第7話『その男、裏切りか、仲間か。七英雄、最悪の男現る』
アストラたち“元・七英雄”の仲間集めは続く――
だが次に会う相手は、英雄としての“最悪の記憶”を持つ男。
裏切りか、忠義か。信念か、復讐か。
これは、再会ではなく「決着」の回。
再起動した《レッドバンシー号》は、
メロラ謹製・爆発ギリギリエンジンで銀河第七軌道面を突っ走っていた。
「現在位置、ドリフェル宙域。かつての前線基地、フォース・バレル宙港」
ロックが不穏な名を口にする。
「この宙域……って、あの時の場所じゃねえか」
「“あの時”?」
ルミナが問う。
「……七英雄が“六人”になった場所さ」
グリーヴァの言葉に、室内が静まった。
かつて、銀河士官学校が戦乱の前線に駆り出されたとき――
そこで最初に“仲間を撃った”のが、
七英雄の一人、ライゼ=ヴァルキュリアだった。
かつての戦術士。天才と呼ばれた男。
だが、彼は仲間の命令を無視し、敵軍へ情報を流し、そして姿を消した。
「でも俺はまだ、あいつが“裏切った”と信じちゃいねぇ」
アストラはそう言って、艦を港へと降ろす。
* * *
フォース・バレル宙港。
そこは、かつての軍事施設の残骸と、傭兵たちの情報拠点が混在する混沌の星。
アストラたちが降り立つや否や、目の前に現れた男がいた。
長い黒髪、マントに身を包み、片目に銀の義眼を宿す。
そして、腰には封印された魔導剣“ヴァラティナ”。
「……来たか。アストラ、グリーヴァ、そして……まだ見ぬ王女殿下」
「よォ、ライゼ。相変わらずカッコつけてんな」
「黙れ。お前はまだ便座で宇宙を動かしてるのか?」
「すっかり俺の代名詞だ」
二人の間に、ピリついた空気が流れる。
グリーヴァが低く言った。
「答えろよ、ライゼ。あんとき……本当に、私たちを裏切ったのか?」
「……あれは任務だった。上層部からの密命。
“七英雄の一人が内通者として敵に潜入し、戦争を内部から終わらせろ”――
俺が選ばれた。それだけだ」
「なんで言わなかった!?」
「言えば任務は失敗し、俺は処刑されてた。
生きて戻るには、“裏切者”になるしかなかったんだ」
アストラは、数秒黙ったあと――
「……バカ正直だなお前。いや、バカ真面目っていうか。
つーか処刑とか俺たち全力で止めただろ?」
「信じていた。けど……“言えなかった”んだ」
「じゃあ今言った時点でクリアだ。お前、仲間復帰な」
「は?」
「よし決定、拍手ー」
「納得しろォォォォ!?」
ロックとメロラの絶叫を無視して、
アストラは拳を突き出した。ライゼは一瞬驚いたが、やがて静かに、それを受け取る。
「お前の罪は帳消しだ。英雄ってのは、だいたい理不尽だからな」
「……ふっ。お前に言われたくはないがな」
こうして、七英雄・4人目が仲間に加わった。
だがその帰路、ロックが警告を発した。
「キャプテン、これはまずい。艦に外部アクセス。
……識別コード“VEIL-01”――アイザックだ!!」
突如、艦内スピーカーから響く、機械的な笑い声。
『ほう、仲間集めとは面白い。
だが遅いぞ、アストラ。こちらはすでに“次の英雄”を手に入れた』
「……え?」
『“七英雄”の一人が、こちらに寝返った』
衝撃が走る艦内。
そしてアイザックは告げた――
『次にお前が向かう星で、お前は“裏切り”を目にする。楽しみにしていろ』
かつての仲間との再会、そして新たな火種。
信じていた者は味方か、それとも敵か?
“七英雄”の絆が試される、本格的な分岐がここから始まる。
次回・第8話:
『忘却の星にて、裏切りの剣が交わる時』
眠る記憶、目覚める力。
そして、ついに“裏切った”英雄と、アストラが剣を交える!