第3話『宇宙一、目立ってはいけない逃走劇』
「戦争の火種」ことルミナ王女を拾ってしまったアストラたち。
だが彼らに与えられたミッションは――
目立たず、静かに、こっそり脱出。
……そんなの、この船長にできるわけがない。
深宵の星団騎士団の旗艦は、
すでに火器管制モードへと移行していた。
その先にぽつんと浮かぶのは、ぼろっちい中型宇宙船《レッドバンシー号》。
「……逃げるぞ、ロック」
「了解。今回は、**“目立たずに脱出”**という命題を守れ。絶対に。
この任務は、慎重かつ静かに――」
「艦首バリアを最大展開! エーテルスラスター、二段点火!
ついでに後ろに爆薬20トン投下して、超ド派手花火脱出!」
「バカかお前はああああああああ!!!」
派手な爆発音とともに、《レッドバンシー号》は大炎上したゴミ惑星の衛星帯を突破。
通信回線が各所で開く。
「こちら星冠連邦第七艦隊! 深宵騎士団と交戦状態に入る!」
「緊急警報、王女ルミナの失踪により議会は分裂!」
「なお、便座に起因する時空震が銀河南部に拡大中!」
「やっぱり便座のせいかぁ!!」とロックの悲鳴。
だがアストラはそれを横目に、ルミナ王女にウィンクを投げた。
「安心しな、姫さん。俺の逃げ足は宇宙一だ」
「……ものすごく、頼もしい気がします。でも、
どこか不安です……」
「それが正しい反応だ。逃げる前から戦争だからな」
* * *
彼らは向かっていた。
かつてアストラが士官学校を放校された原因となった星、**“トリントン宙域”**へ。
そこには、アストラのかつての仲間であり、
銀河で最も武装が軽くて口が悪い女傭兵、グリーヴァ=スミスがいる。
彼女に会えば、何かしらの打開策……あるいは、さらなる爆発が待っている。
「そういえばロック。俺たち、なんでこんな大ごとになってんだっけ?」
「お前が便座のレバー引いたからだよッ!!!」
そんな感じで、アストラたちは今日も宇宙を駆け抜ける。
派手に、騒がしく、目立ってはいけないはずの逃走劇が――
なぜか全銀河中継されていた。
「誰が放送してるんだこのニュース!?!?」
逃げる、隠れる、目立たない。
それがどれだけ無理な指令だったか、
今回ではっきりしたことでしょう。
次回・第4話:
『伝説の傭兵、口より先に拳が出るタイプ』
アストラの旧友・グリーヴァ登場! 一触即発の再会劇と、
“元・士官学校七英雄”の過去が明かされる!