表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/38

第1話『運命が爆発する音がした』

この宇宙には、英雄と呼ばれる者がいる。

秩序を守る者、星を救う者、人々を導く者……。

だがごく稀に、“めちゃくちゃやったのに英雄になっちゃった”者もいる。

これは、その最たる例である。

――どうして、こいつが伝説になったのか?

それはもう、運が悪かったとしか言いようがない。

宇宙歴9999年。

辺境惑星ティオ=ペルーラ第38衛星、通称“ゴミ惑星”。


この星は、宇宙中の使い古された魔導機関や、廃棄されたエーテル砲、

そして失敗作のAIなどが捨てられる、いわば宇宙の産業廃棄物置き場だった。


そんな場所で、今日も一人の男が、まったく意味のないテンションで叫んでいた。


「ロック、見ろォッ!! ついに見つけたぞ、運命のアレをォッ!!!」


「キャプテン。まず深呼吸して落ち着いて。それ、ただの便座です」


男の名は、アストラ=ランダルフ。

元・銀河帝国士官候補。今・宇宙漂流民。副業・宇宙ガラクタ漁り。

彼が両手で掲げていたのは、ボロボロの金属便座だった。


「見ろよこのフォルム! この鈍い輝き! この“絶対押すな”って言ってる赤いレバー!!」


「便座にレバーがあるのがそもそもおかしい。いや、というかその赤レバーって――」


ガコン。


アストラはためらいなくレバーを引いた。

その瞬間、地面が揺れ、空間がざわついた。


ブォォォォオオンンン……!!


「――反応出ました! 魔導エーテル核が暴走状態! 空間座標が……歪む!」


ロック=ドラグーン、通称ロック。

全長8メートルのドラゴン型ナビゲーションAIである。

システム上は冷静な軍用機械だが、感情エミュレートがやたら高性能で、

今は全力で慌てていた。


「おいキャプテン!! お前まさか、古代魔導跳躍装置を尻で起動したのか!?」


「運命が、呼んでたんだよ……!」


「このバカアアアアア!!」


爆発的な光が視界を覆い、アストラとロックは空間ごと転移した。


* * *


目が覚めたとき、彼らは小惑星帯の中心部にいた。

宇宙が静かに、けれど確かに歪んでいた。


「……あれ? ここって……ペルーラ第3衛星じゃなかったよな?」


「当然だ。おそらく跳躍で約3,000光年飛ばされた。

お前のケツのせいで」


「この便座、すごくない?」


「すごいけど腹立つわ」


そのとき――モニターに反応があった。

巨大な戦艦と、小さなライフポッド。


ライフポッドの中には、意識を失いかけた少女がいた。


「……たす……けて……。あいつらが、わたしを……」


アストラは反射的に操縦桿を握った。


「ロック、救助態勢! あれは絶対、ただごとじゃない!」


「ちょっと待て! あの戦艦の紋章……**“深宵の星団騎士団”**だ。

あそこは銀河指名手配No.2の武装組織だぞ!? No.1はお前な!」


「……やっぱ俺の方が上かぁ。よし! 突撃!」


「お前、脳に爆弾でも詰まってんのか!?」


そう叫ぶロックを乗せて、《レッドバンシー号》は突入した。

銀河にまたひとつ、新たな厄災が投下される音がした。


運命が、確かに爆発する音だった。

英雄は、いつもカッコよく登場するとは限らない。

便座から始まったこの物語は、宇宙を巻き込む伝説になる――たぶん。

次回、第2話:

『姫、拾いました。あと、戦争始まったっぽい』

拾った少女の正体は“星の姫”!? アストラ、最初の銀河戦争に巻き込まれる!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ