第11話 生徒たちの日常3. 森パトロール
──さて、今日も元気にいこうか。どうもどうも、シオリです。
午後のズリング村、森の中。
そよ風に揺れる木々、鳥たちのさえずり、遠くで鳴くリスっぽい何かの声……。
ほのぼの癒やしの自然空間? いえいえ、油断してるとすぐそこから魔獣が飛び出します。
そんなスリル満点なフィールドで、今日も子どもたちは大奮闘中!
では、現場からお届けしましょう──。
「……前方、魔力波動あり」
ジンの低い声が、ぴたりと空気を締めた。
森の小道、木漏れ日に照らされながら歩いていた一行の足が、一斉に止まる。
「距離は?」
レオンがすかさず問いかける。
視線はまっすぐ前方。すでに両手は防御展開の準備姿勢だ。
「三十メートル先、樹間の影から動いてくる……単独個体」
ジンの答えに、全員の表情が引き締まる。
「グレーウルフ……か」
レオンが小さくつぶやき、すぐに声を張った。
「ナナ、撹乱! カイル、狙撃位置につけ! リク、前線カバー!」
一瞬の間もなく、全員が動き出す。
まるで事前に打ち合わせていたかのような、完璧な連携。
ナナは両手を胸元で組むようにし、小さく息を吸い込んだ。
次の瞬間──
「……ふわ、っと」
ぽそりと呟くと、透明な波が空気に溶けて広がる。
精神干渉魔法。
相手の知覚をゆがませ、一瞬だけ意識をぼやかす術式だ。
「グルル……ッ?」
茂みの奥で低く唸る音。
ウルフが突然、左右に頭を振り、足元を踏み外すようによろめいた。
「いまだ」
カイルが小声でつぶやき、指先をぴたりと立てる。
その目はすでに《ロックオン・フレーム》で目標を完全補足済み。
魔力の圧縮、解放、軌道制御。
狙撃魔法が、空気を裂く。
「シュンッ!」
無音に近い速度で放たれた魔力弾が、ウルフの肩口に正確に命中。
獣が大きく体勢を崩した、その瞬間──
「前出るぞッ!」
リクが前線に飛び出した。
両腕から噴き出す爆裂的な魔力。
熱と衝撃をまとった拳が、ウルフの正面を叩く。
「ズドン!!」
轟音。土煙が小道を覆う。
吹き飛ばされたウルフが、もんどり打って地面に転がった。
「ナナ、離脱! ジン、サポート!」
レオンの指示が飛ぶ。
「了解」
ジンが一歩踏み出すと、その姿が一瞬で消える。
座標単位での瞬間移動、《ピンホール・ジャンプ》。
ナナのすぐ背後に現れたジンは、彼女の腕を軽く引き、次の座標へ二人ごと跳躍する。
「ありがとう、ジンくん……」
「……仕事」
小さく答え、すぐに次の移動体勢に入るジン。
その様子に、ズークは木陰から小さくうなずいた。
――あいつら、ほんと成長したな……。
空間の歪みに乗って、ナナが安全圏に着地したのを確認すると、レオンが左手を高く掲げる。
「《ガーディアン・レイヤー》!」
魔力が重なり合い、透明な多重防壁が展開される。
前線に立つリクと、後方のカイル・ナナ・ジンを一斉に包み込む形だ。
「カイル、もう一発!」
「了解」
二発目の魔力弾が、着地したばかりのウルフを撃ち抜く。
正確無比な狙撃。狙われたウルフが反撃する隙すらない。
「リク、止め!」
「任せろッ!」
リクが吠え、全身の魔力を一点集中。
地面を蹴り、ウルフの懐に踏み込む。
渾身の右ストレート。
「ドゴォン!!」
衝撃波とともに、ウルフの身体が吹き飛んだ。
ズザザザザ……と地面を滑り、そのまま動かなくなる。
しばしの静寂。
「…………」
「…………」
次の瞬間。
「討伐完了!」
レオンがぴしりと右腕を掲げ、声を張った。
「お疲れ様ー!」
ナナがぱちぱちと小さく拍手する。
「……ふん、当然だ」
リクが鼻を鳴らし、腕をぶんぶん振って余韻を誇示。
カイルは無言で、魔力量と出力残量を確認する
ジンはすでに周囲警戒中。
ズークは、遠くの木陰から彼らの様子を見て、ふっと微笑んだ。
──まったく。頼もしいにもほどがあるな。
もちろん、まだ油断はできない。
これが単独個体だったのはラッキーだったが、群れで来ることもある。
だからこそ──。
「レオン、次のエリアへ移動する。警戒は続行だ」
「了解!」
レオンの返事は、短く力強い。
その声に全員が頷き、再び森の奥へと進んでいく。
木漏れ日、風の匂い、足元を踏みしめる落ち葉の感触。
ズークは歩き出しながら、ひとりごとのように呟いた。
「さて……この調子なら、もう少し任せても大丈夫そうだな」
空には、ゆっくりと西日が傾きはじめていた。
──というわけで! 森の中でも大活躍なフォートレス・ドライブでした。
いやほんと、頼れる子たちに育ってるよね。
次はどんな冒険が待ってるのか、ちょっとだけ楽しみにしててね?
以上、現場からシオリでしたー♪




