなってるって?」
「“アーク・セレナ”……銀河規模の殲滅戦艦を率いる、戦闘マシン。
情報では、彼女は自己感情制御魔導装置を搭載済みらしい」
「つまり感情を……なくしてる……?」
* * *
そして、エルギア・リング上空。
巨大な影がステーションを覆った。
それは、漆黒に金の紋章が刻まれた殲滅級艦――《セレニティ=ゼロ》。
そして、コアブリッジに立つのは、無表情な女性――
セレナ=カーディナル。
「対象機影確認。《レッドバンシー号》……アストラ・カイン搭乗機。
……戦闘行動、開始します」
その目には、かつての温かみは一切なかった。
「やばいぞ!! 本当に撃ってきた!!」
ステーション外に無数の魔導レーザーが降り注ぐ!
「おいセレナァァァ!!! 俺たち付き合ってたろォォォ!!!」
《パルスレーザー着弾》
「記憶処理済み。あなたとの過去は必要ありません」
「悲しいいいいいい!!!」
《レッドバンシー号》は急加速し、セレニティ=ゼロの攻撃をかいくぐる!
だが、その全砲門は、まるで“執念”そのものだった。
「これはただの作戦じゃない……完全に個人の情念が混じってるぞ!!」
「アストラ。これはお前の責任だな」
「そういう目で見るな!?」
* * *
戦闘の末、ついにセレナとの一騎打ちが始まる。
金属デッキの上で、アストラとセレナの剣が火花を散らす。
「なあセレナ……本当に全部忘れたのか?
あのとき見せてくれた、俺だけへの笑顔も……」
「……システムエラー。記録にない」
「そっか。……じゃあ今、俺が見せてやる」
アストラの拳が炸裂!
(なぜかまた記憶に衝撃が!?)
「……ッ!」
セレナの目に、わずかに光が戻る。
「アストラ……?」
「おおおおおお!? この展開また!? 俺の拳万能すぎる!?」
「お前、記憶障害の特効薬かよ……」
セレナは小さく震える手で、自らの魔導装置を外しかけた。
「私は……ずっと、あの日のことを……」
だが――!
「通信ジャック! アイザックの信号が割り込んできた!」
『セレナ、戻れ。感情など不要だ。お前は兵器だ』
「ッ……ぁあ……!」
再び感情が消えかけるセレナ――!
「まてぇぇぇぇいッ!! お前は俺の初恋だァァァァ!!!」
アストラ、全力ダイブでセレナにしがみついた!!!
「離れろぉおお!! 私は感情を……!」
「お前が笑うまで俺は離れんぞおおおおお!!」
* * *
爆発、混乱、そして再起動。
奇跡的に、セレナの魔導装置は破壊され、感情が戻る。
「……アストラ……バカ……」
「うん……最高だセレナ……!」
こうして、六人目の英雄が帰ってきた。
だが、アイザックの本当の狙いはまだ先にあった。
初恋、再起動(物理)!
セレナの復帰と共に、七英雄はあと1人――
だがその“最後のひとり”は、最もアストラにとって見たくなかった顔。
次回・第10話:
『七人目の英雄は、キャプテンの双子の兄だった!?』
かつての約束、断ち切られた絆、双子の対決。
そして明かされる、七英雄計画の真実とは――!?