第6話『銀河最強(当社比)整備士、ナノ秒で修理して爆発させる』
アストラたちの次なる目的地は、爆発と混沌の惑星――ハデラントβ。
そこには、かつて“七英雄”と呼ばれた仲間のひとり、天才整備士メロラがいた。
だが、彼女の修理はちょっと違う。“直る”とは限らないのだ。
《レッドバンシー号》、宇宙航行中。
エーテル反応:不安定。
主エンジン:8割損傷。
補助推進機:なぜか冷却剤がコーヒー。
操縦士:わりと元気。
「……おいロック、これ飛んでるって言えるのか?」
「いま飛んでるんじゃない、落ち続けてるだけだな」
「つまり“空中での崩壊待ち”状態か……いつものか……」
ルミナ王女は心配そうに眉を寄せた。
「あの……本当にこのままでは墜落するのでは……?」
「大丈夫大丈夫。俺には心当たりがある」
アストラが指差した先――通信画面に表示されたのは、ハデラントβ。
工業惑星、汚染指数MAX、そして爆発率はなんと98%。
だがそこには、“七英雄”のひとり、メロラ=シェルダインがいた。
天才整備士。別名、《銀河の火薬庫》。
直すより先に燃やし、燃やしながら直す。
そして、笑顔で言う「完璧よ♡」が一番怖い。
* * *
ハデラントβ・浮遊整備ドック《メロラ工房》。
ドガーン!!!
轟音と共に天井が抜け、そこから《レッドバンシー号》が墜落。
「お、おう、着陸成功ってことで……!」
爆煙の中から、整備服を着た小柄な女性がひょこっと現れた。
「キャップ〜♡ また飛ぶ棺桶持ってきたのね〜!」
「久しぶりだなメロラ! 今回は頼むぜ!」
「はいは〜い、今から30ナノ秒で全部直して、爆破するわ♡」
「いや爆破すんなよ!?」
「冗談よ〜♡(半分)」
彼女は手に持ったレンチを軽々と回しながら、《レッドバンシー号》に飛び乗った。
「ふんふんふ〜ん……ん? この回路、逆極性だわね。
うん、じゃあ一回全部焼いてやり直そっか♡」
「怖い怖い怖い怖い!!!」
「直すんだろ!? それ直す流れだよね!?」
ルミナ王女がこっそりグリーヴァに尋ねる。
「……あの方、本当に整備士なのですか?」
「一応。問題は“整備前より性能が上がって爆発率も上がる”ことだな」
「つまり……なんと申しますか……爆発しそうですわね……」
「確実にする」
やがて2時間後。
《レッドバンシー号》はギラギラと紅く光りながら再起動。
艦体には謎の羽が付き、機関音がなぜかEDMビートになっていた。
「ほらあ! 魔導炉出力、従来比400%アップ!
ただしちょっと触ると爆発♡」
「なんで!?!?!?」
「じゃ、しばらくついてくね♡ どうせまた壊れるでしょ?」
こうして、新たなる仲間・天才整備士メロラが仲間入り。
アストラ一行は、再び次なる戦地へと向かう。
その背後――彼らをじっと見つめる、黒い戦艦の姿があった。
破壊と修復の天才、メロラ参戦!
これで七英雄は3人目。だけど増えるたびに、船が危険になる気がする。
そして影を落とす謎の黒艦――
それは、次なる因縁と“裏切り”の予兆だった。
次回・第7話:
『その男、裏切りか、仲間か。七英雄、最悪の男現る』
かつて英雄、今は追放者。アストラたちの前に現れる元仲間の正体とは?