第5話『陰謀って、だいたいカーテンの裏から始まる』
無事(?)にグリーヴァと合流し、元・七英雄の片鱗が見えはじめたアストラ一行。
しかし、銀河の裏ではすでに、ひとつの黒い企みが動き出していた。
発端は――便座。そしてその鍵を握るのは、かつての“兄弟弟子”。
トリントン宙域の夜は、まるで“宇宙そのもの”だった。
空に星はなく、ただ漆黒と沈黙があった。
《レッドバンシー号》艦内。ブリーフィングルーム。
アストラ、グリーヴァ、ロック、そしてルミナ王女が、奇妙な“映像”を囲んでいた。
それは、約5時間前、突如艦のナビゲーションAIに送られてきた暗号通信。
発信源は不明。だが中身は、明らかに“個人的”なものだった。
モニターに映る、黒いローブに身を包んだ男。
顔はマスクで隠され、ただ金の瞳だけがぎらりと光っていた。
『よう、アストラ。……いや、“キャプテン・便座”とでも呼ぶべきか?』
「誰が便座だコラ」
『だがまあ、おかげで始まったよ。“計画”がな』
「お前……まさか……アイザック=ヴェイルか?」
ロックが震えるような声で呟いた。
それはかつて、士官学校七英雄のひとりであり、
唯一“自ら姿を消した”男の名だった。
『王女、あなたも聞いているな?
この宇宙の秩序は、もはや限界だ。
星冠連邦も、深宵の騎士団も、何もかも“終わる”んだよ』
「まさか……彼が、黒幕の一人……?」
ルミナの声に、アストラが立ち上がる。
「なあ、アイザック。
お前……また変な機械に魂でも詰めたのか?」
『フフ……当たり。今回のは“便座型魔導演算機”だ』
「便座かよ!!!」
『今の宇宙に必要なのは、再構築だ。
そしてその鍵を――お前が引いた。そうだろ? アストラ』
一方的に通信は終了した。
沈黙が室内を支配する。
やがて、グリーヴァが唸った。
「アイツ……本当にやる気だ。
“銀河の初期化”――理論だけだったあの計画を……!」
「……アイザックは変人だったけど、本気で宇宙壊すとは思ってなかったぜ」
「ってことは、私がその“引き金”……?」
ルミナの声が揺れる。
だがアストラは笑った。
「ちげぇよ姫さん。“引き金”は俺のケツだ。」
「誇るな!!!!」
「よし、話はまとまったな。アイザックを止める。
あの便座型の演算機ごとブン殴って終わらせる。異論あるか?」
「全部あるけど、やるしかねえな……!」
こうして、彼らは動き出す。
星々を越え、過去と向き合い、黒幕との戦いへ。
――そして始まる、七英雄、再集結の旅路。
動き出した黒幕、アイザック=ヴェイル。
かつての仲間は敵となり、世界は再び大きく動き出す――。
便座から始まったこの物語、どうしてこんな壮大になったのか。
もう誰にも分からない。
次回・第6話:
『銀河最強(当社比)整備士、ナノ秒で修理して爆発させる』
次なる七英雄は、爆発マニアな天才整備士・メロラ登場!?
戦艦の魔導エンジン、今日もギリギリ大破中!