第4話『伝説の傭兵、口より先に拳が出るタイプ』
頼れる旧友を訪ねて、アストラたちが向かった先はトリントン宙域。
しかし出迎えてくれたのは、懐かしい笑顔でも、握手でもなかった。
……拳だった。しかも、全力のやつ。
《レッドバンシー号》がトリントン宙域第7衛星“オメガリング”に到着したのは、
深宵騎士団とのド派手な戦闘からちょうど18時間後のことだった。
「ここが、元・銀河士官学校の訓練衛星跡地……。
今は賞金首と傭兵とヤバい連中の巣窟とか」
「思い出の場所って感じだな。懐かしいぜ、全部爆破されてる」
ロックが皮肉を飛ばす中、アストラは意気揚々と着艦する。
目的はただ一つ――
旧友であり、伝説級の女傭兵、グリーヴァ=スミスの協力を得ること。
かつて士官学校の“七英雄”と称された彼女は、いまや宇宙最強クラスの戦闘屋。
アストラがその名を口にすると、ルミナ王女が小さく首をかしげた。
「その方とは……お知り合いなのですか?」
「まあな。昔はよく一緒に殴られてた」
「殴ってた、じゃなくて?」
「いや、殴られてた」
そして。
「おーいグリーヴァー! 久しぶり! 俺だ俺、アストr」
ドゴォォォン!!!
アストラの顔面に全力の左ストレートが炸裂した。
10メートル吹き飛び、金属壁に人型のへこみができる。
「しゃべんなクズ男!! 二度と顔出すなって言ったろ!!!」
「お、おぉぉぉ……! これこれ、この歓迎……っ、懐かしい……!」
「記憶が壊れてんのかてめぇは!!!」
現れたのは、ボディスーツに戦術ベスト、背中に斧二丁の女傭兵。
燃えるような赤髪に、鋭い目つき――間違いなく、グリーヴァ本人だった。
「おい、今度は何やらかした!? また爆破? 誘拐? 反乱か?」
「全部。あと便座起動」
「最後のが一番やばいな」
グリーヴァはため息をついたが、すぐに王女の存在に気づき、眉をひそめた。
「……あんた、連邦の姫だな?」
「は、はい。王女ルミナ・イリス・エストレーラと申します」
「なんでそんなの連れてんだよ!?」
「拾った。爆発のあとで」
「拾うな!!!」
その後の説明で、現状の把握を終えたグリーヴァは、しばらく沈黙した。
「ふーん……あんたら、いま銀河で一番ヤバい船じゃん」
「そういうこと言うなよ……現実になるだろ……」
「でも面白いわ。気に入った。
仕方ない、貸しひとつ分ってことで協力してやる」
「マジで!?」
「ただし、借りが返せなかったら、
お前の脳天ぶち抜いて宇宙に投げるからな」
「それはそれで光栄です!!」
「バカじゃねぇの!!?」
こうして《レッドバンシー号》に、頼もしすぎる新たな仲間が加わった。
だが彼女の参戦は、また別の爆弾を呼び込むことになる。
《かつて“七英雄”と呼ばれた者たち》が、少しずつ再び集まりはじめていた――。
ついに登場、拳と斧の傭兵ヒロイン・グリーヴァ!
元・士官学校七英雄の再集結、そしてその裏で動き始める謎の組織……
次回は、銀河を揺るがす“黒幕”の気配が――?
次回・第5話:
『陰謀って、だいたいカーテンの裏から始まる』
黒いローブ、謎の通信、そして明かされる“便座起動”の真実とは――!?